ウクライナ当局、フリステンコ議員に国家反逆罪と汚職捜査機関への影響力行使の容疑を通知

ウクライナ保安庁(SBU)は、現在禁止されている政党「野党生活党」所属の現職最高会議(国会)議員であるフェージル・フリステンコ氏に、国家反逆罪の容疑を通知したと発表した。SBUは、フリステンコ氏はロシア連邦保安庁(FSB)のトップエージェントだと主張している。

SBU広報室が公表した

事件捜査資料によれば、同議員はウクライナの政権高官の汚職犯罪捜査を行う「国家汚職対策局(NABU)」に対するロシアの影響力強化を担当していたという。

フリステンコ氏には、ウクライナ刑法第28条第2項、第111条第1項、第2項(戒厳令下における共謀した集団による国家反逆罪)、および第369ー2条第2項(影響力の濫用)にもとづき、遠隔で容疑が通知されたという。

発表には、ロシアの全面侵攻開始後、フリステンコ氏はウクライナ国外へ逃亡したものの、引き続きNABUに影響を与え続けていると書かれている。

捜査によれば、フリステンコ氏はヤヌコーヴィチ大統領時代に既にロシアのFSBに雇われていたという。そして同氏は、FSBの秘密の代表者で、ロシア特殊機関の武装集団「DPR」に対する監督役である、ユーリー・イヴァニュシチェンコ(ユーラ・エナキエフスキーとして知られる)と密接な関係にあることが判明したという。さらに、フリステンコ氏は2025年初頭にモスクワのエリート集合住宅で爆死した協力者アルメン・サルキシャン(アルメン・ゴルリフスキーとして知られる)の連絡役も務めていたという。

SBUは、フリステンコ氏は尊厳革命(マイダン革命)中にロシアの特別機関の課題を積極的に実行していたとし、具体的に反マイダン運動「アンチマイダン」を組織するために、同氏が自身の支配下にある民間運送業者を利用して「ティトゥーシュキ」と呼ばれる暴力要員を移送していたと伝えた。

そしてSBUは、現在フリステンコ氏がNABUの一部の幹部と密接な関係にあると伝えた。その中には、今日SBUによって、ロシアとのビジネス取引とロシア人との接触の容疑で拘束された、NABUの地域間局局長の一人、ルスラン・マハメドラスロウも含まれるという。

SBUは、フリステンコ氏はマハメドラスロウ氏をドネツィク大学での学生時代から知っていたと伝えている。

もう1人は、フリステンコ氏と密接な連絡を取り合っていたNABUの捜査官部隊の責任者であるオレクサンドル・スコマロウ氏だという。2022年の全面侵攻中、スコマロウ氏の配偶者はフリステンコ氏の配偶者が所有する車で国外に出国したことが記録されているという。

スコマロウ氏は、ウクライナの別の法執行機関「経済安全保障局」の局長職の公募に参加していたとある。SBUは、捜査により、もしその公募で勝利していたら、ウクライナのオリガルヒであるイーホル・コロモイシキー氏が、経済安全保障局の新局長となったスコマロウ氏から、自身に対する刑事訴訟を終結を促すことを期待していたことが判明したと伝えている。その情報は、コロモイシキー氏と同氏の部下の1人との間の通信記録によって裏付けられているという。

さらにSBUは、フリステンコ氏が助けようとしていたのは、コロモイシキー氏だけではないとし、NABUの捜査官が、もう1人のウクライナのオリガルヒであり、イーホル・コロモイシキー氏のビジネスパートナーであるヘンナジー・ボホリュボウ氏の逃亡を支援したことが文書で確認されていると指摘している。

具体的には、スコマロウ氏の部下であるNABUの職員2名が、この逃亡中のオリガルヒがウクライナの国境を越える際に同行したのだという。彼らは、「念のために」電車の隣のコンパートメントにいたという。捜査によると、この「特別作戦」もフリステンコが組織したものだという。

フリステンコ議員の連絡先の家宅捜索中に、NABUの刑事訴訟資料、とりわけ捜査対象者の秘密監視に関する文書や、NABU捜査官候補者の履歴書が発見されたという。SBUは、それはロシアの影響力と汚職対策機関からの組織的な情報漏洩を示していると主張している。

これに先立ち、SBU関係者が21日、SBUと検事総局は、NABUへの「ロシアの影響力を排除」する特殊作戦を実施していると伝えていた。

NABUもまた、「7月21日、裁判所の承認なく、NABU職員のところで、SBUと検事総局の職員による捜査行為が行われている。現在、全ての状況を解明しているところである」と発表していた