チェコのオカムラ事件
執筆者:オリハ・タナシーチュク(プラハ)
2026年初頭のチェコのニュースは、相当程度ウクライナに関連している。それはロシアの侵略から自国を守る私たちの国(ウクライナ)自身の報道だけでなく、チェコによるウライナ支援にも関係するものだ。
報道のテーマとなったのは、1月6日にパリで開催され、チェコのバビシュ首相が初めて参加した「有志連合」会合、1月7日のパヴェル大統領とバビシュ首相の会談(ウクライナについても話し合われた)、そして同日、ウクライナ向け弾薬イニシアティブが議題となった国家安全保障会議の初会合であった。新政府が当初、その停止を声高に脅していた、いわゆる「チェコ(対ウクライナ弾薬供与)イニシアティブ」も情報空間に影響を与えた。政府は、それにもかかわらず、その継続を決定したのだが、しかし「無料」、すなわち他国の資金を使って、という条件付きでである。
しかし、これらのテーマに大きな「弾み」を与えると同時に、広く国民と政界に真の政治的・感情的爆発を引き起こしたのは、チェコの政権首脳陣の1人であるトミオ・オカムラ氏(チェコ下院議長及び「自由と直接民主主義」党首)の新年の演説であった。
この政治家が私たちの国(ウクライナ)、国民、首脳陣に対して浴びせたあらゆる「汚れ」のような暴言については、ここでは記述しない。それは忌まわしく、拡散する価値のないものだ。
このナショナリスト政治家は、テレビではなく、1月1日に自身のソーシャルメディアのアカウントで発信したが、その演説はすぐに注目を集めた。あらゆる方面から即座に反応が押し寄せた。
社会の反応
ウクライナ人(なお、現在、チェコでは、ウクライナ人が最大の少数民族である点を指摘すべきだ)とチェコ人は、共に怒りを表明した。
すぐに複数の公開書簡が出された。特に、40のウクライナ系団体や市民プラットフォームが共同声明を発表し、明らかな侵略国を公然と支持し、意図的に社会を分断したとしてオカムラ氏を非難した。
政治家のイルジ・ロブコヴィチ氏は、オカムラ氏に直接言葉を向けた。ロブコヴィチ氏はXアカウントに、「あなたの新年演説は、国家的でも、統合的でも、責任あるものでもなかった。(中略)それは民主国家の基本的価値を破壊し、憲法上の地位を悪用して恐怖、憎しみ、冷笑を広める演説だった。(中略)あなたの演説は受け入れられない。演説の中であなたは意図的に戦争の犠牲者を非人間的に扱い、侵略者の責任を相対化し、自身の政治的動員のために人々の苦しみを冷笑的に悪用した。(中略)特に懸念を覚えるのは、あなたのレトリックが独裁政権のそれに酷似していることだ」と投稿した。
真の「民衆の声」となったのは、プルゼニ州セムニェヴィツェ村の村長で教師のアントニーン・コラルジュ氏が、バシリ・ズバリチ駐チェコ・ウクライナ大使に宛てた書簡であり、それには数万人の署名が集まった。コラルジュ氏はその中で、オカムラ氏の言葉は事実や歴史的経験、そして人道・連帯・責任という基本原則に反していると指摘し、チェコスロバキアが一部の国家の先見性のなさを理由に犠牲となった1938年を忘れてはならないと呼びかけた。
同時に、オカムラ氏のウクライナ嫌悪は、彼が明らかに予期していなかった効果をもたらした。現地有力誌『レスペクト』は、「チェコの下院議長というよりは、ロシア国家院議長の発言をむしろ思わせる言葉を新年の夜に公然と放ったこのチェコの政治家は、並外れたことを成し遂げた。彼の言葉の1つ1つが、即座にウクライナのフリヴニャ(編集注:ウクライナの通貨)へと変わっているのだ」と記している。
実際、全面侵略開始以来、ウクライナのための武器購入のために最大の寄付を集めてきたイニシアティブ「プーチンへのプレゼント(Dárek pro Putina)」の代表であるマルチン・オンドラチェク氏が筆者に認めたところによれば、オカムラ氏が演説を公開した1月1日から寄付額が急増し、1月1日には78万コルネ(約2万6500ユーロ)、1月2日には95万4000コルネ(3万2350ユーロ)に達したという。
また、83歳の年金生活者ヤナさんから活動家たちに宛てられた手紙も非常に感動的だ! 彼女はその演説に激怒し、光ファイバー無人機のために2万クローネを寄付した。ヤナさんは「集会に行くのは面倒だけれど、もし帝国的ロシアの協力者や手先に反対するデモがあるなら、私は行くだろう」と記した。
関心を示したチェコ人たちが寄付する資金は全て、ウクライナ軍が必要とする物品の購入に充てられる。
外交的ピンポン
ウクライナのステファンチューク最高会議(国会)議長は、「同僚」の言葉を厳しく批判した。
ステファンチューク氏は、「トミオ・オカムラ氏の新年の演説は、無知、操作、そして冷笑の鮮やかな事例だ。ウクライナとウクライナ人を改めて侮辱することで、彼は実際には、尊厳と正義の側、ウクライナの側に立つチェコとチェコ人に対して、何よりもダメージと恥辱を与えているのだ」と述べ、さらに「彼が『便利な愚か者』なのか、それともロシア連邦保安庁(FSB)のエージェントなのかを、私たちは必ず突き止めるだろう」と付け加えた。
