地中6メートルの学校生活(ウクライナ南部ザポリッジャ州)

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ウクルインフォルムの記者が、南部ザポリッジャ州で前線に最も近い「地下」にある学校を訪れた。

ザポリッジャ州バラビネの学校「プレスティジュ」の前線からの距離は約30キロメートルだ。今年2月、同州の自治体バラビネ、クシュフム、マロカテリニウカの児童たちのためにこの「地下学校」が開校した。この学校は、2交代制で1000人の生徒が学ぶことを想定して建設されたものだ。しかし、開校当初はオフラインで通学していたのは300人の児童だけだった。ウクルインフォルムの記者は、現在この学校の地下教育にどれだけの需要があるかを知るために、9月から始まる新学期の2日目に学校を訪れた。

執筆:オリハ・ズヴォナリョヴァ(ザポリッジャ)

写真:ドミトロー・スモリイェンコ

2回の交代制で地下学習

学校は地上から6.3メートルの深さに位置している。安全のため、児童は授業中や休憩中に地上へは出ない。空襲警報が鳴っている時に、授業が終わった場合、生徒たちは警報が解除されるまで地下の学校に留まり、教師たちも一緒に待つ。その場合、スクールバスはどこへも行かない。

学校には、教室の他に様々なボードゲームがあるラウンジ空間、会議ホール、売店、クローク、読書室がある。学校には最新の換気システム、自動火災報知機、非常用照明が備わっている。教師たちは、児童が不安や恐怖を感じないためのあらゆる条件が整えられていると述べる。

校長のジャンナ・ヴィンニチェンコさんは、「この『地下学校』で授業を開始した直後の生徒数は300人だった。私たちは保護者を招き、ここにどのような設備があるかを見ていただき、空気が十分にあること、確かに安全であることを確認してもらった。今では、第1交代の期間に420人の生徒が通学している。彼らはバラビネの学校『プレスティジュ』、マロカテリニウカの学校『ムリーヤ』、そして就学前施設『ディヴォスヴィト』の2つのグループの児童たちだ」と話す。

私たちは、休憩時間中に校内で彼女と話した。周りには何十人もの児童たちが笑い合い、廊下を走り回っており、オンライン学習に確かに足りない、普通の学校生活を過ごしている。

ジャンナ・ヴィンニチェンコ校長

ヴィンニチェンコ校長は、「児童たちにとって快適で、彼らが直接会ってコミュニケーションをとり、学べる機会があることを保護者が知ったことで、生徒数が増えた。今では2回の交代制で計690人の生徒が通っている。この学校は2回交代制で最大1000人の生徒を受け入れることができる。私たちの自治体の他に、ザポリッジャ市の児童もここで学んでいる。この教育空間はとても安全だ。私たちは建設の様子を見守っていた。偶然だが、ある試練があった。変電所が損傷した時、私たちは代替電源に切り替え、児童たちはここに留まり、安全だった。スクールバスはクシュフム共同体から児童を乗せてくるが、安全のためにマロカテリニウカには運行していない」と語った。

就学前のグループはここに3時間滞在するという。これは年中組と年長組だ。校長は、これらの幼児たちが将来この学校の生徒になる可能性があると説明する。しかし、彼らは3時間以上滞在することはできない。なぜなら、この施設には、幼児が昼寝をするための部屋がまだ足りないのだ。

地下学校の開校を知り、国外から帰国

私たちが話していると、料理人たちが朝食の皿を並べ始めた。メニューは、新鮮なキュウリとジャガイモ、それからお茶だ。今年は、1年生から11年生までの全ての生徒に対して給食が無料となっている。この学校では、ケータリングを注文せず、料理人が自前で調理している。ただし、調理は避難所ではなく、地上の学校で行わねばならないが。調理された食事は、特別に購入された保温容器に入れられ、地下学校に運ばれる。

手にベルを持った業務員が学校内を歩き回る。ベルが鳴ると、休憩時間だ。一部の児童たちは朝食をとりに行き、他の児童たちは別の休憩時間に食事をする。料理人のナタリヤさんが、全員が食事が行き渡るよう注意深く見守っている。彼女は学校でもう5年間働いている。

ナタリヤさん

ナタリヤさんは、「子供たちをみんな集めて、食事を与え、片付けなければならない。私たちは自分たちで料理を作っており、みんなに美味しく食べてもらえるよう努力しており、そう願っている。新学期は始まったばかりだが、すでに児童たちの数が増えているのを目にしている。それがとても嬉しい。新学期が始まるのをとても待っていた。子供たちの笑う声や騒ぐ声を聞き、彼らの幸せそうな姿を見ると、心が何だか軽くなるのだ」と話す。

ナタリヤさんは、地下学校の建設中、これら全てがどのように機能していくのか分からず、不安だったと打ち明ける。自治体は前線に近いが、ナタリヤさんはどこかへ避難するつもりはない。ここには彼女の子供たちや孫たちが住んでいるからだと言う。

