EU、クリミア占領7年に合わせ声明発出

ジョゼップ・ボレル欧州連合(EU)外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長は、ロシアによるウクライナ領クリミア占領開始7年に合わせ、EU全27加盟国を代表し、占領国を非難する声明を公開した。

25日、欧州理事会ウェブサイトに声明が掲載された

声明には、「ロシア連邦によるクリミア自治共和国とセヴァストーポリ市の暴力的で違法な併合から7年が経つ中で、EUは、ウクライナの国際社会に認められた国境内での主権と領土一体性を一貫して防衛している。EUは、その国際法違反を認めないこと、非難し続けていることをもう一度繰り返す。それは、国際安全保障にとっての直接的脅威であり続けており、全ての国の領土一体性、統一、主権を守る国際法秩序にとって甚大な影響を及ぼすものである」と書かれている。

EUは、国際場裏にて制限措置をとることによってクリミア違法併合不承認政策を実現していると喚起した他、国連加盟国に対して、2014年3月27日付国連総会決議第68/262に従って、類似のクリミア併合不承認方策をとることを検討するよう要請している。

また、EUは、同様にロシア連邦によるクリミア半島内での「選挙」の実施も認めていないし、今後も認めないと指摘した。

さらに声明には、ロシア連邦が多くの軍事演習実施、軍艦の建造を含め、クリミアの軍事化を強めているとし、それが黒海地域の安全保障状況へ悪影響を及ぼしていると指摘した。声明には、「国際人道法に違反する形で、ロシアは、クリミア住民へ国籍を押し付け、自国軍への徴兵を実施している」と喚起されている。

EUはまた、2018年11月25日にロシアがウクライナに対して正当化できない軍事力を行使したこと(編集注:ケルチ海峡近くでのウクライナ艦船だ捕事件)を喚起し、クリミア占領が地域全体の安定性に悪影響を及ぼしていると指摘した。さらに声明には、ロシア連邦は、自国民を占領下クリミアに移住させることによってクリミアの人口構成を変更することをやめなければならないと強調されている。

EUはまた、ウクライナの同意のないケルチ海峡の橋の建設・鉄道網開通を非難した。声明には、「これらの行為は、違法併合した半島のロシアへの強制統合のさらなる試みであり、ウクライナの主権と領土一体性へのさらなる侵害である。EUは、ロシアが国際法に従ってケルチ海峡・アゾフ海間の全ての船の障害のない自由な双方向航行を保障することを期待する。そのような航行への違法な制限は現在まで続いており、これもまたウクライナのアゾフ海沿岸の港と地域全体の経済状況に否定的影響を及ぼしている」と強調されている。

声明にはさらに、ロシアによる占領が始まってからクリミアの人権状況が著しく悪化したと書かれている。EUは、2021年1月14日付欧州人権裁判所の判決をもとに、ロシアに対して、国際人道法、国際人権基準、2020年12月16日付国連総会決議第75/192をはじめとする関連国連総会決議を完全に遵守するよう要請した。

声明には、「半島の住民は、表現の自由、信仰の自由、結社参加の自由、平和的集会の自由といった基本的人権の体系的制限が行われている。記者、人権保護者、弁護士は脅迫と活動への介入を受けている。クリミア・タタール人は、受け入れられない迫害、弾圧の対象となっており、自らの権利を著しく侵害されている」と書かれている。

EUは、占領政権に対して、占領により脅威にさらされているクリミア・タタール人、ウクライナ人、その他のクリミアの民族・宗教グループに対して自らの文化、教育、アイデンティティ、文化遺産の伝統を維持・発展するための可能性を付与するよう要請した。また、考古学的財産や芸術品、博物館・歴史記念碑の展示物といった文化遺産破壊を目的とした活動の停止をしなければならないと強調されている。

またEUは、2020年12月16日付国連総会決議第75/192が、人権監視の地域・国際メカニズムや、人権保護NGOにクリミアへの障害のないアクセスを与えることを極めて重要だと定めていることを喚起した。

EUは、強制失踪、拷問、殺人、暴力、政治的動機の追訴、差別、嫌がらせといった人権侵害違反・犯罪の未解明の事例が徹底して捜査されねばならないと呼びかかけた。さらに、エミル=ウセイン・クク氏、オレフ・プリホジコ氏、エンヴェル・オメロフ氏、リザ・オメロフ氏、アイデル・ジャパロフ氏を含む、国際法に違反する形でクリミアにて拘束・投獄された全ての人物の速やかな解放が要請されている。

声明には、クリミア・タタール民族代表機関「メジュリス」の活動禁止が受け入れられないことが強調されている他、ロシアは、占領によって著しく悪化している環境状況の改善方策をとるべきと指摘されている。

さらに声明では、「EUは、国際社会が認めた国境内でのウクライナの主権と領土一体性の回復を目的とする外交努力を歓迎しており、ウクライナによるその方面での具体的提案を現存の不承認政策との一貫性に照らした上で検討している。この声明は、2021年2月26日にウクライナにて迎えられる、クリミア・セヴァストーポリ市のロシア連邦による違法併合から7年目に合わせて発出されたものである」と書かれている。