ウクライナ汚職捜査機関、エネルギー分野汚職事件で5人を拘束、7人に容疑通知
ウクライナの政権高官の汚職犯罪捜査に特化した機関「国家汚職対策局」(NABU)は11日、エネルギー分野における汚職事件の捜査の一環として、5人を拘束し、7人に容疑を通知した。
NABU広報室が伝えた。
NABUは、NABUと特別汚職対策検察(SAP)が、現職および元エネルギー部門の高官、メディアにて知られる実業家、その他複数の人物が加わる犯罪組織の活動を摘発したと改めて表明した。この組織の参加者たちは、国営部門の戦略的企業、具体的には国営原子力発電公社「エネルホアトム」の活動に影響力を行使する大規模な汚職スキームを構築し、不当な利益の獲得と資金洗浄を行っていたという。
発表時点では、法規定に基づき、NABU捜査官が5人を拘束し、以下の7人に容疑を通知したという。
・実業家(犯罪組織のトップ)
・元エネルギー相顧問
・エネルホアトムの物理的防護・安全担当執行役員
・他4人の人物(資金洗浄を担うバックオフィスの「従業員」)
NABUはさらに、この犯罪組織の主な活動は、エネルホアトムの契約相手方から契約金額の10〜15%を不当な利益を体系的に得ることであったと説明している。
具体的には、エネルホアトム社の契約相手に対して、提供されたサービスや納入された製品に対する支払いの阻止を回避するため、あるいは供給業者の地位を剥奪されないために、キックバックを支払うという条件を強要していたという。この慣行は「遮断機」と呼ばれていた。
このスキームの実行にあたり、犯罪組織のトップは、後にエネルギー相の顧問となった元国家資産基金副代表と、同社の物理的保護・安全担当執行役員の職に就いていた元法執行機関職員を引き込んだという。
この人物たちは、省と国営企業における職務上のつながりを利用し、人事決定、調達プロセス、資金の流れのコントロールを行っていたという。
NABUは、「事実上、年間収益が2000億フリヴニャを超える戦略的企業の運営が、公式な役人ではなく、いかなる正式な権限も持たない、『監視』の役割を担った部外者によって行われていた」と説明している。
違法に取得した資金の合法化(洗浄)の機能を担っていたのは、キーウ中心部にある犯罪組織の別のオフィスだったという。
そのオフィスは、NABUとSAPが別の刑事訴訟で起訴している元ウクライナ最高会議議員(国会議員)で、現在はロシア連邦上院議員となっている、アンドリー・デルカチ氏の家族が所有していたものだという。
このオフィスを通じて、手に入れた資金の厳格な会計管理、「裏帳簿」の作成、非居住者企業のネットワークを通じた資金洗浄が行われていたという。特に現金の支給などといった、取引の大部分はウクライナ国外で行われていたという。
犯罪組織の非構成員にサービスを提供する場合には、このオフィスは処理された総額からの何パーセンテージ、という形で報酬を受け取っていたという。
彼らの活動が記録された期間の間、この通称「洗濯機」を経由して「洗浄」された資金は総額約1億米ドルに上ったという。
この犯罪組織の活動を記録することを目的としたこの特別作戦は、2024年夏から15か月以上にわたって行われたという。NABUは、この間に大量のデータを集め、数千時間に及ぶ音声録音を取得したと伝えた。
そして、最終段階ではNABUのほぼ全捜査官が作戦に動員されたと書かれている。
裁判所の決定に基づき、キーウおよびその他の地域で70件以上の捜索が行われ、大量の文書と現金が押収されたとある。
NABUの捜査官とSAPの検察官は、引き続き犯罪組織の他の参加者の特定作業をしているとし、「捜査は続いている」と伝えている。
これに先立ち、10日、ウクライナの政権高官の汚職犯罪に特化した捜査機関「国家汚職対策局」(NABU)の捜査官が、ビジネスマンでゼレンシキー宇大統領がかつて所属していた「第95街区」のスタジオ共同所有者であるティムール・ミンジチ氏と、以前エネルギー相を務めていたヘルマン・ハルシチェンコ司法相の家宅捜索を実施していた。
また、ウクライナ閣僚会議(内閣)は12日、汚職犯罪事件の捜査で家宅捜索を受けたヘルマン・ハルシチェンコ司法相の職務を停止している。