ロシア偽情報:歌手マドンナの偽PV

ファクトチェック

ロシアの偽情報拡散者は、米国の歌手マドンナの楽曲のプロモーション動画(PV)を模した、あたかもマドンナがウクライナに敵意を示すかのような動画を公開した。

ロシアの複数テレグラム・チャンネルは、マドンナの新しいPVの一部だと主張する動画を拡散した。動画では、楽曲「バック・ザット・アップ・トゥー・ザ・ビート」の流れる中、マドンナがウクライナの国旗の色が塗られたチェスの駒「ポーン」をチェス盤から叩き落としているかのような場面が映し出されている。ロシアのプロパガンディストたちは、この動画は2月21日のプーチン露大統領の演説に関係するものだとし、さらにマドンナが反ウクライナ的な表現をするのは今回が初めてではない、「謝りたいか? 絶対に誰も謝らない」といったフレーズが聞こえるなどとも主張している。

実際には、このようなPVは、マドンナのユーチューブ・チャンネルにもインスタグラム・アカウントにもない。楽曲「バック・ザット・アップ・トゥー・ザ・ビート」は、歌詞が表示されるリリックビデオが公開されているが、そこにもプロパガンディストの拡散したようなレザーの衣装のマドンナは出てこない。動画の公開は今年の1月7日となっている。

偽動画作成に使用されたレザー衣装のマドンナの動画は、同氏のTikTokアカウントで見つかった。2022年12月18日に公開された動画には楽曲「バック・ザット・アップ・トゥー・ザ・ビート」は使われているが、しかし、「謝りたいか? 絶対に誰も謝らない」というフレーズはなく、またウクライナの国旗の色に塗られたチェスの駒も見られなかった。

グーグル社の画像検索を使うと、テレグラム・チャンネル「シェイフ・タミル」にて、2月17日にこの「ウクライナの国旗の色に塗られたチェスの駒」の画像が使われたマドンナの偽動画が拡散されていた。

なお、ロシア発偽情報にて、マドンナの名前が用いられたのは今回が初めてではない。昨年12月にも、マドンナがウクライナ国旗を口の中に頬張ったと主張するロシア発の動画が拡散されている。このファクトチェックは、ウクライナのファクトチェック団体「VoxCheck」がすでに真偽検証を行っている(リンク先はロシア語)。

またマドンナは、ロシアによる全面侵攻が始まった当初、ウクライナを応援するメッセージを発出している。