モルドバでロシアによる選挙干渉容疑で30件の家宅捜索

モルドバの汚職対策当局は23日、国内で30件以上の家宅捜索を実施し、暗号資産を介してロシアと関係があると疑われる政党に資金を提供した容疑で1名を拘束したと発表した。

AP通信が報じた

国家反汚職センターとベルツィ市の検察官は、この件はマネーロンダリングと選挙における汚職に関わるものだと発表した。捜査官は、日曜日に実施される選挙の投票に先立ち、「犯罪計画」を実行した疑いがある政党のメンバーや支持者を追跡していると報告した。1名が72時間拘束された。

法執行機関は、収集された証拠が、違法な資金が「ロシア連邦や犯罪組織のメンバーから」来ており、暗号資産口座を通じて送金されたことを示していると発表した。報告には、「これらの資金は、違法な暗号資産交換サービス提供業者を通じて送金され、現金に変換された後、最終受け取り主の間で配達員によって分配された」と書かれている。

汚職対策当局は、様々な通貨で80万レウ(5万米ドル)の現金、清算関連文書、電子記憶媒体を押収したと述べ、また暗号資産を介して行われた合計約900万レウ(54万米ドル)の現金提供を摘発したという。

モルドバ当局は長期にわたり、ロシアが同国の欧州連合(EU)加盟への道を妨害する目的で、選挙への干渉、偽情報キャンペーン、親露政党への違法な資金提供といったハイブリッド戦争を仕掛けているとして、非難している。

記事には、議会選挙投票日に先立ち、モルドバ国民はまた、多くの偽情報の波に直面しているとある。偽情報は、人工知能(AI)を使って、西洋メディアを模倣した大手ソーシャルネットワークや他のウェブサイトで拡散されているという。そして、偽情報キャンペーンは、サンドゥ・モルドバ大統領系与党である親欧州派の「行動と連帯党」(PAS)への支持を損なうことを目的としているという。

フェイスブックとインスタグラムの親会社「メタ」の代表者は、APに対して、投票日に先立ってモルドバ当局と緊密に連絡を取っており、選挙期間中を通じて「潜在的な脅威」に迅速に対応できる専門チームを有していると伝えた。

グーグルもまた、同選挙に影響を与える組織的な活動を積極的に追跡し、対抗していると表明したという。

なお、モルドバでは、9月28日に議会選挙の投票日を迎える。

同選挙に関して、モルドバのサンドゥ大統領の安全保障担当補佐官を務めるスタニスラフ・セクリエル氏は8月上旬に、選挙への介入の試みとして、ロシアがモルドバ国外の欧州各地で暮らすモルドバ国民を対象として偽情報拡散を活発化していると発言していた

日本の石破首相は今月1日、モルドバのレチェアン首相と会談し、同国で今月28日に投票の実施が予定されている議会選挙の情勢などにつき協議し、その際、双方は、「同選挙の民主的な実施が地域や国際社会の安定にとって重要であるとの認識で一致」していた

7月には、モルドバ首都キシナウで第1回欧州連合(EU)・モルドバ首脳会議が開催され、その際に採択された共同宣言では、ロシアによるモルドバの選挙への介入の試みに特に注意が払われていた

同共同宣言には、「モルドバの未来は、外部圧力、外国からの干渉、印象操作なしに、モルドバ国民によって自由かつ民主的に決定されねばならない。私たちは、モルドバの民主的な選挙を破綻させることを目的とした、ロシアによる恒常的かつ増大するハイブリッド脅威、情報環境への操作と干渉、そして現地の仲介者を通じた大規模な選挙不正スキームの利用を断固として非難する」と書かれている。

モルドバのヴォデ政府報道官は9月9日、レチェアン同国首相の姿で、議会選挙前にガス料金の値下げを約束するディープフェイク動画が拡散されていると警告していた

写真:モルドバ警察(politia.md)