ラヴロフ露外相、ロシア抜きのウクライナへの安全の保証提供の議論を否定

ロシアのラヴロフ外相は20日、ロシアはウクライナへの安全の保証の提供を「支持する」と述べつつ、安全を保証する国は「ロシアや中国を含む」国連安全保障理事会常任理事国が務めることができるとの見方を示した。

ラヴロフ外相が、ヨルダンのサファディ外相との会談後に発言した。BBCロシア語版が報じた

記者から、アラスカとワシントンでの首脳会談で協議されたウクライナへの安全の保証の提供に関する質問に対して、ラヴロフ氏は「私たちはこれら保証が本当に信頼できるものとなることを支持する」と返答した。

同時に、ラヴロフ氏はその後、2022年4月にイスタンブルで行われた交渉中に行われたロシアとウクライナ間で「暫定合意」が結ばれていたと主張した上で、それを「良い例」だと形容した。

同氏は続けて、当時言及されていた原則の中には「ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)やその他の軍事ブロックへの加盟を断念すること、ウクライナの中立的かつ非核の地位を確認すること」が含まれていたと発言した。

さらに同氏は、そのいわゆる「暫定合意」なるものでは、ウクライナの安全の保証国は、ロシア、中国、米国、英国、フランスを含む国連安全保障理事会の常任理事国が務めることになっていたと主張した。

その際同氏は、ロシアの参加なしでは、どのような安全の保証について議論することも「どこへも続かない道だ」と訴えた。同氏は加えて、ロシアは、現在提案されているような、ロシア抜きで集団安全保障問題を解決することには同意できないと主張した。

同氏は記者団に、「西側、何より米国は、ロシア抜きでの安全の保証の真剣な議論というのはユートピアであり、どこへも続かない道であることをよく理解している」と語った。

ロシアのプーチン氏とウクライナのゼレンシキー大統領の会談の可能性について、ラヴロフ氏は、ロシアはどのような会談フォーマットにも準備があるとしつつ、「然るべき準備が必要だ」とも述べた。その際同氏は、「私たちはどのようなフォーマットへの準備もあるが、最高レベルでの会談となると、首脳会議が状況を悪化させることなく、私たちが継続する用意のある交渉に本当に終止符を打つために、あらゆる予備的な段階で綿密に準備する必要がある」と語った。

同氏はまた、ワシントンでの米宇欧州首脳の会談の際に、トランプ氏がプーチン氏に電話をかけた際の最近の会話で、プーチン氏は「代表団のレベルを上げることを検討するよう提案した」と発言した。

そして同氏は、ロシアは、ウクライナとロシアが政治的問題をはじめとする、平和的情勢解決の様々な側面を議論できる様々な作業部会の「設置を主導した」とも発言した。

なお、ウクライナのゼレンシキー大統領は2024年12月19日に、2022年のいわゆる「イスタンブル合意」なるものは、ロシアがウクライナの降伏と独立放棄に関する最後通牒であり、実際にはその合意は存在せず、それはプーチンの「老いの空想」だと形容していた

これに先立ち、ロシアや諸外国の報道機関が、「開戦直後の2022年3月に、ロシアとウクライナの直接交渉により和平達成の機会が生じていたが、米英が交渉を破綻させた」などと主張する記事を断続的に掲載していた。そのロシアとウクライナの和平達成に近かったと主張される協議は、協議開催場所から「イスタンブル合意」などと呼ばれることがある。

なお、2022年3月には、ロシア軍のキーウへの攻撃の失敗が明らかになっており、イスタンブルにおける最後の和平協議となった3月29日の協議より前に、ロシア軍は戦力再編を目的にキーウ周辺から撤退をすでに開始していた。またラブロフ露外相は4月7日に「和平提案は受け入れられない」と発言している。

英国のジョンソン元首相は、自身が2022年4月9日にキーウを訪問した際に、あたかもゼレンシキー宇大統領に対して、ロシアと和平交渉をするなと命じたとするロシアの主張を否定している

2025年3月、米国のケロッグ・ウクライナ問題大統領特使は、いわゆる「イスタンブル合意」と呼ばれるものは、将来の合意の公正な枠組みとはみなすことはできず、新しい文書が必要だとの見方を示していた

ウクライナのクレーバ当時外相は2024年5月、、「2022年春にウクライナとロシアは実は合意に近付いていた」とする話はロシアと親露的な人々が好んで広めている嘘で、注意深く事実を見れば、それはどのような批判にも耐えられるようなものではないと説明していた