ゼレンシキー宇大統領の日本の国会での演説全文

ウクライナのゼレンシキー大統領は23日、日本の国会にて演説を行なった。

ウクライナ大統領府広報室が公開したゼレンシキー大統領の演説のウクルインフォルムによる仮訳は以下のとおり。


親愛なる細田議長、山東議長、岸田首相、日本の国会議員の皆さん!

そして親愛なる日本の人々よ!

私、ウクライナ大統領にとって、日本の議会の歴史で初めてあなた方に呼びかけられることは、大変な光栄である。

私たちの首都は、8193キロメートル離れている。平均すれば飛行機で15時間だ。ルートによって異なる。しかし、私たちの自由の感覚の間には、どのような距離があろうか? 私たちの生きることを望む気持ちの間には? 私たちの平和を望む気持ちの間に距離があるだろうか?

2月24日、私は、その距離を全く目にしなかった。私たちの首都の間には、1ミリの距離すらも。私たちの気持ちの間には1秒の距離もなかったのだ。なぜなら、あなた方が私たちのところにすぐに支援に駆けつけてくれたからだ。私は、そのことにつきあなた方に感謝している。

ロシアが、ウクライナ全土の平和を破壊した時、私たちはすぐに、世界が本当はどんな姿なのかを目にした。世界が本当に戦争に反対している様子を。世界が本当に自由を支持していることを。世界が本当にグローバルな安全保障を支持していることを。世界が本当に一つ一つの社会の調和ある発展を支持していることを。日本は、アジアにおいて、そのような立場のリーダーとなった。あなた方は、このロシア連邦が始めた残酷な戦争を止めるために、すぐに活動を開始した。あなた方は、ウクライナにおける、つまり欧州における平和達成のためにすぐに活動を開始した。そして、それは本当に重要なことなのだ。地球上の一人一人にとって重要なことなのだ。なぜなら、ウクライナの平和がなければ、世界中の誰一人として、確信を持って未来を見ることができなくなるのだから。

あなた方一人一人が、チョルノービリ(チェルノブイリ)とは何かを知っているだろう。1986年に大きな爆発の生じたウクライナの原子力発電所だ。放射線が漏洩した。それは、地球上の様々な場所に影響をもたらした。チョルノービル原子力発電所周辺30キロメートル圏は封鎖されている。そこは危険だ。封鎖区域を満たす森には、発電所の爆発被害を除去していた時から、何千トンもの冷やされている使用済み燃料、破片、機材がある。地上に。

2月24日、その地に、放射性降下物を空気中に巻き上げながら、ロシアの装甲車がやってきた。チョルノービリ発電所は制圧された。力で、武力で。想像して欲しい。事故のあった原子力発電所が制圧されたのだ。破壊された原子炉を覆うシェルターが。稼働中の使用済み燃料保管庫が。ロシアは、この場所を戦争の舞台に変えたのだ。30キロメートル圏の封鎖空間を、ロシアは、私たちの防衛軍に対する新たな攻撃の準備のために利用しているのだ。

ロシア軍のウクライナ領への侵入後、彼らがチョルノービリの大地にもたらした被害、どの冷却設備が損傷したのか、放射性降下物が地球にどのように拡散したのかを分析するには何年もかかる。

皆さん!

私たちの国土には、4つの原子力発電所が稼働している! 15個の原子炉だ。それら全てが脅威にさらされている。ロシア軍はすでに、欧州最大のザポリッジャ原子力発電所を戦車で砲撃した。戦闘行為の結果、何百もの産業生産施設が被害を受けており、その多くが特別に危険な場所だ。攻撃は、ガス・石炭パイプラインや炭鉱にも脅威をもたらしている。

先日、ロシア軍は、ウクライナのスーミ州の化学製造所も攻撃した。そこでアンモニアが流出した。私たちは、化学兵器の攻撃の可能性があるとの警告を受けている。特に、シリアで使われたことのあるサリンによるものだ。

世界の政治家たちの議論の主要なテーマの一つは、もしロシアが核兵器を使った場合、どう対応するかという話になった。世界における全ての人、全ての国のあらゆる確信が、完全に破壊された。

私たちの軍人は、すでに28日間、ウクライナを英雄的に守っている。28日間、世界で最大の規模を持つ国から、全面的な侵攻を受けている。しかし、その国は能力面では最大ではない。さらに、影響力も最大ではない。そして、倫理面では最小である。

ロシアは、ウクライナの平和な町に対して、ミサイルを1000発以上放ち、数えられない数の空爆を行った。ロシア軍は、何十もの私たちの町を破壊した。いくつかは完全に燃やし尽くしてしまった。ロシアの占領の被害を受けている多くの町や村では、人々は殺された親族、友人、隣人を尊厳を持って埋葬することもできていない。破壊された建物の中庭や、道路の横や、単にそれが可能だという場所に、埋葬せざるを得なくなっているのだ…。

何千の人が殺された。その内、121名が子供だ。

約900万人のウクライナ国民が、ロシア軍から身を守るために、仕方なく家を、自分のふるさとを去っている。私たちの「北方領土」「東方領土」「南方領土」が空っぽとなっている。人々がその死の脅威から逃げているからだ。

ロシアは、私たちの海へのアクセスすら封鎖した。普通の貿易手段をだ。そうすることで、他の潜在的な世界の侵略者に対して、航海を封鎖することで、自由な民に圧力をかけられることを示したのだ。

皆さん!

