オレフ・イヴァシチェンコ・ウクライナ対外情報庁長官

戦争終結後2~4年で、ロシアは新たな侵略、欧州攻撃への技術面の準備が整う

ウクライナの対外情報庁は、伝統的に政治・経済情報機関と見なされており、その主な任務は、国家首脳陣に対し、他国の外交政策プレイヤーの意図を知らせることである。

現在、この情報機関の優先課題は、ロシアとその同盟国である。

昨年3月、ウクライナ大統領は、国防省情報総局で長きにわたり、著しい戦闘経験を持つベテランの軍事情報将校であるオレフ・イヴァシチェンコ氏を対外情報庁長官に任命した。彼は、部隊2245として知られるエリート将校特殊部隊に所属し、今も機密扱いの特殊作戦に参加してきた。

対外情報庁に任命されるまでの過去9年間、イヴァシチェンコ氏は情報総局の第一副局長を務めた。同時に、ウクライナ軍参謀本部情報担当副長官、その後、ウクライナ軍総司令官補佐官(情報担当)も務めた。

イヴァシンチェンコ氏は、この期間の仕事について「参謀本部では、毎日参謀総長と国防相に情報の報告を行い、国家防衛計画における潜在的脅威の評価の策定に参加していた」と語る。

これは、イヴァシチェンコ氏の全面侵攻開始以来初のインタビューとなる。同氏は、ウクルインフォルムに対し、ロシアのウクライナ関連の戦略的計画、その経済的・軍事的能力、動員資源、そして北朝鮮、ベラルーシ、中国といった同盟国からの戦時支援について語った。

さらに、イヴァシチェンコ氏は、ロシアは北大西洋条約機構(NATO)諸国への攻撃を準備しているかどうか、アフリカにおけるロシアの傭兵派遣会社の活動、ウクライナの新たな情報将校育成システムについての質問にも答えた。

聞き手:セルヒー・チェレヴァティー、アラ・シェルシェン

写真:オレクサンドル・クリメンコ


ロシアは戦力再編のために時間を稼ぎたがっている

最近、公的空間では、和平の希求に関する発言がいよいよ増えています。対外情報庁は、クレムリンの停戦に関する意図に関して、情報を持っていますか?

ロシアのウクライナに関する戦略的計画は変わっておらず、それは私たちの国の領土を完全に支配することです。ただし、願望があるということは、その可能性があることを意味するわけではありません。彼らは技術的にも、経済的にも、外交的にも疲弊しています。ロシアの長期目標はそもそも、旧ソ連構成国に対する支配を確立することです。

戦場における彼らの計画はどうですか?

ウクライナの情報(インテリジェンス)コミュニティ全体が、新しいことは何もないと見解で一致しています。(編集注:彼らの計画は)ルハンシク州、ドネツィク州、ザポリッジャ州、ヘルソン州を完全に支配することです。

しかし、彼らがその計画を完全に実現することは不可能です。国境隣接地域から私たちの戦力を「追い出した」という主張は、事実に反しています。逆に、私たちはロシア領内、特にクルスク州とベルゴロド州で複数の陣地をコントロールしています。

彼らはさらに、ハルキウ州、スーミ州、チェルニヒウ州にいわゆる安全圏(編集注:緩衝地帯)を作りたがっています。しかし、彼らはもう以前のようなリソースを持っていません。以前は深度30キロメートル(編集注:の緩衝地帯の設置)を夢見ていましたが、今は5~10キロメートルです。

つまり、あなたの言葉から、ウクライナ4州(編集注:の制圧)が彼らの最低限のラインで、彼らが和平プロセスに向かいたがるのはその後だ、との結論が出せますか?

彼らの論理は単純です。(編集注:戦力の)再編のために時間を稼ぎたいのです。しかし、それが平和になるという保証は誰も与えません。それは、新しい攻撃を準備する次の段階となるでしょう。彼らは疲れているので交渉しています。彼らには人材、装備品、時間が不足しています。

私たちは逆に、永続的な平和を望んでいます。大統領、ウクライナ政権全体、治安機関は、圧力を強化するために活動しています。追加制裁の導入、石油とガスへの制限です。なぜなら、彼らの戦車1両1両が、彼らがどこかで稼いできたドルでできているからです。私たちにとって、ウクライナは憲法に明記され、国際法で認められた土地の中にあること、今後もそうであり続けることは明らかです。この点に議論の余地はありません。

今年3か月間で、ロシアの軍事費は50億ドルに達する

ロシアの戦争遂行能力について話しましょう。まず、対外情報庁はロシア経済の状況をどのように評価していますか?

