ダボスでの第4回ウクライナ和平案協議で、5つの作業部会が活動結果を報告

14日、スイス・ダボスで開催されたウクライナが推進する10項目で構成される和平案「平和の公式」の実現に向けた、81の国・国際機関の代表団による会合では、その内5項目が検討された。

ウクライナ大統領府広報室が伝えた

発表によれば、今回検討された5項目は「ロシア軍撤退・戦闘停止」「正義の回復」「環境安全保障」「エスカレーションと戦争の再来の予防」「戦争終結の確認」だったという。

「ロシア軍撤退・戦闘行為停止」の作業部会では、リトアニアの代表者とウクライナのウメロウ国防相が作業部会の活動結果を発表した。とりわけ、各国の国防相と安全保障担当補佐官級の国際作業部会を設置し、ロシアに対して完全な戦闘停止、ウクライナからのロシア軍撤退を要請する内容の国際合意を策定し、採択することを同作業部会の課題とすることが提案された。また、ロシア軍・武装集団の被占領下ウクライナ領からの撤退メカニズムを共同で策定する必要性が提起された。提案によれば、「軍撤退」とは、(1)ロシア軍部隊・軍人の一時的被占領下ウクライナ領からの撤退、(2)一時的被占領地における軍事テロ組織の解体と完全武装解除、(3)一時的被占領地からの処分のための軍事機材と兵器の排除、を含まねばならないという。

「正義の回復」項目の作業部会では、オランダの代表者、ウクライナのコースチン検事総長、ムードラ司法次官が結果を発表した。3者は、ロシアの責任確保の努力は、5つの重要要素に基づいているとし、それは、(1)国内レベルでの効果的な捜査の確保、(2)侵略犯罪の責任確保、(3)国際司法メカニズム関連の戦略的パートナーシップの延長、(4)2国間・多国間国際パートナーシップ促進、(5)国際法に従ったロシアによるウクライナ国家と国民への戦争賠償の支払い確保、だと説明された。

コースチン検事総長は、「今日の時点で、私たちは最大12万の戦争犯罪事例を登録している。私たちは、477名に対して容疑を伝達しており、319名を起訴、77名に判決を出している。私たちは、リソースと努力を多元化し、戦争犯罪を扱う地域チームを9つ設置した他、中央のレベルで特別チームを作った。特別チームとは、武力紛争下における性暴力、戦争によって生じた環境被害、ウクライナ児童の追放に関するものだ」と伝えた。

同氏はまた、「侵略犯罪訴追のための国際センター」は正義の回復において重要な前進だと指摘した。また、最終的な一歩となるのは、侵略犯罪を扱う特別法廷の設置となると述べた。

ムードラ司法次官は、侵略国への圧力強化、賠償金支払いメカニズムの策定もまた重要だと伝えた。

「環境安全保障」の作業部会では、ドイツ、フランス、ブルガリアの代表者、ウクライナのスヴィリデンコ第一副首相、ストリレツ環境相が作業結果を発表した。ストリレツ氏は、ウクライナで生じた戦争によって生じた温室効果ガス排出量はオーストリアの総排出量を上回ると述べた。また同氏は、ロシアがウクライナ南部のカホウカ水力発電所を破壊したことで失われた水量は、2日間の地球上の飲料水に匹敵すると訴えた。環境破壊の被害総額の計算手法の一元化と「エコサイド(環境+ジェノサイドの造語)」定義の国際法への導入の必要性が強調された。

スウェーデンのマルゴット・ヴァルストローム元外務大臣は、環境被害問題の国際作業部会は、まもなくゼレンシキー宇大統領に報告書を提出すると伝えた。また同氏は、ウクライナは、和平計画において環境問題を優先課題として認めた初の国であると強調した。

「エスカレーションと戦争の再来の予防」作業部会では、イェルマーク宇大統領府長官と英国代表者が活動結果を報告した。イェルマーク氏は、2023年7月にビルニュスで採択された「ウクライナ支援に関するG7首脳共同宣言」の基本となった「キーウ安全保障盟約」案がどのように作成されたかを伝えた。また、同氏は、2日前にキーウにおいてウクライナと英国の首脳が二国間の安全保障分野の協力に関する協定に署名したことを報告し、それがビルニュスでのG7宣言を履行した最初の文書となったと発言した。同氏は、同文書は、G7宣言の署名国である他の30か国にとって良い模範となっていると指摘した。

また同氏は、欧州や北米以外の地域の国々がロシアの対ウクライナ侵略戦争がグローバルな悪影響をもたらし、世界の国々に被害を起こしていることを理解せねばならないと主張した。同氏は、「私は、私たちの『公式』がグローバルなものとなることを望んでいる。私たちは、全世界が私たちの経験を利用し、私たちの教訓に学び、私たちの手段と準備された解決策を利用することを望んでいる。世界のあらゆる場所で別の侵略が生じるのを防ぐためだ」と述べた上で、公正で永続し強靭な平和は、団結によってのみ可能となると補足した。

「戦争終結の確認」作業部会では、ウクライナのシビハ大統領府副長官とマリューシカ司法相が活動結果を報告した。マリューシカ司法相は、ウクライナはロシアとの間で相互関係について合意し、関連の国際合意を結ぼうと何度も努力してきたが、その度にロシアはその履行を止めたり、単に無視したりしてきたと伝えた。そして同氏は、それは共通の国境に関する合意や、友好協力協定、ブダペスト覚書、ミンスク諸合意、さらには1659年のペレヤスラウ合意すらも該当すると指摘した。

その上で同氏は、「私たちは過去の過ちを元に結論を導き出した。戦争終結を確認する合意は、『平和の公式』に基づき、多国間のものでなければならない、というものだ。つまり、署名国はウクライナとロシアだけでなく、保証国も署名し、包括的かつ、戦争が影響をもたらしたあらゆる分野を解決するものとなる。合意の条件は、明確でなければならず、法的義務を有すものでなければならず、合意自体は参加国の議会で批准されねばならない」と強調した。

その他、同日の会合では、マルタでの第3回会合で議論された食料安全保障と戦争の人道問題という2つの問題を扱う特別議論セッションが開催された。食料安全保障セッションでは、これまでのウクライナや各国の食料輸送の努力が説明された。人道問題セッションでは主にロシアによるウクライナ児童の連れ去り問題に注意が向けられた。

なお、ウクライナが提案する和平案「平和の公式」の実現に向けた首脳補佐官級会合は、今回が4回目。これまでには、昨年6月にコペンハーゲンで、8月にジェッダで、10月にマルタで開催されていた。前回のマルタ会合では、「平和の公式」の内、最初の5項目(『核の安全』『食料・エネルギー安全保障』『被拘束者・児童をはじめとする追放された人々の解放』『ウクライナの領土一体性と主権の回復』)を扱う作業部会が活動した。

イェルマーク宇大統領長官は、今回のダボス会合の参加者は、81の国と国際機関の代表者だとしつつ、前回のマルタの会合では参加者は66の国・国際機関だったと喚起した。

また、これに先立ち、日本の上川外相は、7日のキーウでのゼレンシキー宇大統領との会談時に、日本はウクライナ和平案「平和の公式」の10項目の内、第1項目の「放射線・核の安全」の履行作業部会の共同議長国になる用意があると伝えていた。