クリミア・タタール民族会議「クルルタイ」開催:何が話され、何が決められたか

クリミア・タタール民族会議「クルルタイ」開催:何が話され、何が決められたか

ウクルインフォルム
11月12日、キーウ(キエフ)市内で、クリミア・タタール民族会議「クルルタイ」(意思決定機関)の会合を開催した。これはクルルタイの歴史上初めて、クリミアの外での開催となったが、それは不可避の問題を緊急に解決する必要があったことと、被占領下クリミア内では開催が不可能であったことが理由である。

一方で、クルルタイをクリミアの外、ウクライナの大陸側で開催することは、同会議の代議員がクリミアと大陸側との間の行政境界線を越境するリスクが生じ、その後、占領政権からの迫害を受けるおそれがあったため、同会合の開催をめぐる状況は複雑であった。

それでも、キーウにあるクリミア・タタール民族代表機関「メジュリス」(執行機関)のオフィスでクルルタイ代議員会合を開催するというのが、唯一可能な選択肢であった。この会合には、クルルタイの代議員76名、活動家やクリミア・タタール民族運動のベテランが100名以上参加。この会合で彼らが議論し、決定した主要な問題をいくつか指摘ことにする。

クリミア情勢の評価:原則への献身を勝利への道とみなしている

クリミアに現在まで住んでいる、民族代表機関「メジュリス」のナリマン・ジェリャリ副代表は、クリミア・タタール人は、現在挑戦を受けている最中なのだと考えていると述べた。同副代表は、クリミア・タタール人は第二次世界大戦、民族追放、祖国クリミアへの回帰という苦難を生き抜いたのであり、現在の「ロシアへのクリミア併合」もいずれ克服できると主張した。

Наріман Джелялов
ナリマン・ジェリャリ・メジュリス副代表

ジェリャリ副代表は、会議中「私たちが自らの目的、信念、非暴力闘争の原則に献身することが、私たちの勝利となるのである」と発言した。同副代表は、クリミアの人々は、4、5年経っても、新しい「政権」なるものに慣れてはいないが、一方で、新しい条件下を生き抜く手段を模索はし始めていると説明した。さらに、同副代表の説明では、新しい現実に適応しながらも、多くの人々が自らの共同体を他者のイデオロギーから防衛するための努力をしており、ある者は母語であるクリミア・タタール語の学習を、ある者はクリミア・タタール民族旗の掲揚を、ある者はクリミアの文化遺産状況のモニターを、あるものは初等・中等教育での新しいクリミア・タタール学級の開設に向けた闘いをしているという。同副代表は、「私たちの一人ひとりが、クリミアが元の地位に戻ることを期待しながらも、『いつそれが実現するか』をただ尋ねるのではなく、その実現の時を近づけるために各自が貢献すべきなのである」と発言した。

抵抗のために何ができるか

クリミア・タタール民族の指導者であるムスタファ・ジェミレフ氏は、クリミアの住民は、自らの生活と健康へのリスクを犯さずに、占領政権への抵抗を行うことはできないだろうとしつつ、しかし、「一人一人が、クリミアにおける人権侵害の事例を全て記録し、メジュリスのオフィスに渡すことはできるであろう。一人一人が自らの名前で、住民に対して行われる無法行為を記録し、伝えること、占領者が環境や景観、クリミア・タタール人の文化遺産を破壊する事実を、ていねいにフォローし、記録し、伝えることはできるのである」と主張した。

Мустафа Джемілєв
ムスタファ・ジェミレフ前メジュリス代表

また、メジュリス副代表のアフテム・チーホズ氏は、クリミア・タタール人は、市民団体「クリミアの団結」のメンバーを拡大するために何ができるかを考えるのが良いと指摘した。同団体は、クリミアで起きている家宅捜索、拘束や逮捕の状況をフォローしている組織である。チーホズ副代表はまた、クリミアではクリミア・タタール人知識人の声を聞く機会がなく、そのため、知識人の声・行動を伝える集会を開催するのは悪くないのではないかと指摘した。

