ウクライナ汚職捜査機関トップ、大統領提出の権限回復法案が議会で妨害されるリスクに言及
ウクライナの政権高官の汚職犯罪捜査に特化した機関「国家汚職対策局(NABU)」のクリヴォノス局長は、ゼレンシキー大統領が提出したNABUと特別汚職対策検察(SAP)の独立を回復する新法案は31日に本採択されねばならないと発言した。
クリヴォノスNABU長官が公共放送「ススピーリネ」とのインタビュー時に発言した。
クリヴォノス氏は、「法案が木曜日に採択されたら、それがあったものを全て戻すことになる。同法案は私たちに独立の完全な保証と刑事手続きを進める(編集注:能力)を付与するものだ。重要なのは、同法案が木曜日に第一読会と本投票で採択され、速やかに大統領の署名へと渡されることだ」と発言した。
また同氏は、プロセスを長引かせ、同法案の読会を2回行わないことが重要だとし、なぜなら修正案(提出)、妨害、引き伸ばしといった大きなリスクがあるからだと指摘した。
加えて同氏は、「そして有名な法案の投票の瞬間から大統領による署名と交付までの期間に、私たちの捜査(編集注:捜査情報)の請求、その捜査を(編集注:検察が)閲覧するリスクが存在する」と発言した。
そして同氏は、新しい法案が採択されても、汚職対策機関への攻撃は続いていくだろうし、その攻撃はより巧妙なものとなるだろうと指摘した。
その際同氏は、「NABUとSAPは非効率だというメッセージをともなって、社会の扇動が続くだろう。『あなた方は間違った人々を支持した。彼らは何もしていない。彼らは結果を達成していない』というものだ。(編集注:両機関を)改革するべきだという方向にウクライナ社会を誘導していくための信用失墜がさらに強まるだろう」と発言した。
同氏はその他、以前に国際機関、米国、欧州連合(EU)、国際金融機関の代表者たちがNABUの内部監査を行い、欠点を発見し、適切な勧告を行ったことを喚起した。その際同氏は、「私たちは計画を立て、NABUとSAPをより効率的にするためにこれらの勧告を実行する。私たちは、ウクライナ社会の要求を満たし、将来の攻撃に備えねばならない。なぜなら、将来の攻撃には耐えられない可能性もあるからだ。私たちはそれをしっかり認識、理解している」と発言した。
これに先立ち最高会議は22日、NABUとSAPの権限を縮小する法律を採択していた。
同採択後、クリヴォノスNABU局長は、ゼレンシキー大統領に対して、同法が発効すれば「2つの独立機関、NABUとSAPは、事実上、完全に依存状態に置かれてしまう」ため、同法に署名しないように呼びかけていた。
同日、ゼレンシキー大統領は、同法に署名した。
キーウなどウクライナ各地では、連日最高会議が採択した汚職対策機関の権限縮小を定める法律に反対する市民が抗議集会を開催し、ゼレンシキー大統領に同法案への拒否権を発動するよう要求している。
また、一部の最高会議議員は、同法の審査について憲法裁判所に申し立てをするために、議員の署名集めを行うと発表している。
23日、NABUとSAPは、前日採択された両機関権限制限法により、両機関の独立が著しく制限されると表明していた。
24日、ゼレンシキー大統領は、最高会議に両機関の権限を回復し、独立を確保する新しい法案第13533を提出。NABUとSAPは同日、ゼレンシキー大統領が提出した法案第13533は両機関の独立性のあらゆる保証を回復するものだと表明した。
同法案の最高会議での審議は、7月31日に行われる見込み。