2022年の全面侵攻開始前には、ロシアの国民福祉基金は約1500億ドルでしたが、現在、約380億ドルしか残っていません。お金は溶けています。彼らのもう一つの非流動資産は証券です。現在、それらを売却することはできません。

金は2300トンあったのが、すでに1700トンになっています。金は売却されています。中国人民元は1640億元ありました。これらの準備金も徐々に減少しています。全体として、今年に入ってからの3か月間で、ロシアの軍事の超過支出は50億ドルに達しています。彼らの経済にとって、これは非常に深刻なことです。

ロシアはどれくらいの間戦争に資金投入ができますか?

私たちは、今年の終わりまでに、ロシア経済に深刻な問題、資金と労働力の問題が発生すると予想しています。エネルギー、住宅・公共サービス部門で危機が顕著になる可能性があり、また人材不足も深刻になる可能性があります。

全面戦争開始以来、ロシア連邦ではすでに130万人が動員され、さらに約100万人が死傷

それはロシア国民にどのように影響しますか?

すでに影響が出ています。現在、ロシア連邦では、稼ぎたい人は軍に入っています。契約を結べば、地域によっては3~4万ドルを受け取っています。新兵は国家、地方自治体、商業界から給料が支払われます。奨励が行われているのです。

一見すると、このスキームはロシア国民にとって魅力的ですが、ロシアにとっては損失であることが判明しています。私たちのデータによると、クレムリンは支払いを避けようとしており、債務が増加しています。

同様の形で、外国人も軍に入隊しています。彼らには「国籍、お金、その他が得られる」と説明されています…。

地方当局は労働力不足の問題を理解しており、多くの外国人を受け入れることで、「この地域は計画を達成した」というチェックマークを付ける方が良いと考えています。そうすることで、彼らは地元の企業の従業員を維持しています。

情報機関には、ロシアにどれくらいの人口があり、どれくらいの動員資源を持っているかというデータがありますか?

ロシアには約1億4500万人が住んでいます。動員資源は2500万人です。これは、該当する軍事登録資格または関連職種の者です。そして、これらは経済を動かす労働力でもあります。しかし、実際に準備ができている数は300万人です。全面戦争開始以来、すでに130万人が動員され、約100万人が死傷しています。

ロシアの兵器の内、最新システムはわずか20%

武器生産の状況はどうですか?

彼らは最大限に生産しようとしていますが、困難に直面しています。投資、機械、部品が必要ですが、そこに問題が生じているのです。電子部品や特殊化学品に困難があります。

現在、軍事装備品の80%は古いもので、低性能のものです。それらは保管庫から引き出され、修理された上で前線に送られています。ロシアの兵器の内、最新システムはわずか20%です。

弾薬を見ると、122ミリおよび152ミリ口径の砲弾は、年間約300万弾生産しています。さらに250万〜300万発を北朝鮮から得ています。戦争開始以来、彼らはすでに北朝鮮から600万発の砲弾を受け取っています。また、北朝鮮からは170ミリの自走砲「M1989コクサン」と240ミリ多連装ロケット砲「M1991」がそれぞれ120基ずつ供給されています。

昨年、北朝鮮は1万3800人の労働者をロシアに派遣

ロシアは北朝鮮にどのように支払いをしているのですか?

ロシアは、ミサイル技術と宇宙技術を北朝鮮に移転しています。私たちは、それが核兵器またはその改良に関連する技術である可能性を排除していません。

私たちは、北朝鮮が軍事産業企業、特に航空機製造業に、関連の教育を受けた専門家をロシアに供給し始めていることを把握しています。

北朝鮮からは、農業、住宅建設、道路建設のための労働力も供給されています。昨年、北朝鮮は1万3800人の労働者をロシアに派遣しました。

北朝鮮人は、すでにウクライナ領内で直接戦闘行為に参加していますか?

