「汚職対策機関はロシアの影響抜きで活動していく」=ゼレンシキー宇大統領、汚職対策機関権限縮小法署名後に発言
ウクライナのゼレンシキー大統領は、政権高官の汚職犯罪の捜査・訴追に特化した法執行機関「国家汚職対策局(NABU)」と「特別汚職対策検察(SAP)」の権限縮小法に署名した後、汚職対策インフラはロシアの影響抜きで活動していくことになると発言した。
ゼレンシキー大統領が23日未明に公開した国民向け呼びかけ動画で発言した。
ゼレンシキー氏は、「クリヴォノスNABU局長、クリメンコSAP長、クラウチェンコ検事総長、マリュク保安庁(SBU)長官と話した。様々な挑戦がある。私たちはそれら全てを話し合った。汚職対策インフラは活動していく。ただしロシアの影響抜きでだ。その影響からは全てを浄化せねばならない。そして、正義がより多くならねばならない」と発言した。
また同氏は、NABUとSAPは引き続き活動していくとしつつ、同時に検事総長が、ウクライナにて法を犯した者への処罰を真に不可逆なものとするようにすることが重要だと発言した。同氏はさらに、放置されている事件は捜査されねばならないとも述べた。
同氏はそして、「何年もの間、ウクライナから逃げ出した公職者たちが、なぜか非常に快適な国で、法的影響を受けずに平穏に暮らしている。それは異常だ。何十億もの刑事訴訟が何年もの間放置されていることに合理的な説明は一切ない。そして、ロシア人がいまだに必要な情報を入手できることも説明がつかない」と主張した。
同氏はその上で、「ロシア人の関与がないことが重要だ。処罰が不可避となり、社会がそれを実際に目にすることが重要だ」と強調した。
これに先立ち、SBU関係者が同日、SBUと検事総局は、NABUへの「ロシアの影響力を排除」する特殊作戦を実施していると伝えていた。またSBUは、現職最高会議(国会)議員であるフェージル・フリステンコ氏に、国家反逆罪の容疑を通知したとも発表していた。SBUは、フリステンコ氏はロシア連邦保安庁(FSB)のトップエージェントだと主張している。
同時に、特別汚職対策検察(SAP)は21日、ウクライナの保安庁(SBU)がSAPのもとで、国家機密法遵守の調査を行ったと報告した。SAPは、今回の措置は、現在NABUとSAPが捜査している多くの刑事事件における秘密裏の捜査活動に関する情報の漏洩に繋がるおそれがあるとの見方を示している。
SBUは、SAPの家宅捜査時に、SBU職員が秘密の捜査情報にアクセスしたとする指摘を否定。NABUもまた、SBUによる主張に反論している。
G7大使ウクライナ・サポート・グループは21日、SBUがNABUを対象として、ロシアとの繋がりに関する捜査を発表したことにつき、深刻な懸念を表明していた。
ウクライナ最高会議は22日、ウクライナの政権高官の汚職犯罪捜査・起訴に特化した法執行機関「国家汚職対策局(NABU)」と「特別汚職対策検察(SAP)」の権限を縮小する法案を採択した。
NABUは、同法案につき、「直前に行われた修正はSAPの独立性が事実上破壊され、NABUとSAPの活動を検事総長に従属させるものだ」と訴えていた。また、クリヴォノスNABU局長は、同日記者会見を開き、ゼレンシキー大統領に対して、今回最高会議が採択した法案に署名しないよう要請していた。
欧州連合(EU)のメルシエ欧州委員会報道官は22日、ウクライナのNABUとSAPはウクライナにおける改革議題にとって決定的な意味を持っており、その独立は、市民社会の信頼を維持する上でも、維持されねばならないと発言していた。
同日、キーウ中心部では、最高会議が採択した汚職対策機関の権限縮小を定める法律に反対する市民が抗議集会を開催し、ゼレンシキー大統領に同法案への拒否権を発動するよう要求していた。
同日、ゼレンシキー大統領は、汚職対策機関権限縮小法に署名。23日には、同法は公布された。