MH17の悲劇:近づく裁判の日

MH17の悲劇:近づく裁判の日

ウクルインフォルム
オランダでは、注目される裁判の準備が継続している。

ウクライナ東部でマレーシア航空機MH17が撃墜されてから、4年以上が経過した。乗客と乗務員、合わせて298名が亡くなった。本年5月には、国際共同捜査グループ(JIT)は、MH17が、ロシア領クルスク近郊に駐屯するロシア軍第53対空旅団によりウクライナ領に持ち込まれたロケット・コンプレクス「ブーク」により撃墜されたとの、最初の結論が発表された。ロシア領からウクライナへの兵器の搬送ルートが完全に判明した。ロシアは、他の断罪同様、この結論も認めていない。しかし、判決の日は徐々に近づいている。

裁判は、いつ、どこで行われるか

MH17関連裁判の開始の準備は、全て整っている。関連する法的基盤は作られており、ウクライナとオランダのそれぞれの国内法の法改正も済んでいる。ウクルインフォルムは、オレーナ・ゼルカリ欧州統合担当ウクライナ外務次官から、9月中にでも、裁判の開始に関する発表はありうるとの情報を得た。

ゼルカリ次官は、「JITに参加する国々の首脳が出会う9月の国連総会において、いつ裁判所が解説されるのかにつき発表があると考えている」と述べた。

オランダでは、すでにMH17案件のような大規模案件の審議を行う裁判を実施する場所が決められている。ハーグから約50キロメートル離れたバドフーヴェドルプにある裁判所集合体「スキポール」であり、同じ名前の空港が数キロメートルのところにある。

象徴的なことに、4年前に、MH17が離陸したのがこのスキポール空港であり、この空港の隣にはこの悲劇の被害者を追悼する記念碑が建てられている。

誰が証言し、誰が断罪されるか

裁判所の機能に関する運営面での問題がまだ解決されねばならないのだが、それでも、裁判プロセスがマスメディアに対してオープンとなることは既にわかっている。オランダ国内法によれば、犯罪の被害者とその近親者は裁判に出席する権利を得ることになっている。

ゼルカリ次官は、捜査グループは裁判プロセスが始まるまで如何なる人物の名前も述べることはないだろうと述べた。捜査グループは、この悲劇に関与した100名以上の人物を既に特定している。そして、現在、証言者との仕事が継続しているところである。証言者にはロシアからの人物も含まれており、彼らの安全には最善の注意が払われている。「現在、証言をしている人物の名前は、誰も述べることはできない。なぜなら、第一に、彼らはこれらの人物とのコンタクトを失うことを非常に心配しているからである」とゼルカリ次官は述べる。

刑事捜査が終了したら、オランダ検察は容疑者に対し、裁判所への出頭を要求する通知を送ることになる。

分析捜査ネットワーク「ベーリングキャット(Bellingcat)」は、容疑者となりうる人物の名前が既に挙げている。彼らの情報によれば、MH17撃墜に関与しているのは、ロシアのセルゲイ・ドビンスキー(Сергей Дубінский)少将とオレグ・イヴァンニコフ(Олег Иванников)ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)将校である。ベーリングキャットは、The Insiderとの共同分析において、「ドルフィン(Дельфин)」とのコードネームの人物はニコライ・トカチェフ(Николай Ткачев)ロシア軍予備上級大将であることを特定している。ベーリングキャットは、主にオープンソースから情報を集めている。彼らが得た情報は、今後の公式な断罪のために、JITが検証している。

ゼルカリ・ウクライナ外務次官は、「ロシア軍司令官、防空軍司令官の関与なしに、(ミサイルの)発射はあり得ないであろう」との確信を述べ、「彼らは、対象が飛行機であることを理解していたのである」と補足した。

何が裁判の長さに影響を与えるか

オランダの有名な法学者であり、国際刑事法の教授であるゲルト=ヤン・アレクサンダー・クノプス氏は、裁判プロセスの長さは、JITの捜査の結果に左右されると述べる。クノプス氏は、ウクルインフォルムに対し「捜査が終わった後でさえ、裁判審議の長さは、審議中に聞かれることになる弁護側の立場や証言の数といったその他の要因に左右される」と述べた。

一方で、ゼルカリ次官は、審議の長さは、オランダ検察が裁判審議の枠内でどれだけ深く入り込むかにもかかっていると予測する。つまり、彼らに、犯罪に関与した人物の全体像、(指示の)垂直構造を明らかにする準備があるのか、それとも、直接関与した人物にのみ限定するのか、ということである。ゼルカリ次官は、この質問への返答は、本件が(編集注:将来の裁判で)どのように発表されるかによって、判明するであろうと予測している。ゼルカリ次官は、「同時に、この悲劇がロシアによりあらかじめ計画されたものであることは既に皆が理解しておりと自分は思っているし、まさにその理由から、捜査官にとっては、ロシアの犯罪の100%の証拠を得ることが非常に重要なのである」と述べた。

ゼルカリ次官は、また、MH17案件は、「ウクライナ対ロシア」裁判案件にも含まれていることにも注意を向けさせた(編集注:国際司法裁判所(ICJ)において、ウクライナがロシアを提訴しているもの)。ゼルカリ次官は、「国連の『テロ資金供与防止条約』を利用したのは歴史上ウクライナが初めてであり、実質的に我々が歴史を作っていることになる」と強調した。

国家としてのロシアに対する懲罰は、如何なるものがありえるのであろうか。ゼルカリ次官は、対露制裁の強化、禁輸措置といった、国際法を違反した国に対して、通例とられる措置があり得ると予測している。

イリーナ・ドラボク、キーウ(キエフ)


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