彼らはクルスク州にはいます。ウクライナの占領地では確認していませんが、彼らの火砲はすでにヘルソン方面など他の方面に現れています。

4月、ウクライナ大統領は、155人の中国国民が対ウクライナ戦争に参加しているという情報を発表し、その数はもっと多い可能性があるとも指摘しました。そのうち2人は拘束されており、ウクライナとの戦争に自主的に参加することを決めたと主張しました。中国は、自国民の戦争参加を本当に許可しなかったのでしょうか? 情報機関は、中国人が北朝鮮人と同じように、ロシア人から現代戦の経験を学んでいるというデータを持っていますか?

各国の情報機関が特定の任務を遂行していますし、私たちは彼らもまた現代戦の経験を学んでいるその代表者である可能性を排除できません。

私たちは、ロシア人が中国人と経験を共有していることを把握しています。軍事協力や、参謀本部レベル、計画策定のレベルで共同軍事演習が行われています。現在、中国人も、ベラルーシとロシアの訓練場で実施されるロシア・ベラルーシ共同演習に招待されています。これらの国際軍事協力活動の過程でも、経験の交換が行われています。

ロシアには、中央アジア諸国出身者などの外国籍者と同様に、多くの中国国籍者がいます。ロシアに一時的に滞在している外国人は合計で約600万人です。彼らは仕事を探しに来た人々や、アジアやアフリカ諸国からの学生です。そして、ロシアにいる1人1人の外国人と同様に、軽微な行政違反や金銭的報酬によって、ロシア軍に加わった可能性も排除しません。

2025年初頭時点でロシアの無人機用の重要電子部品の80%が中国製

4月中旬、ウクライナ大統領は、中国がロシアに榴弾砲と火薬を供給しているという情報があることを発表しました。また、中国の代表者がロシア領内で「一部の兵器の製造に従事している」と述べました。それがどのような生産なのか、わかっていますか?

はい、中国が工作機械、特殊化学品、火薬、部品を軍事目的の企業に供給しているという情報があります。私たちは20のロシアの工場に関する確認済みのデータを有しています。2024年から2025年にかけて、中国との航空協力の事実が少なくとも5件確認されています。これは機器、予備部品、文書です。6件の特殊化学品の大規模な供給もありました。

2025年初頭時点でロシアの無人機用重要電子部品の80%が中国製です。同時に、細部変更や名前の偽装が行われており、またブローカー企業が存在し、その企業を通じて中国からロシアへ電子部品製造のために必要な物全てが届けられています。

ベラルーシ軍に大規模戦闘はできない

この秋にベラルーシで予定されているロシア参加の軍事演習が、北方からの新たな攻撃に発展すると考える根拠はありますか?

私たちは、これらの演習に関する必要な全ての情報を持っています。ロシアはすでに約40か国の軍代表者に招待状を出しています。彼らはこれを国際的な行事にしたいと考えています。

演習の構想上では、2つの国家連合の対立という作戦シナリオが展開されます。一方はロシアが主導するもの、もう一方は仮定の「西側」です。それが誰を指すかは明白で、現在ウクライナを支援している国々のこと、私たちの欧州のパートナー国のことです。

ロシアがこれらの軍事演習を隠れ蓑にして、スヴァウキ回廊、バルト諸国、またはポーランドを攻撃する可能性があるという意見が多くあります。これはどれほど現実的な見方ですか?

2015年のことを覚えています。当時、私は情報総局の第一副局長、参謀本部の副長官に任命されました。それ以来、ロシアとベラルーシの文字通りあらゆる演習で、スヴァウキ回廊の支配確立がテーマでした。これは幻想ではなく、彼らの戦略的シナリオの一部です。

彼らは常に、カリーニングラードが脅威にさらされている、NATOが地域を支配する可能性がある、あるいはベラルーシで何らかの「カラー革命」が起こる可能性があるという選択肢を考慮しています。そしてその時に、ロシアが「助けに来る」、すなわち部隊を投入するのです。そういうシナリオです。このために彼らは第1戦車軍と第20諸兵科連合軍を準備していました。これらの部隊は、計画によると、スヴァウキ回廊を通ってカリーニングラードへ向かいます。当然、この状況はバルト諸国にとっては、直接の脅威となります。

ベラルーシの軍事産業企業の約80%がロシアの軍事産業に統合されている

ベラルーシの状況はどうですか? 同国方面からの脅威は予想できますか?