非常に直接的な表現である。しかし、チェコではこれらの言葉は「お咎めなし」とされた。他方で、スヴァリチュ駐チェコ・ウクライナ大使が、ソーシャルメディアでオカムラ氏の言葉を「卑劣で断じて受け入れられない」とし、その「侮辱的で憎悪に満ちた発言」は、明らかにロシアのプロパガンダの影響下で形成された彼個人の立場だとウクライナ人は受け止めている、と批判すると、そのコメントは、チェコのペトル・マチンカ外相を刺激した。マチンカ外相は、外国の大使がチェコの憲法上最上級の職にある人物の発言を公に評価することは不適切だとの認識を示した。
これを受け、シビハ・ウクライナ外相は部下を擁護せざるを得なくなった。シビハ氏は、全ての大使にはウクライナの尊厳を守ることが指示されており、ズヴァリチュ大使はそのように行動したのだと指摘した。
最終的には、プラハとキーウにある外交使節団の代表者が、それぞれの外務省に相互に招待される事態となった。発表によれば、それら全ての会合は「肯定的」に行われたという。それだけでなく、マチンカ外相とシビハ外相の間で電話会談が行われ、その後、チェコ外相による近い将来のウクライナ訪問が発表されることになった。
マチンカ外相は、トークショーにて、自身はウクライナを間違いなく友好国家だとみなしており、良好な関係を築きたいと述べた。
同時に、マチンカ外相は連立パートナーであるオカムラ氏の言葉を批判するには至らず、自分ならそのような言葉は言わないというコメントに留めた。

問題を抱えるチェコ連立政権
チェコの連立政権の他の参加者も、オカムラ氏のスキャンダラスな演説へのコメントを避けている。概して「自分ならそんなことは言わない」という立場は、閣僚間で調整されたものに見える。
それも不思議ではない。連立与党3党は下院の200議席のうち108議席を占めている。過半数ではあるが、しかし決して盤石ではない。野党はすでに、内閣信任案の提出や、トミオ・オカムラ氏の下院議長解任を議題に載せることを提起している。
2025年10月のチェコ総選挙後に発足した3党連立政権の活動が容易ではないことは、当初から誰もが理解していた。政党「ANO(不満を持つ市民の行動、ウクライナ語の『TAK(はい)』)」は選挙で勝利したが、内閣形成のために、他の状況下であれば連立を組むはずのない政党の中からパートナーを探さざるを得なかった。オカムラ氏の極右政党は、ANO自身のポピュリズムを差し引いても、これまではあまりに忌まわしい存在であった。また、極右政党「モトリスティ(自動車愛好家)」は、2025年の選挙まで大きな政治の舞台で目立った実績がなく、「ダークホース」であった。
したがって、昨年11月に発足した政府には、かなり激動の時期が待ち受けている可能性が十分にある。しかし、彼らにとってそれは慣れたものでもある。というのも、ANOとバビシュ氏が率いた2017〜2021年の前政権も、困難な時期を経験し、一時は少数与党政にすらなっていたのだ。バビシュ氏の更迭を何度か救ったのは、当時のミロシュ・ゼマン大統領であった。
バビシュ首相と現在のパヴェル大統領との関係は、相互に好意的と言えるほどではない。大統領と首相の恒例の新年午餐会は、それほど祝賀ムードではなかったが、その席でパヴェル大統領はオカムラ下院議長の言葉に関連して、ロシアの対ウクライナ侵略に関する政府の立場について問題を提起した。そして、パヴェル氏は、「公の発言が国の外政上の優先課題や、チェコがパートナーや同盟国に対して負っている義務と一致するように調整する」必要性を強調した。なお、パヴェル大統領こそが、2023年2月にミュンヘンでウクライナのための弾薬提供イニシアティブの発足を発表した人物であることは喚起しておこう。
バビシュ首相自身も連立パートナーの言葉を非難したくはないものの、外政方針を決定するのは自分だけだと慌てて表明した。
トミオ・オカムラ氏の言葉がウクライナやチェコだけでなく、チェコの少なくとも欧州パートナー諸国の間でも引き起こした否定的な影響を何とか和らげようとする試みは、最終的には、一定の利益をもたらしたようである。パリで「有志連合」の首脳たちと話し合った後、バビシュ首相は、自分たちの国の名を冠したイニシアティブ(ウクライナ向け弾薬提供)を、今後資金は投入しないものの、放棄もしないと発表した。これまでの自身の立場を覆したのだ。結局のところ、ウクライナ支援に対する反対者というポーズを取ることは、国内外での自身のイメージを損なうだけである。バビシュ氏は、非常に難しいバランスの模索を迫られるだろう。
トップ写真:KPS/ Lukáš Janičina