
「プーチンの戦争は、ウクライナだけでなく、欧州に対する戦争」=独メルツ氏、防衛・安保支出増を訴える
メルツ氏が独議会の本会議における、債務抑制を定める基本法改正の議論の際に発言した。ウクルインフォルムの特派員が伝えた。
メルツ氏は、今回の改正でGDPの1%を超える安全保障支出が債務制限(債務ブレーキ)の対象から今後外れるということは、ドイツの将来、将来の世代にとっての真剣な変化だと指摘した。
同氏はその際、「このような債務が正当化されるのは、非常に具体的な状況、具体的な条件下においてのみである。(中略)何より、プーチンの欧州に対する侵略戦争だ。これは、欧州に対する戦争であって、ウクライナの領土一体性に対してのみの戦争ではない。これはまた、毎日生じている私たちの国に対する戦争であり、私たちのデータネットワークへの攻撃、供給ラインの破壊、放火、発注された殺人…。兵舎へのスパイ行為、偽情報キャンペーン、私たちの社会に対する体系的ミスリード、欧州連合(EU)を分断し、周辺化する試みを伴うものだ」と強調した。
その上でメルツ氏は、今後数年、数十年にわたって、あらゆる手段を行使して、これらの攻撃から自衛していくことを約束した。
同氏はまた、何年かもの安全の感覚が終わり、現在ドイツと欧州の防衛力の復活が必要となっていると指摘した。その際同氏は、技術的な防衛戦略、調達戦略、自動化システム、独立した欧州の衛星監視、武装無人機、その他現代的防衛システムに焦点を当てる必要があると訴えた。さらに同氏は、信頼できる予測可能な防衛契約が必要で、主に欧州の企業との契約が必要だと強調した。
その際同氏は、「これは私たちを迎える防衛政策のパラダイムシフトである」と発言した。
同氏は、現時点では北大西洋条約機構(NATO)において米国と一緒にでしか効果的な防衛は実現できないとしつつ、同時に、ドイツによる防衛支出の増加は「新しい欧州防衛共同体への重要な最初の一歩に他ならないもの」となる可能性を指摘した。そして同氏は、そのような防衛共同体には、英国やノルウェーをはじめとするEU非加盟国も関心を示していると発言した。
CSU・CDUと一緒に改正案を提示した社会民主党のクリングバイル党首は、同改正はドイツにとっても欧州にとっても、肯定的で、重要で、かつドイツが欧州における平和維持のためにあらゆることを行うという明確なシグナルとなると発言した。
クリングバイル氏は、「今日、欧州における平和は再び脅威に晒されている。3年間、ウクライナは私たちの自由を英雄的に守っている。そして、彼らがこの戦争に勝つことは、私たちの自らの利益であり、私たちの安全保障上の利益である。私たちはウクライナの側にいる! ウクライナにおける状況は、過去数週間激しく悪化した。現在、欧州は、一方では攻撃的なロシアと隣り合わせであり、他方では予想不可能な米国と隣り合わせなのだ」と発言した。
そして同氏は、大西洋間協力を維持するために可能な限りのことを行うよう呼びかけるとともに、同時に、欧州における宿題を行うこと、より強くなることも呼びかけた。
上述の改正案への支持を約束した緑の党のハッセルマン会派長は、「重要なことは、グローバルな状況、専制国家による自由社会と民主主義への攻撃、国際法を侵害するプーチンの対ウクライナ侵略戦争、私たちが毎日目にしている残虐性、ドナルド・トランプによる欧州の責任の拒否を考慮すると、私たちは現在投資をせねばならないということである。そして、それは、ドイツ軍の強化に対してだけではなく、何よりも、私たちの安全保障機構全体へと根本的に対してである」と発言した。ハッセルマン氏はまた、軍への支出だけの話ではなく、国内の安全を担当する者に対しても関わることだと指摘した。
その後、ドイツ連邦議会は、CDU・CSU、社会民主党、緑の党の賛成により、基本法改正案を採択した。賛成は、改正に必要な3分の2の489票を超える513票だった。