ロシアにとって対ウクライナ戦争はNATO崩壊戦略の一部=仏参謀総長

フランスのティエリー・ビュルカール軍参謀総長は11日、ロシアの対ウクライナ戦争は、単なる地政学的な紛争ではなく、クレムリンによる欧州弱体化とNATO崩壊の戦略的試みだと述べた。そして同氏は、だからこそ、米国の関与の水準とは関係なく、欧州はロシアの脅威への対応を準備せねばならないと指摘した。

ビュルカール参謀総長が記者会見時に発言した。ウクルインフォルムの特派員が伝えた。

ビュルカール氏は、「ロシアにとって、ウクライナでの戦争は生き残りの問題であり、欧州を弱体化させ、NATOを崩壊させる戦略の一部である。モスクワが戦争経済を続けている限り、その戦闘能力は失われないだろう。私たちはよく、ウクライナの敗北は西側諸国の敗北だと言う。しかし、米国の立場の変化を考えると、それはそれ以上のことだと私は思っている。なぜなら、その敗北は欧州の真の敗北のように映るだろうからだ。そして、私たち欧州人は、その全ての悪影響を身をもって感じることになるだろう」と述べた。

また同氏は、だからこそウクライナは必ず守られねばならず、敵に「欧州の反撃」を与えるべきだと指摘した。

同氏はその際、「この問題において、米国との繋がりを維持する必要性を考慮した上でなお、欧州は独立して行動すべきである。米国人は、いずれにせよ、彼ら自身の関与は間違いなく低下することを認めている。そして、私は、米国の完全な撤退を恐れてはいない。それは彼らの利益にはならないが、欧州にとっては、喫緊の課題なのは自分たちの防衛能力を増強することなのだ」と彼は強調した。

同氏はまた、10日に英首相と仏大統領が「有志連合」でこの問題を協議したと述べ、フランスと英国が設立した調整センターと両国が定めた行動には「展望がある」と指摘した。同時に同氏は、その詳細についてはこれ以上語らなかった。

さらに同氏は、「考えてみて欲しい! 5年前、私たちはある国が別の国に300弾のミサイルを発射し、そして私たちに『何も恐れることはない、大半は迎撃された』と言うようなことを普通だと思っていただろうか? 実際は、これは非常に深刻なことだ。これは正常ではない。5年前、私たちは民間船に艦対艦ミサイルが発射されることを普通だと思っていただろうか? それもまた普通ではない。毎日数百人、時には数千人が命を落とす地上戦が行われることを想像できただろうか? それも普通ではない。しかし同時に、それこそが現代の世界の状態を特徴づけているのだ」と発言した。

同氏は加えて、暴力や「ロシアが見せている戦争のルーティーン」に慣れてはならないと呼びかけ、ロシアの目的は、ウクライナを破壊するだけでなく、西側諸国を倫理的に鈍感にするプロセスに引き込むことだと指摘した。

同氏は、「最も重要なのは、ロシアの脅威が現実的で、恒常的で、構造的であると認識することである。私たちは、この頑固で妥協をしない、現代の戦略的状況において、決定的な役割を果たす敵に対して、最大の警戒を維持しなければならない」と訴えた。その上で同氏は、欧州の連帯、防衛能力、米国への依存度を下げつつも緊密に連携することが、反撃の「中核」となると形容した。

写真:NATO Defense College(フェイスブック)