欧州委員会、ウクライナ産農産物の過剰輸入からのEU市場保護方策を提案
スピナント欧州委員会報道官が記者会見時に発言した。ウクルインフォルムの特派員が伝えた。
スピナント報道官は、本件は脆弱な農業へのサポートと、EU市場へのウクライナの穀物など農産物の供給に関する制限措置に関するものだと述べた。
同氏は、「今朝、欧州委員長は、ウクライナ農産物輸出の状況に関するEU加盟国5か国政府からの書簡に返答した。委員長は、EU市場へのある種のウクライナ農産物の輸入増加に関する表明された懸念を完全に把握していると強調した。委員長は、統一市場と関税同盟の観点から、この懸念の解決のためには、欧州の共同アプローチが不可欠だと強調した。委員長は、同状況の解決のために3つの提案を示した」と発言した。
同氏によれば、1つ目の提案は、現在の市場の状況の結果として被害を受けた欧州の農業事業者支援の継続に関するものだという。同氏は、「私たちは、5630万ユーロの支援パッケージを提供し、現在1億ユーロの2つ目の財政支援パッケージを準備している」と伝えた。さらに、同氏は、「2つ目(の提案)として、私たちは、一定のカテゴリーの穀物に関する現存の貿易ルールに従った予防措置をとっていく。それは、とりわけ、小麦、とうもろこし、ひまわり、セイヨウアブラナの種子に関係する。3つ目として、私たちは、その他の機微な商品に関する調査を開始する」と説明した。
そして同氏は、ドンブロフスキス欧州上級副委員長が本日昼に、上述EU加盟国5か国の閣僚と行動の手順と提案について協議を行い、さらに同日ウクライナの代表者とも協議を行うと伝えた。
同氏は、「私たちは、一方でウクライナの、農産物を含む食料品輸出を支援することに断固とした準備がある。なぜなら、それはウクライナ経済のための重要な『命の道』だからだ。私たちは、これら食料品を、それを必要としている世界市場へと届ける義務がある。特に、食料安全保障に関する懸念に応えるためだ。同時に、私たちは、私たちの農家のサポートにも完全にコミットしている」と強調した。
加えて同氏は、現時点では欧州委員会は、EU理事会と同議長国のスウェーデンとともに前述の現状への対処のための提案に取り組んでおり、それは近いうちに形になるはずだと指摘した。
これに先立ち、18日、ポーランドとウクライナの両国閣僚は、協議の結果、ポーランドが4月21日に、ポーランドを通過する欧州の港へのウクライナ産穀物の封鎖を解除することとし、他方で、ウクライナ農産物のポーランド市場への禁輸は継続することに決まったと発表していた。
なお、ウクライナと隣接するEUの国々では、ウクライナ産農産物の流入により、各国市場の農産物の価格が値崩れを引き起こしたことで、地元の農家が抗議を行っていた。ポーランド政府とハンガリー政府は、ウクライナの穀物など農産物の禁輸の導入を発表。この対応に関して、欧州委員会は、EUは問題に対して共同の対応を模索しなければならないとして、批判していた。
また、ポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアの5か国政府は、ウクライナからの穀物や食料品のEU市場への大きな流入が関連製品の価格低下を引き起こしたとして、欧州委員会に対して、ウクライナからの農産物輸入を制限する保護方策をとるよう要請する書簡を送付していた。
ロシアの対ウクライナ全面侵略開始以降、ロシアはウクライナの黒海に面した海洋港を封鎖し、それにより当初、ウクライナの農産物の海路を通じた出荷ができなくなっていた(その後、一部の海洋港を通じた、期間限定の出荷について、ウクライナ、国連、トルコ、ロシアが合意)。EUは、これを受け、ウクライナの農産物の一部を世界市場へ輸出させるためにに、トラックや鉄道といった陸路や内陸水路を利用した輸送支援「連帯の回廊」を組織していた。