ゼレンシキー・ウクライナ大統領の国民向け越年演説全文

ゼレンシキー・ウクライナ大統領の国民向け越年演説全文

動画
ウクルインフォルム
ウクライナのゼレンシキー大統領は2022年12月31日の年明けまで最後の約15分間に、恒例の国民向けの越年演説を行った。

ウクライナ大統領府が動画演説テキストを公開した。ウクルインフォルムによる全訳以下のとおり。


親愛なるウクライナ人よ!

今年は、2月24日に始まった。前文も前奏曲もなく、唐突に。朝4時にだ。

暗かった。大きな音がした。多くの人にとっては困難だったろうし、人によっては恐ろしかったであろう。311日が過ぎた。私たちのところはまだ、暗くて、大きな音がするし、困難かもしれない。しかし、確実なことは、私たちはもう二度と恐ろしさは感じないということだ。そして、もう二度と、恥ずかしくもない。

今年は私たちの年だった。ウクライナの年だった。ウクライナ人の年だった。

2月24日、私たちは目を覚ました。別の人となった。別の民となった。別のウクライナ人となった。最初のミサイルは、幻想の迷宮を完全に破壊した。私たちは、誰が誰であるかを目にした。友に何ができるのか、敵に何ができるのかを目にした。そして、大切なことは、私たち自身に何ができるのかを目にしたことだ。

2月24日、私たちの内の何百万人もの人が選択をした。白旗ではなく、青と黄の旗を選んだ。逃亡ではなく、出迎えを、敵を迎え撃つことを選んだ。抵抗と戦いをだ。

2月24日の爆発は私たちに衝撃をもたらした。以降、私たちには全てが聞こえるわけではなくなった。必ずしも皆のことは聞かなくなった。私たちは『あなた方には降伏する以外の他の選択肢はない』と言われた。私たちは『私たちには勝利する以外の他の選択肢はない』と述べている。

2月24日、私たちは、勝利を生み出し始めた。多くのレンガから、何百もの勝利をだ。

私たちはパニックに勝利した。逃げ惑うのではなく、集まった。私たちは疑念、不信、恐怖に勝利した。私たちは自分と自らの力を信じた。ウクライナ軍を、インテリジェンスを、国家警護隊を、保安庁を、特殊作戦軍を、国境警備隊を、領土防衛部隊を、防空システムを、警察を、国家非常事態庁を信じた。私たちの防衛・治安戦力全てを信じた。戦士たちよ、私は、あなた方皆を誇っている!

今年は、ウクライナにとって、欧州全体にとって、世界全体にとっての喪失の年と呼べるかもしれない。しかし、それは正しくない。私たちは、そのように言うべきではない。

私たちは何も失ってはいない。私たちは奪われたのだ。ウクライナは、息子や娘を失ったのではない。彼らは殺人者にさらわれたのだ。ウクライナ人は家を失ったのではない。家はテロリストに破壊されたのだ。私たちは自らの大地を失ったのではない。大地に侵略者が入ってきたのだ。世界は平和を失ったのではない。ロシアが平和を破壊したのだ。

今年は、私たちの心を傷付けた。私たちは、あらゆる涙を出し切った。あらゆる祈りを叫んだ。311日間。私たちには1分1分に言うべきことがある。しかし、大半の言葉は余計だ。言葉は必要ない。説明や装飾は必要ない。必要なのは静寂だ、聞くために。必要なのは停止だ、意識するために。

