世界は破壊の時代に入った=ミュンヘン安保会議報告書
ミュンヘン安全保障会議は、世界は、段階的な改革や政策の修正よりも、既存の制度やルールの破壊がますます優位となる時代に突入したと表明した。
9日に公開されたミュンヘン安全保障会議の年次報告書に書かれている。今年の報告書は「破壊の途上」と題されている。
報告書には冒頭で、「世界は『鉄球』政治の時代に入った。入念な改革や方針の修正ではなく、容赦ない破壊が現在の潮流となっている。既存の秩序の制約から自国を解放し、より強く繁栄した国家を再建すると公約する者の中で最も顕著なのが、現在の米国政権である。その結果、(中略)1945年以降の米国主導の国際秩序は、今や破壊されている」と書かれている。
また、多くの西側社会において、既存の制度を改革する代わりに破壊することを好む政治勢力への支持が高まっていると指摘されている。こうした傾向は、民主主義的なメカニズムの機能に対する失望、効果的な改革の可能性に対する信頼の喪失、そして政治的・法的構造が過度に官僚化し、適応能力を失ったという確信に起因していると主張されている。
また、「ミュンヘン安全保障指数2026」のデータによれば、全てのG7諸国において、現政府の政策が次世代の生活をより良くすると考えている回答者はごくわずかであったとあり、こうした文脈において、統治に対して「ブルドーザー」的なアプローチを用いる政治家たちは、批判的にではなく、むしろ慎重ながらも肯定的に受け止められることが増えているとある。
その他報告書では、米国の外交方針の変化が欧州に及ぼす影響に特別な注意が払われている。ロシアによる対ウクライナ侵略と、欧州におけるハイブリッド作戦の強化を背景に、安全の保証者としての米国の役割が漸次縮小していることが、欧州大陸における不確実性を著しく高めていると指摘されている。
欧州の安全保障に対する米国のアプローチは、現在、不安定で矛盾したものと認識されており、支持の明言、条件の提示、そして直接的な圧力の間を揺れ動いていると記述されている。報告の執筆者らは、米国のトランプ第2次政権が「欧州大陸の防衛とウクライナへの支援は、何よりも欧州の責任であることを明確にした」と強調している。同時に、米国が離脱の速度と規模、そして安心供与、条件付け、強要の間で揺れる欧州安全保障への全体的なアプローチについて、「混迷したシグナル」を送っていると説明されている。
報告書ではさらに、この不確実性が「心理的に欧州人を、否認と受容の間の罠に追い込んでいる」と指摘されている。欧州諸国は、米国を欧州の安全保障秩序に留め置こうと努めつつ、「状況のいかんに関わらず、米国が離脱する未来への準備という、より困難な課題を先送りにしてきた」とある。
さらに報告書は、ロシアが依然として欧州及びNATOの安全保障にとって「最も重大かつ直接的な脅威」であると強調している。ロシアによるウクライナへの全面侵攻は「欧州の協調的安全保障構造を破壊」し、領土一体性の規範を「第二次世界大戦終結以来、最も脅威的かつ明白な形で」侵害したとある。そして、5年目に入る露宇戦争は「新たなレベルの残虐性と暴力」に達しており、ロシアは前線の一部で戦術的なイニシアティブを取り戻しつつあると評価されている。
また、ロシアが欧州でハイブリッド活動を増強させていることにも焦点が当てられており、破壊工作、放火、サイバー攻撃、スパイ活動、領空侵犯などの件数が増加していることが喚起されている。執筆者らは、こうした行為はしばしば意図的に曖昧に保たれているとし、ロシアは直接的な責任を回避しながら、「心理的な圧力を加え、政治的な麻痺を引き起こしている」という。
これらの脅威を背景に、「ワシントンの段階的な撤退、揺らぐウクライナ支援、そしてグリーンランドに関する威嚇的なレトリック」が、欧州の不安感を増幅させていると指摘されている。米国の欧州安全保障へのアプローチは現在不確実だと認識されており、信頼できる同盟国としての米国への信頼は著しく低下したとある。複数の欧州諸国において、世論調査の際に、回答者の2分の1から3分の2が、米国を「NATOの中で以前より信頼できないメンバー」だとみなしているという。
また、米国が安全保障政策と経済的利益をますます密接に結びつけており、事実上、米国の安全の保証へのアクセスをより条件付きのものにしているとも指摘されている。一方で欧州は、国防費が増加しているにもかかわらず、依然として米国の兵器や技術に大きく依存しており、それが「真の自律性の形成ではなく、依存を定着させている」と記述されている。
執筆者らは、欧州が「長期的な対立の時代」に入ったと結論づけ、安全保障の「消費者」から「供給者」の役割へと移行しなければならないと結論付けている。そのためには、国防予算の安定的な増額だけでなく、共通の優先課題の調整、独自の防衛産業の開発、文民の即応態勢の強化、そしてハイブリッド脅威への体系的な対抗が必要だと主張されている。
報告書には、「欧州が米国を絶対的な安全の保証者として頼ることができた時代は終わった。欧州の指導者たちはこの現実を受け入れ、それに応じた行動をとらなければならない」と強調されている。
さらに、これ以上の遅れは欧州大陸を「競合する勢力圏の間のグレーゾーン」にし、自らの未来を独自に形成する能力を徐々に損なわせるおそれがあると警鐘を鳴らしている。
なお、今年のミュンヘン安全保障会議は、2月13〜15日に開催される。
写真:ミュンヘン安全保障会議