ロシア軍がドネツィク州の残りの地域を制圧するには少なくともあと2〜3年かかる=戦争研究所

米国のシンクタンク「戦争研究所」(ISW)は、ロシアは対ウクライナ消耗戦において、ロシアの軍と経済が最終的に勝利するかのように見せかけるために、認知戦を大幅に強化していると指摘している。

戦争研究所の9日付報告書に書かれている

ISWは、プーチン氏を含むクレムリンの高官が、戦場での成功の誇張やロシア経済があたかも強靭であるかのような話を激しく宣伝していると指摘している。その際ISWは、「この多面的な認知戦は、ウクライナと西側諸国が、将来のロシア軍の軍事作戦の強化や長期化を恐れるあまり、交渉においてロシアの要求に譲歩するよう仕向けることを目的としている」と評価している。

またISWは、前線の一部での状況が深刻である中でのプーチン氏によるロシア勝利主張の大半は、「戦場の現実に合致しておらず、ウクライナの戦線が近々崩壊することを示唆するものではない」と強調している。

さらに報告書には、プーチン氏によるロシア経済の強固さに関する発言についても、西側の制裁、財政制限、戦争費用の増大を受けて、ロシア経済が負担の増大に直面していることをクレムリンの最近の経済政策が示しているという事実が無視されていると指摘されている。

そしてISWは、「クレムリンの認知戦は、ロシア軍が現在戦場で達成できないプーチン氏の初期の軍事目標のいくつかを、交渉による解決を通じて達成することを目的としている」と分析している。

報告書にはさらに、プーチン氏が12月9日、ウクライナに対し、ロシア軍が占領していない地域も含める形で、ウクライナ東部のルハンシク州とドネツィク州を放棄するよう再び要求したことが喚起されている。

ISWはその際、ドネツィク州の残りの地域、特にウクライナが構築した「要塞地帯」を軍事的に制圧することを目的としたロシアの作戦は、少なくとも2〜3年続き、それはロシアにとって著しい挑戦となり、ロシアが耐えられないほど困難で高コストな戦闘を引き起こす可能性があると評価し続けていると伝えた。

ISWはさらに、「ロシアの認知戦は、ウクライナと西側諸国に、このよく守られた領土を、戦わしてロシアに明け渡させ、ロシアが戦場で制圧を試みる際の時間とリソースの大幅な消費を回避させることを目的としている」と強調している。

加えてISWは、とりわけプーチン氏やクレムリン当局者たちが、長期的な戦略的目標として、ウクライナ南部や東部だけでなく、ウクライナ全土を支配するという主張を維持していることを考慮すると、ドネツィク州をロシアに明け渡すことは、ロシアがウクライナに対する侵略をより有利な立場かつタイミングで再開するための条件を生み出すことになると指摘している。

これに先立ち、ウクライナのゼレンシキー大統領は8日、ウクライナがロシアのために自国領を放棄するのは、国内法的にも国際法的にも倫理的権利の点からも不可能だと発言していた