2月24日、朝。

ホストメリ。ブチャ。イルピン。ボロジャンカ。ハルキウ。

「ムリーヤ」。

クラマトルシク。駅。ぬいぐるみ。

チェルニヒウ。

マリウポリ。劇場。「子供」と書かれた文字。

オレニウカ。

オデーサ。集合住宅。女の子。生後3か月。

ヴィリニャンシク。産院。赤ちゃん。生後2日。

「アゾフスタリ」。

これらを忘れることはできない。そして、許すこともできない。しかし、勝つことはできる。

私たちは、自らの足で耐え切った。なぜなら、私たちを支える、私たちの心があったからだ。

キーウの防衛。

ハルキウ。

ミコライウ。

チョルノバイウカ。

ズミーニー島。

HIMARS。

アントニウシキー橋。

「木綿」

クリミア橋。

「ネプトゥーン」。

巡洋艦「モスクワ」。

ロシアの戦艦。

イジューム、バラクリヤ、クプヤンシク。

ヘルソン。

私たちは、クレミンナ、スヴァトヴェ、メリトポリ、ドンバス全域、クリミアについても祈っている。

私たちは、戦っており、戦い続けていく。大切な言葉、「勝利」のために。

勝利は必ず訪れる。私たちは、勝利に向かい311日歩んでいる。

多くの力を注ぎ込んだ。しかし、もうこれ以上進めないと思えた時には、私たちがあなたたちと何を乗り越えてきたのかを思い出して欲しい。

私は、あなた方皆に言いたい。ウクライナ人よ、あなた方は信じられない人たちだ、と! 私たちが実現したこと、私たちが行っていることを見て欲しい!

私たちの戦士が、初日から、どのようにその「世界第2の軍」を潰しているか。

私たちの人々が、彼らの車列をどのように止めたか。

おじいさんがどのように手で戦車を止めたか。

女性がどうやってトマトの瓶で無人機を撃墜したか。

占領下でどのように敵の戦車、走行輸送車、ヘリ、砲弾を奪ったか。

どのようにして数時間で「シャヘド退治機」、無人水上艇、装甲車、救急車、バイラクタルのための資金を集めたか。

脅迫、砲撃、クラスター弾、巡航ミサイル、暗闇、寒さにどのように耐えたか。

どのように互いに支え合ったか。国を支えてきたか。

戦争では、一人一人が大切だ。

手に武器を持つ者、自動車のハンドルを握る者、船の操舵輪を回す者、飛行機を操縦する者、メスを握る者、指示棒を握る者一人一人だ。

ノートブックを使う者、コンバインを操縦する者、電車を運転する者。

検問所に立つ者、発電所で働く者。

記者、外交官、公共サービス従事者、救助隊員。

働く者皆だ。大学や学校で学ぶ者もだ。歩くことを学び始めた者すらもだ。

それら全てが、彼らのため、私たちの子供、私たちの人々、私たちの国ためなのだ。

大戦争には、些細な事などない。不必要なことなどない。私たち一人一人が戦士だ。私たち一人一人が前線だ。私たち一人一人が防衛基盤だ。

私たちは、国全体、全ての地域が、1つのチームとして戦っている。私はあなた方皆に夢中だ。私は、ウクライナの不屈の地域1つ1つに感謝を述べたい。

ハルキウ。壊されはしたが、屈してはいない。あなた方は、敵に対して、領土が隣でも、精神的にも隣なわけではないということを証明した。ハルキウはウクライナの町、英雄の町だ。

不屈の町ミコライウ。全ての攻撃を英雄的に耐えている。全ての嵐を克服する波の上の町だ。

スーミ州とスーミ。あなた方は、占領者の全面的侵攻を感じ取った最初の人たちだ。彼らにとって、スーミ州は、喉に刺さる小骨となった。普通の人々が火炎瓶を作り、敵の車列を燃やし、最初に敵を拘束したのだ。スーミ州は、力だ。

ドニプロ。支柱であり、私たちの前線の理想的な後衛だ。あなた方は、人々を受け入れ、負傷した戦士に生命を取り戻してきた。常に攻撃を受けているが、ドニプロは生きている。

オデーサ。太陽の光あふれる歓迎する町は、今は要塞だ。世界的な要塞だ。オデーサは、私たちを守り、世界を守っている。世界に食べ物を与えている。毎日、海を通じて、何百万トンの救いを送り出している。なぜなら、オデーサはママだからだ。

ヘルソン! あなた方は、英雄的な人々だ! あなた方は、占領下で8か月以上も過ごした。ニュースもなく、通信もないままに。ウクライナと断絶した中でだ。

あなた方は何千人も集まって露シスト(編集注:ロシア+ファシストの造語)に対する抗議に通りへ出た。あなた方は、ウクライナの人々がそれを目にするかどうか、そのことを知っているかどうかを知らなかった。占領者は、あなた方に対して、ウクライナはあなた方を見捨てた、あなた方のためには戦わないと嘘をついた。しかし、あなた方は信じて、何があっても待ち続けた。ヘルソンの顔は、砲弾の破片で欠けてしまったが、しかし、大切なことは、私たちが新年を、自由な人として、青と黄の旗の下で迎えているということだ。全てを再生し、全てを再建するのだ。チェルニヒウ、ザポリッジャ、クラマトルシク、バフムートも同様だ。

