ニコ・ランゲ ドイツの安全保障専門家

2025年版「交渉劇場」は終わった、ウクライナへの支援を通じてプーチンを止めなければならない

ウクルインフォルムはドイツの軍事専門家であり元ドイツ連邦国防省顧問のニコ・ランゲ氏と話した。彼は以下のように語る。

ロシアは前線で目立った成果を上げていない。しかし、プーチンは戦争を終結させるつもりはなく、欧州はクレムリンによるあらゆる決定にも備えなければならない。トランプ米大統領は他の地域に取り組んでおり、それがロシア側を勢いづかせるおそれがある。また、中国は、ウクライナでの戦争終結に向けた努力を払うことに単に関心がないように見える。同時に、欧州の人々は、欧州大陸における軍事プレゼンスを縮小するという米国の計画を活発に議論している。ウクライナでの戦争を終結させるためには、必要なのは「仲介者」ではなく、プーチンが止まらざるを得ない水準にまで、ウクライナの軍事力を強化することである。

聞き手・写真:オリハ・タナシーチュク(プラハ)

ロシアは現在、ウクライナによる前線及びロシア領内深部への攻撃で大きな困難に直面している

ランゲさん、最近ウクライナの首脳陣は、ロシアの攻勢が現在前線だけでなく、ベラルーシ領内からも生じる可能性があると度々警告しています。それはあり得ると考えていますか?

ロシアに計画や意図というものがある一方で、実際に起きていることというのもあります。現在、ベラルーシには何らかの攻撃を準備しているような軍の集結は見られません。それがいずれ生じるかどうかは、私たちには分かりません。

ロシアは現在、前線及びロシア領深部へのウクライナによる攻撃で大きな困難を抱えています。しかし、私たちは4年間の戦争で、主導権が時折移るということを知っています。 そして現在、ウクライナには一定の勢いがあるものの、大きな転換は生じていません。そしてプーチンに立ち止まる意図はありません。

したがって、もしドンバスで(編集注:ロシアが)何もうまくいかなければ、他に何が起こり得るかについては、多くの可能性があります。彼らは別の場所で試すのか、あるいは別の欧州の国を攻撃するのか? 私たちには分かりませんが、多くのことに備えなければならないと考えています。

NATO加盟国への攻撃も、でしょうか? 純粋に同盟の結束と準備態勢を試すために…。

そうです、当然です。いずれにせよ、そのような危険があります。

私はそもそも、ある国がNATO加盟国であるかないかということで自分を安心させるべきではないと思っています。私たちはルーマニアやバルト諸国で何が起きているかを見ています。ロシアのレトリックや、あたかもバルト諸国の領内からロシアに対して無人機がコーディネートされているかのような、嘘を交えたゲームを目にしています。

プーチンは米国人が何をしているかを見ています。そして、もし米国人がさらに欧州から離れていったり、欧州の人々とさらに激しく対立したりするようになれば、彼はそれを好機と捉えるでしょう。

同時にプーチンは、戦争はまもなく終わるなどと言っています。あなたの見解では、彼のその発言は何を意味していたのでしょうか? 強力な一撃によってウクライナを降伏させられると信じているのか、それとも本当に和平交渉を当てにしているのでしょうか?

プーチンは5月9日に全く新しいことを言っていませんでした。各通信社の報道や要約されたニュースのせいで、いつもそのように(編集注:プーチンが何かしら新しいことを言ったかのように)提示されてしまっているのは、少し残念です。記者会見を全部通して見れば、彼は「そうだ、戦争はまもなく終わり、全ての目標はまもなく達成される」と言っていました。それはいつもの発言です。私たちはそれをもう4年間も聞いています。そこには何も新しいものはありません。

その仲介者に関する話について言えば、プーチンはただあざわらっているでしょう。最初はマクロン氏が単独でプーチンと話したがり、その後メローニ氏が「EUから誰かを探した方がいい」と言いました。

しかし、実際には議論することはなく、合意するものもありません。プーチン氏は、ウクライナに赴いて「どうかドンバスを明け渡してほしい」とか「降伏しろ」とか、そういうことをあなた方に言う誰かを探しているだけなのです。そのため、私は、それらのことは全て重要なことから目をそらせるだけだと考えています。

習氏にとっては、トランプ氏の訪問は重要で、プーチン氏の訪問は「いつものこと」だった

プーチンは中国から帰国したばかりです。その前にはトランプ氏がそこにいました。ウクライナはこれらの訪問から何かを期待すべきでしょうか?

