ゼレンシキー宇大統領、20項目からなる「和平協定案」の詳細を発表
ゼレンシキー大統領が記者団とのやり取りの際に発表した。ウクルインフォルムの記者が伝えた。
ゼレンシキー氏は、「今、私は20項目からなる文書の草案について話す準備ができている。これは『枠組み』と呼ばれる、戦争終結に関する基本文書であり、すなわち、私たち(ウクライナ)、米国、欧州及びロシア人の間の政治的文書である」と発言した。
また同氏は、この文書案は多くの点でウクライナと米国の共通の立場を反映し、一部では米国の立場が反映されているが、同時に、いくつかの事柄についてはまだ解決が必要な段階にあると説明した。
同氏は同時に、「しかし、私たちは文書の完成に大きく近づいている」と述べた。
そして同氏は、戦争終結に関する基本文書案の20項目それぞれの内容を記者団に共有した上で、文書の本質面を説明した。その際同氏は、共有したのは文書「案」であるとし、そのため各項目は交渉の過程で変更される可能性があることを強調した。
ゼレンシキー氏が共有した文書の20項目の要旨は以下のとおり。
第1項
ウクライナの主権が再確認される。ウクライナが主権国家であることを確認し、協定の全ての署名者が署名をもってこれを認める。
第2項
本文書は、ロシアとウクライナの間の完全かつ無条件の不可侵協定となる。長期的な平和を維持するため、宇宙からの無人機モニタリングを用いてコンタクト・ラインを管理し、違反の早期通知及び紛争の排除を確実にする監視メカニズムが構築されることが記載されている。
第3項
ウクライナは強固な安全の保証を得る。
第4項
ウクライナ軍の兵力数は、平時において80万人規模に留まる。
第5項
米国、NATO及び欧州の署名国は、(編集注:NATOの)第5条(編集注:集団防衛)を反映した安全の保証をウクライナに提供する。
第6項
ロシアは、欧州及びウクライナに関する不可侵政策を、全ての必要な法律、全ての必要な批准文書に明記する。これは、ロシア国家院(下院)での批准も含まれる。
第7項
ウクライナは、特定の具体的に定められた時期に欧州連合(EU)の加盟国となる。また、ウクライナは、欧州市場への短期的な特権的アクセスを得る。
第8項
ウクライナは、投資と将来の繁栄に関する別の協定で定められる強固なグローバル開発パッケージを得る。これは幅広い経済分野を網羅するものとなる。
第9項
ウクライナ経済の回復、被害を受けた地区や地方の再建、及び人道問題の解決のために、複数の基金が設立される。目標額は、株式資本、助成金、債務、民間部門の貢献により、8000億ドルの調達となる。
第10項
本協定の締結後、ウクライナは米国との自由貿易協定の締結プロセスを加速させる。
第11項
ウクライナは、核兵器不拡散条約(NPT)に基づき、非核保有国であり続けることを確認する。
第12項
ザポリッジャ原子力発電所は、ウクライナ、米国、ロシアの3か国によって共同で運営される。
しかし、運営の詳細については、まだ議論が続いているという。ゼレンシキー大統領は、ウクライナは「あらゆることの後に」ロシアと直接ビジネスを行うことを望んでいないと述べた。本項目については、当事者間でまだ調整する必要があるという。
第13項
両国は、異なる文化への理解と寛容を促し、人種差別や偏見を排除するための教育プログラムを学校や社会全体に導入することを自らに義務付ける。ウクライナは、宗教的寛容とマイノリティの言語保護に関するEUの規則を導入する。
第14項
領土問題の項目。この項目は未合意であり、解決に向けた複数の案があるという。
案1:「現在いるところに留まり続ける」。ドネツィク州、ルハンシク州、ザポリッジャ州、ヘルソン州において、本協定締結日において軍が位置するラインを事実上のコンタクト・ラインとして認め、国際戦力がこれを管理する。
案2:「ドンバス自由経済圏」の創設。同地区の非武装化が想定される。ウクライナは、自軍の撤退に反対しているが、しかし、この案が実現する場合には、対称(鏡合わせ)的な軍の撤退、すなわちロシア軍の撤退も求めていくという。この案の場合、協定の批准のためにウクライナでの国民投票が必要となるという。
また、この問題は、最終的には首脳レベルで解決される可能性があるという。
第15項
将来の領土に関する合意がなされた後、ロシア連邦とウクライナの双方は、これらの合意を力で変更しないことを自らに義務付ける。
第16項
ロシアは、ウクライナがドニプロ川及び黒海を商業目的で使用することを妨げない。航行及び輸送の自由を網羅する別の海事協定及びアクセス協定が締結される。この協定の枠組みの中で、キンブルン砂州は非武装化される。
第17項
未解決の問題を扱うため、人道委員会が設置される。この項目は、2014年以降にロシアの司法制度によって有罪判決を受けた者を含む残りの全ての捕虜の交換や、児童や政治囚を含む全ての拘束された民間人及び人質の帰還を想定している。
第18項
ウクライナは、協定署名後できるだけ速やかに選挙を実施しなければならない。
第19項
本協定は法的拘束力を持つ。その履行は、ドナルド・トランプ米大統領が議長を務める「平和評議会」によって監視され、保証されていく。
第20項
全ての当事者が本協定に同意した後、完全な停戦が直ちに発効する。
ゼレンシキー大統領は、この文書を総括した上で、「私たちは米国とドネツィク州の領土とザポリッジャ原発に関しては、コンセンサスに至っていない。しかし、大部分では立場を大きく接近させた。基本的に、この合意におけるそれら以外は、私たちと彼らの間でコンセンサスが見出されている」と説明した。
また同氏は、米国側がロシア側と話し合った後、本日12月24日に本文書案に対するロシアの反応が判明するだろうと述べた。同氏はそして、「そうなれば、私たちの次の行動や、種々の決定に向けたあり得るタイムフレームを理解することになる。私たちは、機微な問題を解決するために、首脳レベルで米国と会談する準備ができている。領土問題のような事柄は、首脳レベルで話し合わねばならない」と強調した。
その他ゼレンシキー氏は、戦争終結に関する基本文書案の他、その終結に必要な他の文書も作成されていると述べた。具体的には、ウクライナのための多国間安全の保証枠組みだとし、これはウクライナ、米国、欧州の3者文書だという。さらに、米国からウクライナへ提供される安全の保証の枠組みもあり、それは2者間の文書だという。
ゼレンシキー氏は加えて、「私たちには別の附属書もある。それはウクライナのための安全の保証に関する軍事的側面のものであり、種々の状況下でどのように実際に安全が保証されるかについての詳細な計画である。事実上、それら保証に関する文書のおかげで、私たちは強いウクライナ、すなわち有志連合による支持を得て、和平の遵守を監視するメカニズムを得て、ロシアによるあり得る侵略再開に対する具体的対応策を備えたウクライナを目にすることができるようになるのだ」と説明した。
また同氏は、ウクライナと米国は「ウクライナ繁栄ロードマップ」と呼ばれる、復興と経済発展に関する文書も作成したと伝えた。
これに先立ち、ゼレンシキー大統領は同日、米国から帰国したウメロウNSDC書記とフナトウ参謀総長から米代表団との交渉結果につき詳細な報告を受けていた。
また、22日には、ゼレンシキー氏は、和平計画の枠組みとなる一連の文書案の基本部分は準備が整っていると発言していた。
修正(12月24日12:14):『ドンバス自由経済特区』→「ドンバス自由経済圏」