2014年のチェコ弾薬庫爆発はロシアの対ウクライナ特殊作戦の一環だった=ベリングキャット
26日、民間調査グループ「ベリングキャット」が調査報告「露軍参謀本部情報総局(GRU)はどのようにチェコとブルガリアにおける妨害工作と暗殺活動でウクライナを弱体化しようとしていたか」を公開した。
報告には、調査により、2014年のチェコでの弾薬庫の爆発は、ウクライナが東部戦争でロシア部隊やロシアが支援する戦闘員から防衛するために決定的に必要な武器や弾薬を入手することを不可能にすることを目的とした、露GRUの長期作戦の一部であったとする仮説が裏付けられたと書かれている。
その作戦は、ヴルビェティツェの弾薬庫の爆破とブルガリアの武器販売企業EMCO社トップ、エミリアン・ゲブレフ氏の毒殺の試みから組み立てられていたという。
さらに、通信傍受記録から、露GRUの特殊部隊のメンバー数人が、当時ウクライナ東部に配置されていたロシア軍人と活発にやりとりしていたことも確認されている。
なお、EMCO社は、2014年末にウクライナへと弾薬を供給していたことを認めていた。また、ウクライナ軍の軍事調達に詳しい関係者は、このEMCO社の供給がウクライナ軍の防衛能力の向上に決定的な役割を果たしていたと述べている。
当時EMCO社は、ソ連の装備品に合う最新の弾薬の製造に特化した、欧州連合(EU)加盟国内に2つしかない企業の1つであった。また、もう1つの企業は、ロシアの完全なコントロール下にあったという。
ベリングキャットは、ロシア情報機関は当時、ウクライナに弾薬が渡らないようにするため、ウクライナの火砲に合致する弾薬を取り扱う企業に対して、それらをウクライナの支払額より高い値段で買い取ることを提案していたと指摘した。
EMCO社は、ウクライナが2014年11月10日に署名された契約を根拠に2014年12月から2015年2月まで弾薬を輸入していたことを認めた。152ミリ口径砲弾5000弾含む大半の弾薬は、2015年1月にウクライナへと届けられたという。最後の輸入は、2015年2月26日とのこと。
ミンスクにて新しい合意(編集注:2015年2月12日付ミンスク両合意履行のための方策パッケージ)が締結されて以降、合意はどうやら失効したという。契約金額は、2500万ユーロ以上だったと書かれている。同時に、ウクライナに契約上の全ての商品が届けられたわけではないとのこと。
これに先立ち、4月17日、チェコ治安機関は、2014年のチェコ南東部ヴルビェティツェ(Vrbětice)での弾薬庫爆発にロシアの情報機関が関与していたとする結論を発表し、2014年10月にプラハとモラヴィアに滞在していたロシア連邦パスポート所有者男性2名を捜索していると伝えた。これら2名は、写真から、2018年の英南部ソールズベリーにおけるスクリパリ暗殺未遂事件の容疑者と同一人物であることがわかっている(露軍諜報機関のアナトリー・チェピーガとアレクサンドル・ミシュキン)。
バビシュ・チェコ首相とハマーチェク第一副首相兼内務相は同日、同国から18名のロシア外交官を追放すると発表した。追放されるのは、「チェコ共和国情報機関により、ロシア対外情報庁とロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)の将校として特定された在プラハ・ロシア大使館の職員全員だ」と説明された。
なお、ハマーチェク氏は、今回の発表にともなって、予定していた露首都モスクワへの訪問を取り止めている。