トランプ氏の訪問は習氏にとって重要でした。

プーチン氏の訪問は17回目の訪問に過ぎず、それほど重要ではありません。ただ行わなければならなかっただけです。

つまり、それらの訪問は同じではないのです。全く異なります。私が言いたいのは、プーチンは現在、自国の石油及びガスを市場価格より低い価格で中国人に売ることを余儀なくされているということです。それは戦略的パートナーシップには見えません。中国人は状況を利用しています。しかし、中国人は時折、部品やその他の物でロシアを支援することにも利益を見出しています。しかし、そこに現在ある全てのことを解決するような、いわば大きく秘密裏の中国の戦略があるとは私は見ていません。中国人は特に壮大で戦略的なことは何もしていません。

米国が欧州における自国部隊を縮小することは分かっていた

米国は、自国の軍人5000名をドイツから撤退させ、同数をポーランドに派遣することを確認しました。同時に、それはドイツへの罰ではないと指摘しています。ドイツは5000名の米国人軍人の不在を感じるでしょうか?

私は、私たち全員が落ち着くべきだと考えています。米国には、自国の部隊をどこに駐留させるかを決定する完全な権利があります。将来的に欧州における部隊が減少することは、かなり前から知られていました。そのプロセスは長い間続いています。そして、現在4000名の交代戦力がポーランドに行かず、代わりにこれまでドイツに駐留していた5000名が行くとしても、私はそこに大きな問題は見ていません。

私にとってより興味深く思えるのは、欧州人に対する問いです。「なぜあなた方はそれほどまでに驚いているのでしょう?」 現在驚いている人は、多分過去数年間、穴の中で眠っていたのでしょう。それに対する欧州の準備はどこにあるのでしょうか?

米国人はまた、自国の防衛上の必要性や他の多くの状況が生じた場合に、欧州における軍事能力を縮小すると言っています。そのため、私たち欧州人は自国の能力を増強しなければなりません。私は他の人々とともに、これに関する提案を文書「スパルタ」で行いました。しかし、現在ショックを受けたふりをするのは、どこかしら不誠実なことだと考えています。それが生じることは分かっていたではないですか。

必要なのは仲介者ではなく、プーチンを止める強制力

ルビオ米国務長官は、ロシアによる対ウクライナ侵略停止に関する、米国の参加する交渉が、進展の不在を理由に停止されたことを認めました。しかし、米国は結果を達成するチャンスが生じれば、再び交渉に関与する用意があるとしています。トランプ氏は中東の状況を解決した後、やはりウクライナ、ウクライナにおける戦争へと思考を戻すと思いますか?

私は、トランプ氏はウクライナよりも、むしろキューバの方向へ向かうだろうと思っています。そのプロセス、その2025年版「交渉劇場」は終了しました。期待するものは何もありません。何が起こるというのでしょうか? 私たちはウィトコフ氏から「ウクライナよ、どうかドンバスを明け渡してくれ」という1000回目の言葉を聞きたいのでしょうか? それら全ての会談からは何も生まれませんでした。思うに、私たちには、これ以上それは必要ありません。

つまり、仲介役は本当に欧州に移るのでしょうか? あるいは、ウクライナとロシアが自ら問題を解決することになるのでしょうか?

しかし、問題は、私たちが仲介者を必要としていることではありません。それが問題なのではないのです。問題は、私たちがプーチンを止めなければならないということです。それは、ウクライナへの軍事支援によってのみ可能となります。

その際に、何を「仲介」できるというのでしょうか? その「仲介者」を巡る状況は、ただ滑稽なだけです。