戦争研究所、ロシア軍によるウクライナ東部ハルキウへの攻勢可能性を分析

米国の戦争研究所(ISW)は28日、ロシア軍によるウクライナ東部主要都市ハルキウへの攻勢作戦の脅威により、ウクライナ側は同市防衛のために追加戦力を割かなければならなくなっているが、他方で、ロシア軍にはハルキウを制圧するのに必要な戦力はないと指摘した。

ISWの28日報告に書かれている

ISWは、シルシキー・ウクライナ軍司令官が、ハルキウ方面でのロシア軍の戦力増強と再編が行われているとの発言を引用した上で、それはベルゴロド州でのことを指していると思われると指摘した。シルシキー氏は、ウクライナ軍は追加的に榴弾砲と戦車の部隊により「最も脅威のある方面」の防衛陣地を強化していると述べたという。

同時にISWは、「シルシキー氏の発言は、ウクライナの当局者が最近警告している、ハルキウに対するロシアのあり得る攻勢作戦が差し迫ったものであることは示していない」とも指摘している。

報告では、軍事専門家のコスチャンティン・マショヴェツ氏が以前、ロシア軍が最近、第11軍団と第6諸兵科連合軍の部隊をクプヤンシク方面から新たに編成された北部軍集団に再編していると報告したと書かれている。第6諸兵科連合軍の部隊は、クプヤンシクから北東、とりわけシンキウカ近く、での攻勢作戦を担当していたという。

シルシキー氏はまた、最近シンキウカ周辺のウクライナ側の陣地を改善したと報告したという。また、ロシアの軍事ブロガーの1人は、ロシア軍が兵力不足によりシンキウカから少し後退したとも発言しているとし、ISWは、それは少なくとも第6諸兵科連合軍の部隊の一部がこの地区から撤退した可能性を示唆していると指摘している。

さらにISWは、ロシア軍が数か月間に及ぶ攻勢でシンキウカを制圧できなかったことにより、担当部隊の戦闘能力への疑問、また北部軍集団全体の戦闘能力への疑問を投げかけている。

報告には、「ISWの評価では、ロシア軍の将来のハルキウ市を制圧する潜在的攻勢は、極めて野心的な作戦であり、ロシア軍にとって甚大な挑戦となるだろうと評価し続けているが、それはとりわけ、ロシア軍が米国の今後の軍事支援の到着によるウクライナ軍のより良い装備と直面することになるためである」と書かれている。

ISWは、ロシア軍がハルキウへの攻勢の脅威をもって、ロシアの夏の攻勢開始の前に、ウクライナ戦力をウクライナ東部のより広範な前線に引き延ばすつもりかもしれないと指摘している。

他の方面について、ISWは、ロシアがアウジーウカ北西で一定の成功を収めたことで、ウクライナ戦力が前線沿いのいくつかの陣地から撤退することになったが、それはロシアの迅速な戦術的戦果は促進していないと指摘している。「ロシア軍が作戦上重要なより深い突破をこの地域で達成する可能性は当面低いままである」と書かれている。

これに先立ち、シルシキー宇軍総司令官は28日、前線の状況が激化しており、今週は前線全ての地点で厳しい戦いが続いたと伝えていた