ウクライナとパートナー国と私たちの反戦連合は現在、世界の安全が最終的に破壊されてしまわないようにするための、保証を与えることができる。世界に人々の自由のための支えが存在し続けるための保証だ。人々と社会における多様性を保存するための支えだ。国境を守るための。私たちや、私たちの子供、私たちの孫のために、今後も平和が存在し続けるという確信のための。

あなた方は、国際機構が機能していないことを目にしているだろう。国連や安保理すらもだ。彼らは何ができるのだろうか? 彼らは、改革が必要である。正直さの注入が必要だ。効果的になるために。議論するだけでなく、本当に問題を解決し、本当に影響力を行使できるようになるために。

ロシアの対ウクライナ戦争によって、世界は不安定化した。世界は、多くの新しい危機の入り口に立っている。明日がどうなるか、誰が今確実に理解しているだろうか?

世界市場の大荒れは、食料輸入に依存する全ての国に問題をもたらしている。環境面と食料面の挑戦は、過去に例のない水準だ。重要なことは、現在、戦争を起こすことで強力な罰が生じ、戦争は始めるべきではない、平和を破壊すべきでないということを、地球上の全ての侵略者、明らかな侵略者にも潜在的侵略者にも、確信させられるかどうかにある。責任ある国家が平和保護のために団結することは、完全に論理的で正しいことである。

私は、あなた方の国がこのような歴史的瞬間に原則的な立場を取ったこと、そしてウクライナへの真の支援を与えてくれていることに感謝している。あなた方は、平和を回復するために、アジアで最初に、ロシアへの真に強力な圧力をかけ始め、対露制裁を支持した。私は、あなた方に、制裁を続けるよう呼びかける。

そして、状況を安定させ、ロシアに平和を探させ、私たちの国、ウクライナへの残酷な侵攻の津波を止めさせるべく、あなたのパートナーであるアジアの国々の努力をまとめるよう呼びかける。ロシアへの禁輸が必要だ。ロシア軍にお金が行かないように、ロシア市場から企業を去らせねばならない。私たちの国、ロシア軍を止める私たちの防衛者、私たちの戦士への更なる支援が必要だ。そして、ウクライナの復興についても、もう今考え始めなければいけない。ロシアによって破壊された町々や、ロシアによって荒らされた領土に生活を取り戻すために。

人々は、これまで暮らしていた場所に戻らなければならない。彼らが育った場所に。彼らが、そこが自分の家だと感じる場所に。自分の小さなふるさとに。私は、あなた方はこの感覚を理解していると確信している。自分のふるさとへ戻らなければ、という気持ちを。

私たちは、新たな安全保障を作らねばならない。平和にとっての脅威が生じる度に、予防的に毎回強固に機能するように。

現存の国際機構を基盤にそれが可能だろうか? このような戦争の後では、絶対無理だ。新しい機構を創設しなければならない。新しい保証を。あらゆる侵略に対して予防的かつ強力に機能する保証だ。日本のリーダーシップは、その創設において不可欠となるかもしれない。ウクライナにとって、世界にとっての。私は、あなたにそれを提案する。

世界がもう一度、明日がどういう日となるかについて確信を抱けるように。明日が訪れることへの確信、明日が安定し、平和なものとなることへの確信だ。私たちにとって、将来の世代にとっての明日への確信である。

皆さん!

日本の人々よ!

私たちは、あなた方と一緒なら、多くのことを行うことができる。想像するよりもずっと多くのことをだ。

私は、あなた方にどれだけ急速な成長の歴史があったかを知っている。あなた方が調和を築き、それを守ることにどれだけ長けているかを知っている。あなた方が、どれだけ原則を守り、生活を大切にしているか、環境を守っているかについても。それらの根っこは、あなた方の文化にある。ウクライナ人が心から愛しているあなた方の文化だ。私は、単に上辺だけでこのように話しているのではない。本当にそうなのだ。

2019年、ちょうど1年半前、私がウクライナ大統領になると、私の妻オレーナは視力の不自由な子供のためのプロジェクトに参加した。そのプロジェクトは、オーディオブックを作るプロジェクトだ。彼女は、日本の昔話を読んだ。ウクライナ語でだ。なぜなら、その昔話は、私たちにも子供たちにもわかりやすかったからだ(編集注:「桃太郎」と「二ひきのかえる」)。そのことは私たちのウクライナの人々のあなた方の築き上げた物への大きな関心の海における、たった一滴に過ぎない。

価値の面で、私たちとあなたたちは似ている。私たちの国の間にどんなに大きな距離があろうとも。いや、その距離は実は存在していない。なぜなら、私たちの間には、心の中に同じようにぬくもりがあるからだ。共通の努力のおかげ、ロシアに対するさらに強い圧力のおかげで、私たちは平和へ辿り着ける。そして、私たちの国を再建することができる。国際機関を改革することができる。

私は、その時も、今と同じように、日本が私たちと一緒にいてくれていることを確信している。この決定的な時の、私たち全員のための、反戦連合の中にて。

ジャークユ! ありがとうございます!

ウクライナに栄光あれ! 日本に栄光あれ!