ベラルーシの人々には「歴史的記憶」が足りない=ノーベル賞作家アレクシエーヴィチ氏

ベラルーシの人々には「歴史的記憶」が足りない=ノーベル賞作家アレクシエーヴィチ氏

ウクルインフォルム
ノーベル文学賞受賞作家のスヴェトラナ・アレクシエーヴィチ氏は、ベラルーシの人々の「ネイション」(民族)の更なる形成のためには「歴史的記憶」が不足しているとの考えを示した。

アレクシエーヴィチ氏がユーロラジオ(ベラルーシ語版、ポーランド拠点)へのインタビュー時に発言した

アレクシエーヴィチ氏は、ベラルーシの人たちは2020年8月の反政権抗議運動にて「再生」を試みたのだとし、その際、白赤白の旧国旗や「ベラルーシ万歳!」といったスローガンが人々の意識の中に現れたと指摘しつつ、しかし、民族的自覚の形成にはそれだけでは不十分だと発言した。

同氏は、「私たちは実際のところ、好むと好まざるとにかかわらず、遅れてきたネイションなのだ。私たちは、非常に多くの時間を失い、多くの最高の人々を失ってきた。この30年間、人々は、移動し、世界を見るようになった。そして、人々は『私は誰なのだろうか?』と考えるようになっている。私たち一人一人が、種族の集合体であり、集団全体の記憶の集合体なのだ。そして、ここにきてようやく『跳躍』した。そうでなければ、(編集注:2020年8月の抗議運動の際に)あれほどの多くの人は現れなかったし、あの旗も出てこなかったであろう。私は、大人子供が手にしていたあの旗のことを、今も思い出している」と発言した。

その上で、同氏は、ベラルーシの人々は書物や歴史文書を学ぶことを通じて、独自の民族的自覚を形成すべきだとの考えを示しつつ、そうしなければ、ベラルーシ政権は引き続き人々の「農民的心理」を利用し続けるだろうと指摘した。同氏は、「残念ながら、私たちには、寄りかかれる物がないのだ。あったとしても、それは、人々の読まないような(歴史)アーカイブや本の中のどこかに隠されている。30年間、私たちはそれを学んでこなかった。大半の人は生活するばかりで、そのことに気をかけなかった。だから、時間が必要だし、あらゆることを学ばねばならないのだ」と発言した。

なお、2020年8月、ベラルーシでは、大統領選挙の結果がルカシェンコ当時大統領に有利な内容に改ざんされたことに反対し、市民が大規模抗議を開始していた。これに対して、政権は、暴力により抗議運動を鎮圧しようとし、抗議者に対する弾圧や拷問を行い、その結果、死者も発生した。抗議指導者の多くは、政権側に拘束されるか、あるいは国外に逃亡している。

ウクライナを含め、民主主義国家の多くは、同大統領選挙とその結果の合法性を認めていない。

写真:Tut.by


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