現在、ベラルーシ軍に大規模戦闘を行う能力はありません。彼らが国境付近に留めているのは、約2000人の兵士だけで、私たちの注意を逸らすためだけのためです。

つまり、戦闘要員は少なく、戦前は進攻作戦を遂行する能力もなく、同国の兵士たちは士気の面でそれを実行する準備がありません。

ベラルーシの指揮官の中には、ロシアで教育を受けた者も多いです。2022年には、彼らはルカシェンコに対して戦争に参加するよう圧力をかけました。しかし、ベラルーシ人自身、軍人も一般人も、それを望んでいません。また、現在、ベラルーシ経済がロシア連邦に完全に依存していることも考慮に入れる必要があります。

2022年、ロシアは「3日で」戦争を終わらせる計画を立てていましたが、武器供給に問題が生じた際、ベラルーシは自国の倉庫から可能な限りのもの全てをロシアに提供しました。弾薬、戦車「T72」、歩兵戦闘車「BMP2」、照準器、防弾直帰、ヘルメット、工作機械などである。現在、彼らはロシアに不足している弾薬の生産も確立しました。ロケット弾、砲弾など、戦争に必要な物全てです。ベラルーシの軍事産業はロシアの軍事産業の付属物となったのです。ベラルーシの軍事産業の企業の約80%がロシアの軍事産業に統合されています。それは実質的にその1つの基盤なのです。

ベラルーシには核兵器はない

ベラルーシはロシアから核兵器を受け取りましたか?

キャリアはあります。それは事実です。航空機も、作戦戦術ミサイルシステム「イスカンデル」もあります。しかし、ベラルーシに核兵器そのものはありません。事実です。

つまり、キャリアはあっても、弾頭はないということですか?

その通りです。ありません。彼らは保管場所を整備し、準備し、建設しています。ルカシェンコは、年末までに「オレシニク」を入手すると話していますが、これは希望的観測のようなものです。現時点でそのようなものはなく、今後も現れる可能性は小さいでしょう。

前回のベラルーシ大統領選挙の際、抗議運動が起こりました。現在の社会情勢はどうですか?

ルカシェンコは、特殊機関の活動、人々への脅しによってのみで状況を維持し、コントロールしています。野党は弾圧されているか、国外にいます。これは、残念ながら変化のないベラルーシの現実です。

リスクのあるのはポーランド、バルト諸国、北欧

対外情報庁と主要な情報機関との協力関係はどのように発展していますか? 米国の政権が交代してから、同国の情報機関や政権そのものとの接触はありましたか?

私たちには、米国を含む主要国情報機関の多くのトップと良好な協力関係があります。互いの国の利益のために、共同の課題について話し合い、解決しています。

彼らからは支援があります。それは情報提供であり、武装や軍の供給に関連する様々な問題での支援です。

対外情報庁は外国の情報機関と共同特殊作戦を実施していますか?

その質問には誰も答えないでしょう。しかし、チェックを付けないといけないアンケートがあるなら、私はそれにチェックを付けたと思ってください(微笑む)。

2022年2月以降、NATO諸国の防衛・安全保障戦力と情報コミュニティはどのように変化しましたか? 彼らはロシアのような敵との実際の戦争に向けた準備できていますか?

状況は根本的に変わりました。NATOの政治家も軍人も、リスクについてこれまでとは異なる形で評価しています。各国の戦略計画は変化し、国防予算は増加しています。(編集注:防衛支出が)GDPの0.3~0.5%だった国々が、すでにほぼ2%です。中には5%に達する国もあります。

私たちはパートナー国の特殊機関の代表者と会う際、彼らは、私たちが戦争にどのように備え、戦争がどのように戦始まり、情報機関の最初の行動はどのようなものだったか、私たちの指揮統制システムはどのように機能し、どのように能力を向上させたかという話を求めます。

そして、彼らが学び、見方を再検討し、情報機関の構造を変化させているのを、私は見ています。

私たちの専門家はロシアが他国を攻撃することを決めるかどうかはもう尋ねない。質問は「いつ、どこから?」に変わった

3月、ドイツ連邦情報局(BND)長官のブルーノ・カール氏は、ロシアの欧州への攻撃は、ウクライナでの戦争がいかに早く終結するかに直接左右されると述べました。もし戦争が早く終結すれば、ロシアの欧州に対する侵略も予想より早く始まる可能性があると。このような予測についてあなたはどうコメントしますか?

