IAEA、ザポリッジャ原発周辺への安全圏創設を呼びかけ

国際原子力機関(IAEA)は6日、ザポリッジャ原子力発電所調査団の総括となる報告書を公開し、同原発周辺に速やかに安全圏を創設するよう要請した。

IAEAが公開した約50ページに及ぶ報告書には、IAEAによる原発の情勢コントロールを可能とするために、安全圏が不可欠だと記載されている

報告書には、同原発で働くウクライナの職員の作業環境を改善することが勧告されている。

また、「ロシアの軍事占拠下にある原発に従事するウクライナの人員は、特に人員制限の中、常に強いストレスと圧力を感じている。それは、不安定と人的ミスの増加、それによる核セキュリティにとっての関連被害をもたらしかねない」と書かれている。

調査員たちは、原発敷地内で確認された著しい損傷と、ロシア軍と軍用兵器がタービン室にも確認されたことを報告した。

また、砲撃が原発の設備を傷つけ、放射線物質が漏れ出すおそれが指摘されている。

その上で調査員たちは、原発への電気供給のシステムに影響を及ぼしかねないあらゆる戦闘行為を停止するよう要請した。

報告書には、ザポリッジャ原発が3月4日からロシア軍に支配されており、現在1つの電源ユニットしか稼働しておらず、その他は整備中か、「冷却停止」中だと書かれている。

IAEAは、調査員が原子炉施設の近くでの火砲砲撃による損傷、とりわけ、放射線廃棄物保管庫が破壊の危機にさらされていることを観察したと伝えた。

報告書には、「継続している砲撃は、まだ非常放射線状況をもたらすには至っていないものの、それら砲撃は放射線セキュリティへと恒常的な脅威をもたらし、重要機能へと潜在的な影響をもたらすおそれがある」とし、安全面で甚大な意味を持つ結果をもたらすおそれがあると指摘されている。

IAEAはまた、原発への砲撃を速やかに停止するよう要請している。報告書には、「IAEAは、原発と関連施設へのあらゆるさらなる損傷を避けるべく、現地及びその周辺での砲撃を速やかに停止するよう勧告する。それは、従事する人員の安全と安全かつ理想的な作業へのサポートのために不可欠である。それは、核安全圏・ザポリッジャ原発周辺安全圏の確立についての全ての関係者による同意を求めるものである」と書かれている。

また、IAEAは、ザポリッジャ原発への複数回の送電停止事例を喚起した上で、同原発への障害のない電力供給の組織が不可欠だと指摘した。

さらに報告書には、ウクライナ国内の南ウクライナ原発とフメリニツィキー原発へのロシアの巡航ミサイルの飛来、キーウ市内の国営企業「ラドン」の外部放射線管理システムの」損傷、ハルキウ物理技術研究所の「中性子線源装置」への砲撃といった、ウクライナの核関連施設における安全状況に関しても記述されている。

その上でIAEAは、ウクライナに対して、同国の各関連施設のロシアとの戦時下、及び戦後の安全を保障すべく、あらゆる必要な支援を提供していくと伝えている。

これに先立ち、9月1日、グロッシーIAEA事務局長率いるIAEA調査団がロシアの占拠するザポリッジャ原子力発電所を調査訪問していた。