ロシアのソ連時代装甲車両の備蓄、枯渇に近付く=戦争研究所
米国の戦争研究所(ISW)は、ロシアは対ウクライナ戦争を通じて、ソ連時代の装甲車両の備蓄を利用して攻勢作戦を維持してきたが、その資源にも限界があり、それは枯渇に近付いていると分析している。
ISWの6月26日付報告書に書かれている。
ISWは、衛星画像を参照して、ロシアが倉庫から持ち出している戦闘装甲車両のほとんどは、戦争初期にロシア軍が行っていたのとは異なり、もはや修理なしに直接前線に送れるほど良好な状態ではないと指摘している。
ISWの推定によると、アルマヴィル(クラスノダール地方)にある第81装甲車両修理工場は、「BTR70/80」装甲兵員輸送車を修理・近代化しているところであり、おそらく2023年以降、戦場で損傷した装甲兵員輸送車も修理しているという。そして、同工場は毎年最大200台の装甲兵員輸送車「BTR70/80/82」を修理しているとみられるという。また、エカテリンブルクにある第144装甲車両修理工場は、旧式の歩兵戦闘車/空挺戦闘車を修理できる唯一の工場であり、「BMP2」や「BMD2」も修理しており、同工場は毎年100~150台の「BMP2」と「BTRーD」を再生しているとみられるが、何年から行われているかは不明だという。
またISWは、アルザマス(ニジニ・ノヴゴロド州)にあるアルザマス機械工場は毎年500台以上の「BTR82」を生産していると推測しているが、衛星画像からは同工場で車体の山が積み上がっていることが示されており、これは同工場が生産ペースを上げているか、あるいは損傷した装甲兵員輸送車も修理していることを示唆していると指摘している。ISWは、アルザマスの生産量は不明だが、ロシア軍がウクライナで大量の「BTR80/82」を失っていることや、それらの車両を補充する速度から見て、その生産規模は高い水準にある可能性が高いと推測している。クルガン市にある装甲車両メーカー「クルガンマシュザヴォド」は、毎年100~120台の「BMD4M」、約360台の「BMP3」、そして20~30台の「BTR-MDM」を生産しているとみられているという。
そしてISWは、「ロシアは戦争を通じて、ソ連時代の装甲車両の備蓄を投入し、高い損失を補いながら攻勢作戦を維持してきたが、その資源は限られており、枯渇に近づいている。ロシア軍は2023年と2024年に装甲車両で高い損失を被ったため、ウクライナの前線では装甲車両の代わりにオートバイやバギーを使用するケースが増えている」と報告している。
その他、ISWは、英国の国際戦略研究所(IISS)が2025年2月に発表した評価を引用し、ロシア軍が2024年だけで3700台以上の歩兵戦闘車や装甲兵員輸送車を失ったと指摘した。同時に専門家たちは、ロシアによるオートバイやバギーの使用が、中長期的にはその損失を補うのに十分かどうかは現時点では不明だと指摘している。