私は、経験豊富なBND長官であるブルーノ・カール氏を個人的に非常に尊敬していますし、全体としてドイツの同僚を尊敬しています。私たちは彼らの評価に注意を払いながら、自分たちの評価と比較しています。

カール氏は、「ウクライナは単に自国のために戦っている国ではない」と正直に言いました。私たちは、欧州の盾なのです。そして、私たちがこの侵略を食い止めている間、他の国々は準備する時間を得ているわけです。

ロシアの計画は変わっていません。彼らはウクライナの完全支配と、旧ソ連諸国へ影響力を望んでいます。しかし、そこから先は、「可能性」の話ではなく、誰が次になるかという時間の問題です。ポーランド、バルト諸国、北欧がリスク圏です。私たちの分析官は、ロシアが他国攻撃に踏み切るかどうかはもう尋ねません。質問は「いつ、どこから?」に変わっています。

欧州の同僚にも共有している私たちの予測では、(編集注:ウクライナでの)戦闘終結後、ロシアが戦闘能力を回復するには2~4年かかります。もし制裁が解除されれば、軍備再編プロセスははるかに速く進むでしょう。

つまり、戦争終結後2~4年で、ロシアは新たな侵略、つまり欧州に対する攻撃の技術的準備が整うということです。

なお、私たち皆が、今彼らのハイブリッドゲームを目にしています。同盟国を分断し、ウクライナへの支援を減らし、ハンガリーを通じて決定に影響を与えることです。これは戦争の政治的部分です。私たちはこれを理解しています。

ロシアのペトロザヴォツク市で軍事技師が軍事基地を拡張しており、クレムリンが新たな軍本部を設置する計画であるという情報については、どうコメントできますか? また、ロシアはフィンランド、ノルウェーとの国境沿いやサンクトペテルブルクの南、エストニアとの国境まで新しい鉄道を敷設しており、一部の軍事アナリストは、これはあり得るNATO諸国への攻撃の計画を実行するための物流の発展を示している可能性があると考えていますが…

ロシアは、準備しています。彼らは、新しいレニングラード軍管区を創設しています。これは、防衛のためではなく、攻撃のためです。そこには作戦方向、すなわちコラ半島、フィンランドがあります。この方面では、新しい軍事基地の建設が見られます。鉄道に関しては、それは平和目的にも戦争目的にも使用できるインフラの拡張です。

もしロシアが戦争の凍結や和平交渉に応じれば、その場合、彼らは百万人の軍隊をどこに配置するのでしょうか? 軍事専門家は、多数の退役軍人が戦争から帰還することで、国内の不安定化によりクレムリンへの脅威が生じると述べています。

ロシアは、この戦争を止めるつもりはありません。彼らは、自分たちの頭の中で、軍隊の手によってソビエト連邦を復活させようとしています。新しい軍管区と師団を創設しています。正確には13個師団です。確かに、彼らには人材不足や機材不足という問題があります。しかし、毎日1000〜1200人の新たな契約兵がいます。これは平和のための動員ではなく、より大きな何かの準備なのです。

それはなぜか? 経済です。現在、彼らの軍事産業複合体は、唯一成長を示している分野です。もしそれが止まれば、ロシア経済全体に亀裂が入るでしょう。それは恐怖と周囲の敵に基づいたイデオロギーです。クレムリンにとって戦争は、権力を維持するための手段です。そして、これはウクライナと文明世界全体にとっての脅威なのです。

ロシアの権力舞台裏では何が起こっていますか? ロシアのいわゆる政治局の中で、プーチンに最も大きな影響力を持っているのは誰ですか? 彼は誰の言うことなら聞くのですか?

現在、すべてのアイデアは指導者によって生み出されており、周囲の残りの人々は遂行者です。私たちは、プーチンが恐れて話さない事柄があるのを見ています。私たちは、彼に経済や戦争の本当の状況に関する情報が伝えられていないという結論に至りました。報告は軽微な形で、将来のあり得る悪影響に焦点を当てずに伝えられています。そのため、世界が驚くような決定が下されることがあるわけです。

「後継者作戦」は準備されていますか? プーチンを潜在的に引き継ぐ可能性があるのは誰ですか?

