欧州人権裁、ウクライナとオランダの共同訴訟でロシアによる多数人権侵害の責任を認定

欧州人権裁、ウクライナとオランダの共同訴訟でロシアによる多数人権侵害の責任を認定

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ウクルインフォルム
ストラスブールの欧州人権裁判所(ESCHR)大法廷は9日、国家間訴訟「ウクライナ及びオランダ対ロシア」における判決を言い渡し、侵略国ロシアによる多数の人権侵害を認定した。

欧州人権裁のマティアス・ギヨマール長官が判決を読み上げた。ウクルインフォルムの特派員が伝えた。

判決にて裁判所は、ウクライナにおける暴力の規模と性質を強調し、ウクライナの存在する権利に対するロシアの威嚇的な発言が欧州における平和に危険をもたらしたと表明した。

ギヨマール氏は、「第二次世界大戦以降、国際法秩序の基盤に対する被告国の著しい軽視について、これほどほぼ全ての国から非難された紛争はこれまでにない」と指摘した。

欧州人権裁は、2014年5月11日にウクライナ東部で戦闘が始まってから、ロシアが欧州人権条約の締約国でなくなった2022年9月までの期間において、第2条(生命に対する権利)、第3条(拷問の禁止)、第4条(奴隷の状態・強制労働の禁止)、第5条(自由および安全の権利)、第8条(私生活・家族生活の尊重の権利)、およびその他4つの条項の侵害があったと認定した。そして裁判所は、ロシアはウクライナ東部の軍事組織および分離主義組織を支配していたとし、それら組織の不作為の責任は正にロシアにあると認定した。

裁判所は、ロシアを代表する者による粗暴で違法な振る舞いの組織的かつ相互に連関する慣行につき強調した。具体的には、民間人やウクライナ軍人に対する超法規的処刑、拷問、性的暴行、非人間的かつ品位を傷つける行動、強制労働、民間人の殺害、民間人の恣意的な移動や追放、ウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系)を除く宗教コミュニティへの迫害、ウクライナ語・文化の抑圧、子どもの追放が挙げられた。

裁判所は、2014年7月のMH17便撃墜事件では、条約の第2条、第3条、第13条の侵害があったと結論付けた。また裁判所は、ロシアが同航空機墜落事故について効果的な捜査を行わず、捜査班と協力せず、同時に偽情報を提供して、捜査を妨害したと認定した。

裁判所は、「犠牲者の親族は深い悲しみに苦しみ、また遺体へのアクセスがないことや、捜査の遅延によっても苦しんだ。複数のケースでは、遺体が全く見つからなかった。完全な情報は提供されず、ロシアの振る舞いは彼ら(編集注:犠牲者の親族)の苦しみを深めた」と強調した上で、これらを非人道的な扱いと認定した。

さらに裁判所は、ロシアに対し、2022年9月16日までに占領地域で拘束され、(1)現在もロシア当局に拘束されている全ての者を釈放すること、(2)2022年9月16日までにウクライナからロシア領、またはロシアの支配下に連れ去られた全ての児童を特定するための国際的なメカニズムの創設に協力すること、(3)児童と家族または保護者との接触を回復し、その再会機会を確保することを命じた。

なお、「ウクライナ及びオランダ対ロシア」事件は、ドネツィク・ルハンシク両州一部一時被占領地域における大規模かつ体系的な人権侵害、2014年の両州からの孤児誘拐及び不法なロシア連邦領への連れ去りの試み、そしてMH17便の撃墜に関する裁判審理である。

「ウクライナ及びオランダ対ロシア」事件は、一度に4つの訴追を統合した最大の国家間事件となっている。2014年から現在までの期間を対象とするものであり、ウクライナ東部ドネツィク州及びルハンシク州の被占領地域における犯罪に関するものとなっている。また、2022年2月24日に始まった全面侵攻中のロシアの行動に対する申し立ても含まれている。

2014年7月のマレーシア航空機MH17便撃墜に関するオランダの申し立ても訴訟の一部を構成する。同撃墜では、搭乗していた全ての298人が死亡。侵害の規模を考慮し、26か国と1つの非政府組織が訴訟に参加している。

2024年6月12日、ストラスブールで口頭弁論が行われ、その際ウクライナは2014年以降の出来事と、2022年の全面侵攻開始以降のロシアの戦争犯罪に関して、その立場を示してきた。

裁判所の暫定判決はすでにロシアの責任を認定している。

欧州人権裁は2023年1月25日に、ウクライナ東部の出来事に関する事件の一部を受理する判決を下しており、同判決にて、2014年5月11日から少なくとも2022年1月26日までの間、ロシア戦力に占領されていたドンバス地域はロシア連邦の管轄下にあったとすでに結論付けている。

裁判所はさらに、ロシア軍が2014年4月からウクライナ領内にいたことを認定しており、少なくとも2014年8月からはロシア軍が大規模に展開していたことを記録している。これにより、同裁判所は事実上、「ウクライナにロシア軍はいない」というロシアの主張を否定している。

また、同裁判所は、MH17便の撃墜がロシアの占領政権の実効支配下にある地域で発生したと認定しており、一連の出来事はロシアの管轄下で生じたとしている。

なお、ロシアは2022年から欧州人権裁での手続きへの参加を止めている。同時に、それまで(2022年9月まで)に提出された申し立てに関する判決についての責任は残っている。

欧州人権裁では、「ウクライナ対ロシア」に関する4つの国家間申し立てと、クリミア、ドンバス、アゾフ海の水域、ロシアによる全面侵攻関連の出来事に関する約9500件の個人申し立てがまだ審理中となっている。

2024年6月、同裁判所は、最初の国家間事件「ウクライナ対ロシア(クリミア関連)」について本案判決を言い渡し、侵略国ロシアによる一時占領下のクリミアにおける多数の人権侵害の存在を認定している。


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