何百万人のウクライナ人のためのシェルターとなった、リウネ、イヴァノ=フランキウシク、テルノーピリ、ヴィンニツャ、ありがとう! 欧州や世界からの何百万トンの支援を受け取り渡している、リヴィウ、ウジホロド、チェルニウツィー、ルーツィク、ありがとう!避難するビジネス、企業、大学を受け入れているフメリニツィキー、ジトーミル、クロピウニツィキー、ポルタヴァ、チェルカーシ、ありがとう!

そして、ウクライナを待っており、最後まで待つ、ドンバス、ルハンシク州、クリミア。私たちの戦士よ。あなた方に感謝している。

そして、もちろん、キーウ州とキーウ市。私たちの心であり、常にあなた方のために鼓動を慣らしている。

ウクライナ人皆、私たち皆が、1つの家族、1つのウクライナなのだ。

今年は、ウクライナが世界を変えた年だ。世界はウクライナを開いた。私たちは、『降伏』と言われた。私たちは、『反攻』を選んだ! 私たちは、譲歩や妥協へ向かうようにと言われた。私たちは、EUとNATOに向かって進んでいる。

世界がウクライナのことを聞いたのだ。欧州議会、ドイツ議会、英国議会、イスラエル議会、米国議会がだ。

世界がウクライナを感じたのだ。ウクライナはメディアの中にいる。人々の心の中にいる。グーグル検索のトップ検索単語だ。

世界はウクライナを見たのだ。トロント、ニューヨーク、ロンドン、ワルシャワ、フィレンツェ、シドニー、その他の町々のメインの広場でだ。

ウクライナ人は他の人々をびっくりさせている。ウクライナ人は拍手を受けている。ウクライナ人は人々を鼓舞している。

私たちのことを脅せるものが何かあるだろうか? ない。私たちのことを止められる人が誰かいるだろうか? いない。

なぜなら、私たちは一緒にいるからだ。

私たちが戦っているのは、お互いのためだ。

私たちにとっての最高の花火は、占領者の倉庫の花火だ。最高のプレゼントは、参謀本部の報告書上の数字だ。

私たちは、新年、2023年が何を私たちにもたらすかを完全には知らない。しかし、あらゆることへの準備はできている。戦いを続けること? 戦い続けよう。そして、勝利した暁には、互いに抱きしめ合おう。

親愛なるウクライナ人よ!

新年まであと数分だ。私は、皆に今、1つのことを願いたい。それは、勝利だ。それが主要なことだ。全てのウクライナ人にとっての1つの願いである。

この年が回帰の年になりますように。私たちの人々の回帰。戦士たちの家族のもとへの帰還。被拘束者の自分の家への帰還。

避難民の自分のウクライナへの帰還。

私たちの大地の回帰。そして、一時的被占領地は、永遠に自由となる。

普通の生活への回帰。外出禁止時間のない幸せな時間への回帰。空襲警報なく屋外へ出る喜びへの回帰。

私たちが奪われたものの返還。私たちの子供の「子供時代」の返還。私たちの親の穏やかな老後の返還。

孫がおじいさんおばあさんのところへ休みになったら行けますように。ヘルソンへとスイカを目掛けて行けますように。メリトポリへサクランボを食べに行けますように。

私たちの町が自由になりますように。私たちの友達が誠実でいてくれますように。

そして、報告書にて、10万の殲滅された敵、何千の破壊されたロシアの装備の数字の隣に、私たちの主要な数字、主要な成功の数字が現れますように。それは60万3628平方キロメートルだ。独立ウクライナの1991年当時の面積だ。常にその数字であり続ける。

新しい年がこれら全てをもたらしますように。私たちは、そのために戦う準備がある。だからこそ、私たち一人一人がここにいる。私はここにいる。私たちはここにいる。あなたたちはここにいる。皆、ここにいる。私たち皆が、ウクライナだ。

ウクライナに栄光あれ!

あけましておめでとう!


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