彼女は、「ええ、ここは騒がしい。(編集注:攻撃が)頻繁にある。ザポリッジャや他の自治体に何かが飛来する音は聞こえる。それでも、私たちはここに居続けるよ」と語る。

開校と対面学習の機会を待っていた1人に、オレーナさんがいる。彼女は2年生の息子プラトンを学校に連れてきた。

オレーナさんは、「地下学校ができたこと、毎日通うことができることをとても嬉しく思っている。私たちは国外にいた。2024年にブルガリアへ避難したのだが、地下学校が開校したという理由で帰国したのだ」と話す。

彼女は、息子は幼稚園をとても恋しがっていたが、当時週に1日しか通うことを許されなかったと述べる。学校への入学に備えるためには、家庭教師を頼んでいたという。今、自治体がどれほど安全かについては、彼女はこう答えた。

「静かな時には声を発さない、というジンクスがある。『静かだったね』と言った途端に、(編集注:砲弾などの)飛来が始まるからだ。状況は苦しい。息子は神経質になっている。飛来のせいで、彼の状態は不安定だ。私たちは精神安定剤も服用し、心理的発作もあった。」

学校に警察官がいる理由

ザポリッジャ州の5つの教育機関では、「教育安全サービス」部門の警察の監察官が勤務している。この地下学校では、そのオリハ・ラダトコさんが安全を担当している。彼女は毎日午前7時から7時30分に学校に来て、敷地の巡回から仕事を始める。

ラダトコさんは、「私が全てを確認するまで、児童たちは学校に入らない。敷地が前線に近いため、全てを確認することが重要だ。その後、児童たちが入り、8時に授業が始まる。私たちの主な役割は3つ、法執行、指導、そして啓発だ。法執行は、学校内での立ち入り管理や、児童に関係する違法行為の防止といった安全対策を実施することだ。啓発は、様々なテーマに関するインタラクティブなイベントや予防的対話を行うことだ。指導は、児童たちを導き、特定の状況でどのように行動すべきかを教え、彼らの指導者となり、あらゆるサポートを提供することだ。これは警察の活動の新しい方向性だ」と説明する。

オリハ・ラダトコさん

彼女は、最初は、子供たちが少し警戒していたと打ち明けた。なぜ学校に警察官がいるのか誰も理解できなかったからだが、しかし、今では彼女を見かけると嬉しそうだという。

ラダトコさんは、この自治体では前線が近いことから頻繁に空襲警報が鳴り、無人機や滑空爆弾が飛来すると語る。そのため、彼女は児童たちに、例えば無人機が接近する音が聞こえた時にはどのように行動すべきか、どのように自分を落ち着かせるかを説明しているという。彼女は、「ウクライナ防衛」の教室を見せてくれた。そこでは対地雷やその他個人が気をつける安全面で注意することについての授業が行われている。ロッカーの1つには、ヘルメットと防弾チョッキが入っている。ある授業では、ラダトコさんは児童たちと一緒に、建物が崩壊した場合に、その中にどのように入るかを実践した。また、ここには無人機のシミュレータもある。

彼女は、「児童たちはゴーグルを装着し、無人機を使って操縦を試みる。これは、空中での方向感覚を養い、現実でそれがどのように動くかを理解するためのものだ」と説明した。

ヴィンニチェンコ校長は、施設が「教育安全サービス監察官」プロジェクトへの参加を申し込んだ時はまだ、それがどのようなものかを完全には理解していなかったと述べる。

そして、ヴィンニチェンコ氏は、「監察官の職務は、法的な側面だけでなく、教育的な側面も含んでいる。オリハさんは教師と緊密に協力しており、彼女の参加なしにはどのようなイベントも行われない。教育や保護者との作業に関する全ての問題は、彼女と解決している。このような役職は、あらゆる教育施設に設置されるべきだと思う。何よりも児童たちの安全のためである。彼女はいつもここにおり、見慣れない人が来れば分かるし、敷地を巡回し、身分証明書の提示を求めることもできる。私は校長として、見知らぬ人が学校に入りこむことはないという安心感を持っている」と説明した。

私たちは、この学校で1時間以上過ごした。授業がどのように行われているか、休憩時間を児童がどう過ごしているかを見た。現代的な改修と安全な空間は確かにある。しかし、教師も児童も、彼らが言うところの「普通の学校」に戻れる日を心待ちにしているのも事実だ。

ヴィンニチェンコ校長は、「ここは良い場所だし、素晴らしいが、それでもとても地上へ出たい。窓の外を見て、新鮮な空気を吸い、ただ学校の敷地を歩き回りたいのだ。私たちの学校はとても美しいのだから」と言う。

児童たちは今、ソーシャルメディアを通じてではなく、現実の生活で互いに会って話せることをただ楽しんでいる。