占領されているクリミアで、何をすべきでないか

ジェミレフ氏は、クリミアの住民に対し、「占領者が行う『選挙』と名付けられた茶番は無視すること、そして、占領者のプロパガンダ・キャンペーンにも加わらないこと」を忠告している。さらに、同氏は、裏切り者を無視し、民族から孤立させることは正しいことであると指摘した。

また、今回キーウに集まったクルルタイの代議員達はおおむね、帝国的ロシアやソ連政権が何世紀にもわたって撲滅しようと試みてきた、クリミア・タタール民族の誇りや人間の尊厳を失ってはならないと考えている。指導者のジェミレフ氏は、クリミア在住のイスラム教徒は、ロシア連邦保安庁に協力している宗教指導者(ムフティー)が運営するモスクには行くべきでないとも主張し、「占領者から給料を受け取っているイマームは、完全なイマームではあり得ない」と述べた。

クリミアで逮捕されている政治囚を支援する手段は?

クリミアの政治囚の家族は、財政的支援と精神的支援を必要としている。彼らのサポートが必要であり、またそのためには多くのことを行わなければならない。例えば、今回の会合では、ムスタファ・ジェミレフ氏は、翌11月13日の自身の75歳の誕生日を祝う行事について、招待客に対し、プレゼントではなく、クリミアの政治囚の家族のための寄付を持ち寄って欲しいと会合参加者に呼びかけていた。

アフテム・チーホズ・メジュリス副代表

さらに、アフテム・チーホズ・メジュリス副代表は、ロシアに拘束され、クリミアの域外へ移送された政治囚への支援をどのように実現していくか、考えなければならないと指摘した。移送先がロシアの奥地となる場合、精神的サポートを行うために現地に向かうことが非常に困難となっている。チーホズ副代表は、拘束されているクリミア出身者が社会的支援を感じるためには、拘束者のいる町に領事部を開設する必要があるとの考えを伝えた。

占領政権との協力を決めたメジュリス構成員をどうするか

会合時、クルルタイの一部代議員達は、複数回、クリミアの占領政権と協力することを決めたメジュリスやクルルタイの構成員を完全に除名しなければならないと呼びかけた。代議員達は、これら協力者の存在のせいで、クルルタイの開催に必要な代議員数の確保が困難であるわけで、協力者を除名し、これら人物のポストに新しい人物を選出しなければならないと主張した。

他方、ナリマン・ジェリャリ・メジュリス副代表は、反対に、クルルタイの活動原則に違反するべきではないと説明し、クルルタイ代議員の地位剥奪は内部文書に規定がなく、非常に複雑で民主的な民族代表選出手続きを変えるべきではないと主張した。同副代表は、「占領政権と協力するメジュリスの数名のメンバーのためだけに、現行の規範を変えてはならない」と延べ、いずれ、議論を経た上で、しかるべき決定が採択されることになろうと指摘した。

占領下におけるクルルタイの今後の活動について:規定変更に向けた決定の採択

今回のクルルタイ会合の基本的問題の一つは、クリミアが被占領下にある中、クルルタイの活動をどのように組織していくかであった。会議では、今後クルルタイの活動規定に変更・追加を行うとの決定が採択された。メジュリスは、2019年1月15日までに、全ての必要な変更・追加を行うことが義務づけられた。また、クルルタイ活動の特別規定と特別手続きの正当化は、メジュリスにより提案される規定変更をクルルタイ代議員の過半数が署名により支持することで発効することが宣言された。

クルルタイの新しい代議員はいつ選出されるか

クリミアにおいて民主的な選挙を実施することができず、そのためクルルタイの刷新が不可能な中、会合参加者は、現在のクルルタイの代議員の権限に関しては、「クリミア全体でクルルタイ議員選出の自由な選挙が実施できる条件が回復されるまで、現行代議員の権限が延長される」ことを定める声明を採択した。この声明は、メジュリス、中央選挙管理委員会、監査委員会といったクリミア・タタール民族代表機関の全てのレベルと機構に関係するものである。

今回被占領地クリミアからの参加ができなかったクルルタイ代議員達は、今後2か月間以内に、この民族自治諸機関の権限延長に関する声明に対し、自らの署名をもって意思表明をしなければならないとのこと。

ゼラ・アシロヴァ、キーウ

写真:ユリヤ・オウシャニコヴァ、ウクルインフォルム


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