大統領府とG7大使、ウクライナの裁判改革を議論

アンドリー・イェルマーク大統領府長官は9月30日、G7大使ウクライナ・サポート・グループと会談し、ウクライナの裁判改革の履行状況について協議を行った。

大統領府広報室が伝えた

イェルマーク長官は、裁判改革の実施はゼレンシキー大統領とそのチームの優先課題であると繰り返し、「私は、私たちの目的は同じ、透明で公正で正義のある裁判制度をウクライナに作りたいということだと確信している。そして、私たちがオープンかつ正直に話し合わず、あらゆる問題を同意見の人々、ウクライナの友人たちと決めなければ、その実現は不可能である」と発言した。

同氏は、G7大使の参加する会合は、技術的レベルの会合と同様に、定期的に行われるべきだとの考えを示した。

また同氏は、国際パートナーとウクライナ裁判官評議会が高等裁判官選考委員会のメンバーを選ぶ、選考委員会の委員候補を提出したことに謝意を伝え、同委員会がまもなく活動を開始することへの期待を表明した。

他方で、高等司法評議会のメンバーの専門倫理と公正さの基準を調査する「倫理評議会」のメンバー候補者を裁判官評議会が提出していない問題については、最高会議のヨヌシャス司法行政委員長が、候補者選出のテンポが社会の期待とも、大統領と議会の提案とも合っていないとコメントした。

ヨヌシャス委員長は、ウクライナ裁判官評議会が倫理評議会の候補者3名を決めていないことを指摘し、司法行政が候補者を選べない場合は、最高会議がその問題に対応しなければならなくなると発言した。また同委員長は、欧州評議会の法による民主主義のための欧州委員会(ベニス委員会)のブキッキオ委員長が、倫理評議会の候補者選出を遅らせる行為はいかなるものも控えるよう呼びかけたことを喚起した。

シモンス駐ウクライナ英大使は、裁判改革実施プロセスは加速しなければならないと発言した。

ウクライナ裁判評議会のモニチ議長は、同評議会は法の要件履行に向けて進み続けていると発言した。

また同会合について、10月1日、G7大使ウクライナ・サポート・グループもツイッター・アカウントにてコメントを公開している

大使たちは、「ウクライナの包括的裁判改革を支持し続ける」とし、「昨日の大統領府が主催した議論にて、大使たちは、裁判官評議会に対し、高等司法評議会の倫理評議会の候補者を可能な限り速やかに提出するよう求めていることを繰り返した」と強調した。

さらに大使たちは、ウクライナの能力があり、公正な裁判官と法律専門家が倫理評議会候補者募集に応募し、「この歴史的な改革」における国際専門家との共同作業に加わるよう呼びかけた。大使たちは、それが理想的で効果的な司法制度を作り出すことを助けることになると指摘した。

これに先立ち、8月3日、ゼレンシキー大統領は、裁判改革を実現するための重要法とされる、高等裁判官選考委員会再編法(第3711ーd)と、高等司法評議会再編法(第5068)に署名し、発効させていた。両法は、国際専門家を参加させた上でのウクライナ司法政権の人員刷新を定めている。

とりわけ、高等司法評議会再編法は、高等司法評議会のメンバーの公正性の調査手続きを定め、また裁判官に対する懲罰手続きも変更するものとなっている。「高等司法評議会」とは、裁判官の任命や、裁判官への懲罰、解任を最終的に決定する、司法システム上の重要機関である。同法は、「倫理評議会」の設置を定めており、同評議会は、ウクライナ裁判官評議会が定める裁判官あるいは退官裁判官から計3名と、国際機関が定める3名(国際専門家)の計6名で構成される。この際、倫理評議会では、「公正選考委員会」同様、国際専門家が決定的投票権を得る。

この倫理評議会は、高等司法評議会のメンバー候補の専門倫理と公正さの基準を調査、及び評議会設立後3か月以内に高等司法評議会現職メンバーの専門倫理と公正さの基準を調査する。倫理評議会は、評価に応じて現職メンバーの解任勧告を行うことができる。

すでに、EU、欧米諸国などが同法に従い、「国際専門家」をウクライナ側に提案しているが、しかし、9月13日、ウクライナ裁判官評議会側は、倫理評議会への自らの代表者を送ることを拒否。9月21日、裁判官評議会は、10月21日までの候補者募集の開始を発表していた。これに対し、G7大使ウクライナ・サポート・グループは、ウクライナ裁判官評議会に対して、「倫理評議会」のメンバー候補者の選出を急ぐよう要請していた