ウクライナ議会、汚職対策機関の権限縮小法案を採択 汚職対策機関は大統領に署名しないよう要請
ウクライナ最高会議(国会)は22日、ウクライナの政権高官の汚職犯罪捜査・起訴に特化した法執行機関「国家汚職対策局(NABU)」と「特別汚職対策検察(SAP)」の権限を縮小する法案を採択した。
最高会議議員263名が賛成した(過半数は226)。ジェレズニャク最高会議野党会派「声党」議員がテレグラム・チャンネルで報告した。
また、議員246名は、同法案に緊急で署名することへも支持を表明した。
これに先立ち、NABUとSAPは22日、今回最高会議が採択した法案第12414号に関して、同法案は「ウクライナにおける汚職対策システムの独立性を最終的に破壊するおそれがある」として、議員たちに投票を棄権するよう要請していた。
NABUがテレグラム・チャンネルで伝えた。
NABUは、「議会は法案第12414号の第二読会に向けた準備しており、直前に行われた修正はSAPの独立性が事実上破壊され、NABUとSAPの活動を検事総長に従属させるものだ」と訴えている。
また発表には、この法案は具体的に、以下の問題があると指摘されている。
・検事総長がNABUのすべての事件情報にアクセスできるようになる、または他のあらゆる検察官にそのようなアクセスを許可できる。
・NABUの刑事に拘束力のある書面による指示を与える権利を持ち、その不履行の場合には管轄を変更し、事件を他の機関に引き渡すことができる。
・弁護側の要求に応じて捜査を打ち切ることができる。
・検事総長が事件の管轄権を巡る見解相違を解決できるようになる。
・政権高官の容疑に単独で署名可能になる。
・SAP長が検察官グループに入る権利を失う。検事総長のみが本件の決定権を有す。
NABUは、「事実上、この法案が採択されれば、SAP長は名目上の存在となり、NABUは独立性を失い、検事総局の一部門に転落するだろう。2015年以降、国際パートナーたちとともに構築されてきたウクライナの汚職対策インフラは破壊されることになる。最高会議議員に対し、ウクライナの汚職対策システムの独立性を最終的に破壊するおそれのある投票を棄権するよう求める」と訴えていた。
また、セメン・クリヴォノスNABU局長は、同日記者会見を開き、ゼレンシキー大統領に対して、今回最高会議が採択した法案に署名しないよう要請した。ウクルインフォルムの記者が伝えた。
クリヴォノス局長は、「2つの独立機関、NABUとSAPは、事実上、完全に依存状態に置かれる。私たちはこれに断固として反対する。現在、まだウクライナ大統領の署名が残っており、私たちはこの法案に署名せず、適切な拒否権を行使して差し戻すよう要請する」と発言した。
また同氏は、NABUとSAPが、政権高官の汚職との闘いを唯一の管轄とし、機関の独立が保証された機関として創設されたことを喚起した。
その際同氏は、「これは、欧州における私たちの地位と、欧州的ウクライナ社会の発展のための条件なのだ。したがって、改めて強調するが、私たちはこのような行動を断固として非難し、当該法案に署名しないよう要請する」と訴えた。
さらに同日、最高会議の汚職対策委員会のアナスタシヤ・ラジナ委員長は、フェイスブック・アカウントで、修正が加えられた法案第12414は、「SAPを装飾的な機関にし、NABUとSAPの活動を検事総長の意思に完全に依存させるものだ」と強調した。