欧州議会、EUの対露政策に関する報告書を採択

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欧州議会は、9月15日の本会議にて、ロシア連邦に関する欧州連合(EU)の優先課題と政策の主要方針を定める、欧州議会からEU理事会への政治勧告を含む報告書を採択した。

16日、同報告書採択の投票結果が発表された。賛成494、反対103、保留72。ウクルインフォルムの特派員が伝えた。

報告書には、「欧州議会は、ロシアの人々とウラジーミル・プーチン大統領の体制を区別している。同体制は、オリガルヒ(財閥)一味に囲まれた終身の大統領が率いる停滞的権威主義的泥棒政治へと変貌してしまっている」と書かれている。

またロシアが欧州大陸の一部であり、EUの最大の隣人であること、欧州の国々はロシアと共通の歴史、文化・人文の繋がりを持っていることが指摘されていると同時に、ロシア政治首脳部の政策がEUと近隣諸国の利益に直接的にダメージを与えていると記述されている。

加えて、欧州大陸の自由、安定、平和はロシア政権の攻撃的政策の結果として脅威に陥っており、それがEUの戦略・外政議題にとっての最大の挑戦の一つとなっていると指摘されている。

同時に、ロシアには民主的な未来があり得るとし、ロシア国民もまた自由と民主主義という普遍的価値を共有しているとも書かれている。

報告書には、「EUとロシア連邦の関係は、国際法原則と、欧州安全保障協力機構(OSCE)の基本原則、民主主義、紛争の平和的解決、善隣に基づいているが、ロシア政権は、自らの順守義務に反して、これらの原則に対して不敬を示している。(中略)ロシアは2019年に欧州評議会に戻ったものの、引き続き人権を著しく侵害し、欧州人権裁判所の判決の履行を拒否している」と強調されている。

ロシア政権の犯罪的行動の例としては、クリミア併合の試み、ウクライナ、ジョージア、モルドバにおける軍事行動と領土占領、挑発、侵略行為、破壊工作、ロシア領内やEU域内での殺人、攻撃的政策、世界各地での傭兵の利用、ベラルーシでのアレクサンドル・ルカシェンコ氏による犯罪的独裁政権の支持、国際法への尊重欠如、弾圧などが挙げられている。

その他、EUがロシア発天然ガスに依存していることによるEUの団結が弱体化していることが指摘されている。とりわけ、「複数の加盟国によるノルド・ストリーム2建設に関する決定は、エネルギー同盟における連帯と信頼の価値に合致しない。加えて、ノルド・ストリーム2は、2030年までに温室効果ガスの排出を少なくとも55%削減し、2050年までに排出をなくすことを定めた欧州グリーンディールの目的とも合致しない」と書かれている。

欧州各機関への勧告の中にて、欧州議会は、ロシアとの関係構築は、制限、抑止、関与という3つの基本と、2016年にEU首脳が採択した5つの主要原則に基づいて構築されることが不可欠であると強調している。

特に、EU上級代表に対しては、EU加盟国間の連帯強化と、ロシアによる、EU全体の利益と立場を無視した、個別のEU加盟国との間での二国間を基本とした連携構築の試みへの対抗を目的とした外政の適用を要請している。報告書では、これにより、ブリュッセルがEUの首都としてEU露関係に関する決定を採択していくことになると指摘されている。

加えて、EUは北大西洋条約機構(NATO)や国際パートナーとともに、ロシアの抑制に加わり、自らの防衛能力を強化し、EUの東方・南方の隣国の内政へと介入することを警告するためにロシア政権に対する圧力を加え、ロシアに対してEUの東方地域での紛争を停止するよう要求し、地域の国々の被占領地を全て取り戻さねばならないと書かれている。

また、議会は、EU加盟国への脅迫や、東方パートナーシップ(EaP)諸国への軍事行動が継続する場合に備え、EUはロシア政権に攻撃的振る舞いを控えさせることを目的として、現存のテコの行使と支払いシステムからのロシアの排除の準備、ロシアからの石油・天然ガスの輸入の停止の準備をしておかなければならないと強調している。

報告書には、「EUは、東方パートナーシップの国々の国際的に認められた国境内での独立、主権、領土一体性を支持し続け、ロシアによる地域の軍事紛争への直接的・間接的介入、クリミアの違法占領・併合、ドネツィク・ルハンシク両州一部地域の実質的占領、併合下あるいは占領下領土内での人権侵害と国際法違反を非難し続けなければならない。EUは、ロシアがEUやその加盟国、東方パートナーシップの国々に対して攻撃的政策とハイブリッド手段の行使を止め、ジョージア、モルドバ、ウクライナの領土一体性が国際的に認められた国境内で回復されない限り、『通常の関係(business as usual)』に戻ることはないことを明確に述べなければならない。EUは、ロシアが制裁解除のための全ての関連条件を履行しない限り、制裁の維持を確保しなければならない」と書かれている。

さらに、議会は、EUは隣国の欧州願望(編集注:EU加盟願望)を認め、またロシアによる欧州を複数の「影響圏」に分断する政策を否定しなければならないと強調している。また、EUは、隣国、特に東方パートナーシップ地域における安定と発展への戦略的責任を負っており、ロシアに対して、ノルマンディ・プロセスへの建設的関与とミンスク諸合意に従った国際義務の履行を要求しなければならないと指摘した。

その他、9月19日に行われるロシアの国家院選挙にも注意が向けられている。報告書には、2021年のロシアの議会選挙が不正なもの、民主的原則と国際法に反して行われたものと認められる場合に備え、EUは、ロシア議会を認めず、議員総会のある国際機関、特に欧州評議会議員総会(PACE)から、ロシアを除名する呼びかけを行う可能性を検討する準備をしなければいけないと書かれている。

同時に、ロシアの市民社会とのコンタクトを強化し、報道の自由、民主的・人権保護機関の発展を促進するための方策を取り、ロシア国民に対して、自由で豊かで平和で民主的で、将来、EUとの善隣的・互恵的関係を有すロシアへ向けた視点と戦略的前進を提案することが呼びかけられている。

議会はまた、EUは東方パートナーシップ参加国の発展と統合願望に特別な注意を向けなければならないと指摘し、これらの国の成功はロシアの人々にとっての好例となり、民主的な変換のための闘いと自国の発展に向けて彼らを鼓舞することになると述べている。

なお、同報告書にある、EUの対露関係に関する5つの原則とは、2016年にEU加盟国首脳とEU首脳が合意したもの。その中には、ウクライナ東部情勢解決のために2014年と2015年にウクライナ・ロシア・欧州安全保障協力機構(OSCE)が締結したミンスク諸合意の完全履行も含まれている。その他の原則は、東方と中央アジアのパートナー国・隣国との関係強化、エネルギー・サイバー空間分野における脅威へのEUの強靭性向上、中東やテロとの闘いといった選択された外政分野におけるロシアとの目的を持った連携の継続、ロシアの市民社会の支持、とりわけEUロシア間の人的交流の発展、となっている。

※更新(16日17:34):採択報告書の全文はこちらで閲覧可能。