英国王による修辞教室

英国王による修辞教室

ウクルインフォルム
英国王チャールズ3世は、米国訪問中にどのように外交上の教訓を示したか。

英国王チャールズ3世による米国国賓訪問中の演説は、形式は控えめながらも、政治的シグナルに満ちた、古典的な英国外交修辞の模範となった。米連邦議会での演説及びその他の公的な発言において、君主は一連の暗示を披露した。それらは総じて、ドナルド・トランプ大統領の立場に対する、しばしば揶揄に近い、穏やかながらも一貫した反論のように映った。

執筆者:ヴォロディーミル・イリチェンコ(ニューヨーク)

写真:英王室

ウクライナ保護には同様の揺るぎない決意が必要だ

連邦議会における国王の演説の鍵となった要素は、2001年9月11日のテロ事件と、米国の呼びかけに応じた北大西洋条約機構(NATO)によるワシントン条約第5条(集団防衛)の初の発動への言及であった。形式的にはこの言及は、美辞麗句のための歴史的回顧のように見えたが、しかしながら、文脈と国王独特の「含みのある」な表情が発言の意味を拡大させていた。

同盟国が「呼びかけに応じ」、米国と肩を並べて立ったことを、米国のエスタブリッシュメントに思い出させることで、国王は、トランプ氏の流布しているレトリックである、欧州の「恩知らず」というナラティブを事実上否定したのである。

同時に国王は、政治ではなく共通の記憶に訴えかけることで、大西洋をまたぐ連帯の必要性に関する議論をさらに強めた。

同様に重要なのは、2001年の出来事への言及から論理的に導き出された、ウクライナ支援に関するシグナルであった。国王は「今日……この同様に揺るぎない決意が、ウクライナ及びその最も勇敢な国民を保護するために必要であり、公正かつ永続的な平和を真に確保するために不可欠なのだ」と述べた。

四半世紀前に同盟国が示したのと同じ揺るぎない決意を、今、ウクライナに関しても示さなければならないという意味だ。

これは、ウクライナへの支援を繰り返し批判してきたトランプ氏の立場との明白な対照をなした。また、「平和」のために領土を明け渡せという要求に対する答えでもあった。

このような構成において、ウクライナ支援の問題は、西側同盟システム全体の強靭さを問うテストとして示されたのだ。

ますます内にこもるよう求める大きな声を、私たちが無視することを祈る

連邦議会での演説の際に、国王は、経済協力、イノベーション、防衛分野を含む共同技術プロジェクトについても強調した。これもまた、トランプ政権及びその周辺が推進する保護貿易政策に対する回答として機能した。国王は、国益の重要性を否定はしなかったが、それらが相互依存や協力と対立すべきではないと強調した。

このように、国王の経済的レトリックは、孤立主義への隠れた批判という文脈で、安全保障上のレトリックを補完した。

国王はまた、「私たちの同盟が共通の価値観を守り続けることを、心から祈っている……」と述べ、万雷の拍手が止むのを待ってから、さりげなくこう付け加えた。「そして、ますます内にこもるよう求める大きな声を、私たちが無視することを祈っている」。

この素早く述べられたフレーズは、事実上の演説の論理的な結論であった。

それは、安全保障秩序の形成における米国の特別な役割を明確に思い起こさせるものであった。「米国の言葉には重みと意味がある」、そして「この偉大な国家の行動にはさらに大きな意味がある」という国王の強調は、同盟国の重要な期待を事実上要約するものだった。つまり、米国は支援を宣言するだけでなく、具体的な行動でそれを裏付けなければならないということだ。

演説における別の強調部分は、環境保護に関するものであり、国王はそれを国家安全保障や経済的繁栄と直接結びつけた。「私たちの世代は、最も重要な自然システムの破壊といかに戦うかを決定しなければならない」という国王の主張は、環境問題が長期的な安定のための基盤となっていることを示している。このアプローチは明らかにワシントンのトレンドではなく、経済的合理主義と国際的義務の制限を優先しがちなトランプ氏の発言と鋭く対照をなしている。

必要があれば、ただ鐘を鳴らしてほしい

ホワイトハウスの晩餐会における国王の演説は、ユーモア、歴史的暗喩、時に軽い揶揄に近い外交的暗示の組み合わせという、英国王室特有の政治的コミュニケーションの形式を示した。

米国なしでは欧州は「ドイツ語を話していただろう」というトランプ氏の以前の発言を引き合いに出し、国王は次のように述べた。「あえて申し上げれば、もし私たちが不在であったなら、あなた方はフランス語を話していただろう」。

形式的に国王は、250年前に英国人とフランス人が領土支配を争った北米の植民地時代の歴史に言及したのだ。しかし同時に、このフレーズは、第二次世界大戦における米国の役割を単純化して解釈することへの回答でもあった。

国王は、トランプ氏が大広間を建設するために着手したホワイトハウスの改築についても冗談を言った。

「認めるのは心苦しいが、私たち英国人は、もちろん1814年に自分たち自身でホワイトハウスを建て直そうと試みたことがある」と述べ、英国兵が建物に火を放った同様の破壊行為に言及した。

国王はまた、今回の夕食会は、植民地人が1773年に課税対象の英国茶を海に投げ捨てた「ボストン茶会事件」に比べれば「大幅な改善」だという冗談を口にした。

第二次世界大戦時の英国潜水艦の鐘という象徴的な贈り物をトランプ氏に贈呈した際にも、ジョークが添えられた。国王は、「これが両国民の共通の歴史と明るい未来の証となりますように。そして、もしあなた方が私たちに連絡する必要がいつか生じたなら、ただその鐘を鳴らしてください(編集注:電話してくれという意味)」と述べ、拍手を浴びた。

トランプ氏に対するオブラートに包んだ反論や繊細な揶揄は、当然ながら、決して偶然のものではない。これは、最も権威ある英国人が、ウクライナ問題を含め、対立を激化させることなく米国大統領を批判し、同盟国の立場を防衛し、相互の義務を思い起こさせることに成功した、綿密に練られた修辞戦略だったのだ。


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