そのテーマは、最高指導者の側近の間では禁じられているものです。彼らの地位、家族、親しい関係者についての恐怖があります。もしかしたら、最高指導者には何らかの考えがあるかもしれませんが、それは声に出されておらず、このテーマは取り上げられていません。

ロシアで抗議運動が発生する可能性をどう評価していますか?

全体的な抗議の潜在力はありますが、それは小さいです。18~20%程度の水準です。私たちは国内不安定化の前提条件は目にしていません。

コーカサス地方には不満を持つ人々がいますが、その不満は地方当局に向けられています。最高指導者を批判するようなことはありません。

ロシア全土は体制化されており、連邦保安庁(FSB)、国家親衛隊の職員が多数おり、それぞれ任務を遂行しています。

キリル・ドミトリエフは海外におけるロシア資産の凍結解除を働きかけている

春に、米国とロシアの間で最初の交渉が行われました。ロシアにとって、そこでの最大の目標は何ですか?

これらの交渉では、彼らは遠回りなやり方で、相手側に自国の歴史(観)を押し付けています。200〜300年前の出来事を語り、そこはロシアの歴史的な土地だとし、全てが彼らのものであり、その点に問題があるのだと導きます。

例えば、ロシアの外国との経済協力担当特別代表であるキリル・ドミトリエフ氏を例にとると、彼はグローバルな商業の問題の働きかけを行っている人物です。ドミトリエフ氏の主な任務は、ロシアの凍結された資産を危機から救い出すことです。それは2800億ドルという、彼らにとって莫大な金額です。

ドミトリエフ氏は米国に対し、戦争と平和の問題に集中するのではなく、もっと「広い視野」で物事を見ようと持ちかけています。「私たちには北極があり、石油、ガスがあり、資源豊富なシベリアがある。レアメタルが必要か? では、それも見てみよう!」と。そしてそこで、ウクライナの問題が希薄化され、二の次にされてしまうのです。そのため、私たちの課題は、ウクライナ問題が議題の中心にあり続けるようにすることです。

最近、ウクルインフォルムのインタビューで、ブダーノウ情報総局局長が、ロシア連邦はシリアでの失敗にもかかわらず、アフリカ諸国でのプレゼンスを拡大していると述べました。そこでの彼らの戦略的目標は何ですか? 軍事的なものか、経済的なものか。アフリカは現在、ロシア連邦にとって資源と言えますか?

ロシアにとってアフリカは資源であり、地政学的な影響力です。

プリゴジン時代にも、ロシアの「民間軍事会社」(編集注:傭兵派遣会社のこと)はアフリカに進出し、レアアース、タンタル鉱石、金、その他の金属を採掘していました。

中央アフリカ共和国、マリ、ブルキナファソのような国々では、金属の鉱床に加えての、主な彼らの任務は、都合の良い勢力を権力にとどめることです。それらの国は、彼らが影響力を構築している国々です。

現在、彼らはアフリカ軍団を保有しており、その人員数は1万2000人です。ロシアは、これを倍の2万4000人に増やす計画です。そうなると、それは小規模な軍隊です。

リビアにも興味深い話があります。そこにある時ベラルーシの軍隊が現れました。私たちは、彼らがトブルクとエル・バイダの空軍基地を警備していることを知っています。彼らは100人未満ですが、それでもただごとではありません。すでにベラルーシの装備、特に電子戦システムが供給され始めています。

国家安全保障・国防会議(NSDC)の偽情報対策センターの報告によると、過去3年間で、ロシア正教会はアフリカ30か国に教区を開設したそうです。この活動の活性化は何と関係するものですか?

現在、私たちは別のことについてより懸念しています。戦争によって国外に出た650万人のウクライナ国民の一部が、ロシア教会の影響下にあることです。ロシアの聖職者たちは、もはや単なる聖職者ではありません。彼らはエージェントです。彼らは任務のために欧州に出てきています。(ロシアの)対外情報庁やFSBの隠れ蓑を被って。

北欧のある国に具体的な事例があります。地元の信者のために国が教会に一定の資金を割り当てているという状況があります。そして、そこの聖職者がそのお金をウクライナの被占領地に送金しています。私たちの敵を支援しているわけです。

あなた方の行動は?

