ラヴロフ露外相の発言は米国による和平イニシアティブへのロシアの拒否を示している=戦争研究所
米国の戦争研究所(ISW)は、米国メディアでのラブロフ外務大臣の発言は、ウクライナにおける平和に関する米国提案の取り組みをロシアが拒否していることを示していると指摘している。
ISWが8月24日付報告書にて指摘した。
ISWは、ラブロフ氏の最近のNBC局とのインタビューを分析した上で、同氏が「戦争の根本原因」として、「NATOの東方拡大」やウクライナにおける「ロシア語話者への差別」というロシアのナラティブを繰り返し持ち出したとし、それはロシアの軍事目標が今も変わっていないことを示していると指摘した。
報告書には、「アラスカでの首脳会談(8月15日)後も含め、ラヴロフ氏がどのような戦争の終結も『根本原因』の排除に向けられるべきだと執拗に主張していることは、ロシアの戦争目的が変わっていないことを示している」と書かれている。
さらに、ISWは、ロシアがトランプ米大統領の提案する交渉タイムラインに応じる意思がないことから注意をそらすために、ラブロフ氏はあたかもゼレンシキー宇大統領が平和達成への障害であるかのように描こうとしたと指摘した。そして、ISWは、ラヴロフ氏が、ゼレンシキー氏とプーチン氏の会談は無意味だろうと示唆し、ウクライナにとって実質的に軍事的、政治的、文化的な降伏に等しい、ロシアの当初の要求をウクライナが受け入れない限り、プーチン氏は会談に応じないとほのめかしたと指摘した。
ISWはさらに、ロシアがウクライナ憲法と法律を歪曲しゼレンシキー大統領の「非合法性」に関する虚偽の主張を展開して、ウクライナ現政権の信用を損なおうとしていると警告している。
加えてISWは、ラブロフ氏が、ロシアに有利なナラティブを広め、2014年と2022年のロシアによるブダペスト覚書違反を覆い隠しつつ、和平プロセスに参加するロシアの意思の欠如を正当化しようとしているとの見方を示した。さらにISWは、それは将来の「安全の保証に関する合意」において、ロシアを保証国のうちの1国とするための布石だと評価している。
ISWは、ロシアに西側諸国によるウクライナへの「安全の保証」に対する拒否権を与えることは、ウクライナが安全保障協定を結び、軍を増強・近代化し、国際的支援を得ることを妨げることになり、次のロシアの侵攻に対するウクライナの防衛能力を弱体化させることにつながると強調している。