専門家、トランプ米政権による国際刑事裁判所に対する制裁のウクライナでの戦争犯罪捜査への影響を説明
エリス氏が、ハーグのウクルインフォルム特派員にコメントを提供した。
エリス氏は、「制裁が科されるかどうかは、実際には誰も確実には知らないが、しかし、私はおそらく科されるだろうと推測している。これはトランプ政権が、ICCの体現する国際司法に対して行える最後の大きな一歩だと思っている。つまり、それは起こるだろうと私は疑っている。彼らは、裁判所のいかなる活動にも全く関心がない。そして、イスラエル・パレスチナの紛争とは関係のない他の事件での裁判所の仕事を犠牲にするだろうと思う。それはプーチン氏に対する起訴にも当てはまる。しかし、たとえそうであっても、トランプ政権が裁判所を支援するようになるとは思わない。その立場はこれまで通り、「私たちはICCを支持しないし、存在すべきではないと考えている」というものであり続ける。だからこそ、私は結局のところ制裁は科されるだろうと考えている」との見方を示した。
同時に同氏は、制裁を科されてもICCは消滅しないだろうと述べた。
同氏はその際、「いいえ、米国の制裁下であっても、ICCが消滅するとは思わない。ローマ規程の参加国は120か国以上ある。問題は、これらの諸国が団結し、これらの制裁に対抗するために必要な支援を同裁判所に提供できるかどうかということだ。制裁は影響を及ぼし、ICCが持つ国際的な相互作用のために、裁判所の活動を複雑にするだろう。しかし、私はICCは存続し、消滅しないと考えている。活動を続け、その仕事を果たすだろう。したがって、これがプーチン氏に対する起訴や裁判所が扱っている他の事件に影響を与えるとは思わない。プーチン氏がウクライナで行ったこと、行っていることに関して、新たな起訴が生じるだろうし、将来的には、私が起訴されるだろうと考えている他の人々に対しても、あるだろうと推測している」と述べた。
同氏はまた、現在トランプ米政権から深刻な批判と潜在的な制裁を受けるICCとは異なり、侵略犯罪を扱う特別法廷は公の攻撃の対象になっていないと指摘した。同氏は、「私たちは特別法廷に対するいかなる攻撃も目にしていない。トランプ政権はこの問題について非常に控えめだ。それはポジティブな点だと見なせる。全面的な攻撃を受けているICCとは異なり、特別法廷はそのような批判にさらされていないのだ。その沈黙は非常に重要だ」と述べた。
そして、エリス氏は特別法廷の仕事の重要性につき説明しつつ、「平和的情勢解決への動きが始まった場合、法廷が犠牲にされるのだろうか、という考えがある。そして、法廷の活動を開始することがいかに重要か、である。なぜなら、特別法廷が既に立ち上げられ、機能しているなら、将来のいかなる交渉の際にも、それを議題から外すことは極めて難しくなるからだ。だからこそ、法廷を立ち上げ、機能させることが極めて重要なのだ。そうすれば、法廷が廃止される可能性を生むいかなるシナリオも著しく困難となるだろう」と指摘した。
同時に同氏は、侵略犯罪を扱う特別法廷の正確な開始日はわからないと述べた。同氏はまた、法廷が設置される可能性と論理のある場所は、国際司法の非公式中心地であるオランダのハーグであろうと述べた。
同氏はその際、「これは単なる推測だが、私の直感ではハーグになるだろうと考えている。ハーグは既に国際法の世界的中心地となっているので、自然な場所だ。そして、もしそうでなければ、私はがっかりするだろう。法廷がいつ活動を開始するかについては、断言するのは難しい。欧州評議会で使われている拡大部分協定の仕組みは、独特かつ、かなり複雑だ。諸国が経ねばならない中間的な措置が多くある。当初は来年の初めに法廷が活動を開始することが期待されていたが、そうはならないと思う。したがって、おそらく来年の終わりだろう。このような裁判所を設立するには、時間、リソース、努力が必要だ。しかし、重要なのは、プロセスが前進し、諸国が参加することだ。それが最重要だ」と強調した。
さらに同氏は、「侵略犯罪」の被害者を認定する問題に、特に注意が払われていると指摘した。同氏は、通常の「戦争犯罪」に関する事件とは異なり、「侵略」は国全体を対象にし、全国民に影響を与える犯罪だからだと説明した。
その際同氏は、「同犯罪(編集注:侵略犯罪)は全ての人々に影響を与えた。そして、裁判所がこれらの定義をどのように定め、構成するかを目にするのは興味深いものとなるだろう。例えば、誰が被害者として認定されるのだろうか? 私たちは、(特別)法廷の『規程』が被害者の代表の存在を想定していることを既に知っている。(中略)それは非常にポジティブなことだ。しかし、大半の問題はまだ解決されておらず、法廷が活動を開始した時に、法廷自身がそれに対処することになる。『規程』は、誰が被害者であるかを定義していない。それは裁判所の任務となる。裁判所の裁量に委ねられている問題があり、裁判官が決定を下す必要がある。しかし、これは珍しいことではなく、全ての国際法廷が全く同じプロセスを経験してきたものだ」と語った。