
ゼレンシキー宇大統領、停戦後の「緩衝地帯」設置構想を批判
ゼレンシキー大統領がキーウを訪れた独仏英ポーランドの首脳との「有志連合」会合後の共同記者会見時に発言した。ウクルインフォルムの記者が伝えた。
ゼレンシキー氏は、「まずは停戦。他のことは全てそれからだ。なぜなら、非軍事地帯、緩衝地帯、軍の引き離しといった非常に多くの詳細があるからだ。私は、それらの問題をメディアで聞いたし、多くの様々な人や、様々なインテリジェンスからも聞いた。正式には誰もウクライナに類似のことは何も提案していないが、しかし、皆が、地雷除去要員のように、何らかの可能性、私たちと他にどのような実験ができるか、を模索している。現時点で、私は、そのアイデアはあまり生きているとは思わない。なぜなら、それは監視形式に左右されるからだ」と発言した。
また同氏は、緩衝地帯の設置構想には多くの欠点があるとし、その欠点は、ロシアが停戦などの義務を守る意思がないことや、戦争遂行の新たな手段である、数十キロメートルを容易に飛行可能な無人航空機の出現に関連するものだと指摘した。
その際同氏は、「非武装地帯を両側15キロにするという話がある。だが、なぜ15キロなのか? どのラインを起点とするのか? 国境なのか? どのコンタクト・ラインなのか? 前線とはそもそも何なのか? 戦争はベラルーシ領から始まったのだ。ミサイルもベラルーシから飛来した。ならば、ベラルーシからも15キロ離れるのか? なぜ15キロなのか? もし長距離榴弾砲が40キロ届くなら、もっと深く取るべきでは? さらに、現在は、ミンスク(諸合意)の頃とは異なる別の戦争となってる。現在、無人機、FPV型が50〜100キロ先まで飛ぶ。これは火砲と同じである。とすれば、(緩衝地帯を)100キロに拡大するのか? 仮に15キロであったとしても、ヘルソンのような町はどうするのか? もし私たちの軍がヘルソンにいなければ、私たちはヘルソンを失うことになる」と強調した。
さらに同氏は、ウクライナには2014年以降の苦い経験があると述べ、「停戦中、ロシア人や分離主義者はずっと掘って、掘って、掘って、毎日100メートル、200メートル、300メートルと進んできた。誰も彼らに発砲しない中、彼らは掘り続けていたのだ」と指摘した。
また同氏は、緩衝地帯についての問題は、ポクロウシクの住民に問いかけるべきだと訴えた。その際同氏は、「何千人もの人々がポクロウシクを守るために命を落とした。何千人もだ! そしてポクロウシクまでの距離は数キロしかない。そういうことをどうすべきだろうか?」と問い、続けてこう述べた。「もし15キロ後退する緩衝地帯に同意すれば、ヘルソン、ハルキウ、スーミのような町では、表面上は平和に見えても、彼らのところでは戦争が続くだろう。なぜなら砲撃が飛んでくるからだ」。
そして同氏は、「よって、今それについて語るのは時期尚早であり、その構想は現時点では死んでいる」と強調した。
また同氏は、ロシアが停戦を遵守するとは思っていないとも述べ、「停戦違反はない、という幻想は持ち合わせていない。破られる。だが、それでもそれは非常に重要な一歩なのだ」と強調した。
これに先立ち、米国のケロッグ・ウクライナ担当大統領特使は、ロシア・ウクライナ戦争における非武装地帯設置案について説明した際に、ウクライナは30キロメートルに及ぶ非武装地帯の設置に応じる準備があると発言していた。