パートナーと協力しています。しかし、この問題は難しいです。法律が非常に機微な分野だからです。教会では、聖職者は直接スパイ活動に行けとは言われておらず、連想させられるのです。そうすることで、人は影響下に入るのです。それは情報兵器です。特殊機関がそこで活動している。そのことを私たちは理解しています。ちなみに、その国(編集注:前述の北欧の国)の情報機関のトップがウクライナへ来た際、私たちはこの事例について詳しく解説しました。

つまり、国外にいる私たちの国民が教会で勧誘される可能性があるということですか?

正にその通りです。人々はポーランド、ドイツ、イタリア、モンテネグロなど、それぞれ色々な国へ出国しました。そして、そこにはロシア人もいます。ウクライナ国内では、ロシアの特殊機関による教会での影響から市民を保護するのはウクライナ保安庁(SBU)ですが、国外に出た人々は保護されません。彼らは出国先の国の法律の下にいます。そして、それが問題となるのです。なぜなら、彼らは勧誘され、影響を受け、利用されるおそれがあるからです。注意の要ることです。

全面侵攻開始後、情報総局には多数の戦闘部隊が創設されました。対外情報庁にも、割り当てられた任務を遂行するためのそのような追加特殊部隊はありますか?

私が長官を務めてからの1年間で、諜報活動から技術情報まで、庁の多くの構造部隊の業務を修正しました。私たちのところでは分析部門に大きな変化がありました。そして、あなたの質問に答えると、私たちもいくつかの部隊を創設しました。現在、それら部隊は戦闘地域にいます。

彼らは、戦闘部隊と技術情報部隊です。どのようにその状況が生じたかと言うと、私が昨年任命されたとき、ある方面で敵の攻撃の脅威が生じました。そして、私たちは最初の4つの統合技術情報班と2つの戦闘部隊を前線に送りました。そうして私たちの戦闘の歴史が始まったのです。

戦時下では、対外情報庁と情報総局の任務は似ていると理解しても良いでしょうか?

その点は全て論理的に整理されています。優先事項は1つで、ロシアとその支援者(編集注:への対応)です。私たちには2つの主要な方向があります。1つ目は、ロシアの内・外政、その計画と意図、ロシアの経済的強靭性、財政状況、軍事産業複合体、そして敵の戦争遂行能力に関するインテリジェンスをウクライナ大統領にを提供することです。

2つ目の方向性は、私たちの防衛戦力を支援するための情報収集と分析です。敵がどれだけの戦車、火砲システム、弾薬を製造し、軍に供給しているか、外国への技術、部品の依存度はどの程度か、重要な原材料の供給スキーム、そして敵を妨害するために何ができるかを明確に答える必要があります。その点では、私たちの任務は確かに情報総局のものと似ています。

私たちの任務は、より対外政策と経済分野に重点があり、軍事情報機関(編集注:情報総局)は軍事分野に重点があります。しかし、現在全てが絡み合っており、より能力のある者が任務を遂行するような状況です。

対外情報庁の人材育成について話しましょう。2021年、閣僚会議(内閣)はウクライナ対外情報庁アカデミーの清算を承認しました。現在、教育機関は機能していますか? 対外情報庁の人材育成はどのように行われていますか?

時々、「なぜ対外情報庁アカデミーを清算したのか、いつ再開するのか」と聞かれます。私は再開はないと答えたいです。私たちは「専門的開発センター」という独立した部署を設立しました。それは直接私に直属しており、そこでいくつかの変更を行っています。

人々は、学士、そしてできれば修士の資格を持った状態で入ってきます。さらに、海外での学業経験があれば、素晴らしいです。私たちは、職員が世界の一流大学で知識を得ることを望んでおり、それを奨励しています。

加えて、セキュリティ面も重要です。(編集注:清算された)アカデミーは工作員に対して脆弱でした。しかし、今は私たちが人材を選び、その後は指導者、研修、指導官、特殊心理学、情報活動、軍事訓練と続きます。旧来システムのアップグレードのようなものとなっています。そして、この訓練はすでに成果を出しています。

人々はどこで見つけてくるのですか? 例えば、情報総局には採用センターを通じて入ることができます。対外情報庁にはどうすれば入ることができますか?

難しい質問です。私たちは、事前選考システムを構築しています。人はいくつかの段階を経ます。顔合わせ、課題、観察です。考え方や行動の仕方を見ます。これはどの特殊機関でも行われる古典的な方法です。現在、私たちはチームを刷新しています。若く、活動的で賢く、複数の言語を話せる人々が入ってきています。新世代の情報員です。