正反対の見方の米露首脳会談

正反対の見方の米露首脳会談

ウクルインフォルム
米露首脳会談に向けて、プーチン露大統領は「殺人者」のレッテルを剥がしたいと考えているのに対し、バイデン米大統領はロシアによる情勢不安定化を止めるよう説得しようとしている。

執筆:ヤロスラウ・ドウホポル(ワシントン)

バイデン・プーチン米露首脳会談が2週間後に迫る中、最近、ロシア外務省は突然、両国の議題は全く一致しないものの、米国側の意見を甘んじて聞く準備があるとする発表を行なった。同時に、ロシア国防省は、北大西洋条約機構(NATO)勢力との対抗強化のために、ロシア西部に約20の部隊を編成する意向を発表した。

ロシア政権が、米国との接近に関心がないことは驚くべきことではない。米国とロシアの目的は、全くもって異なっているのであり、米国が安定性と予見可能性を求めているのに対して、ロシアは、ウクライナ、シリア、中近東、米国やNATOにおける不安定化をこそ求めているからだ。そのような状況下、私たちは、バイデンとプーチンの会談から何を期待することができるだろうか。

「不快なシグナル」を準備するロシア

米国とロシアは、4月中旬、バイデン氏がプーチン氏に会談を提案した時に首脳会談に向けた準備を始めている。バイデン氏は、プーチン氏を殺人者と呼んだが、それにもかかわらず、会談の提案を行った。バイデン氏は、ロシアがウクライナ国境付近と占領下クリミアに何万もの軍を展開し、新たな戦争の大きな脅威を生み出す中で、あえて自らを抑え、その殺人者と協議を行うことに同意したのだ。そうすることでバイデン氏は、少なくとも会談までの期間、緊張のレベルを一時的に下げることに成功している。

その後、米露双方は、首脳会談に向けた準備を始めた。5月には、ブリンケン米国務長官とラヴロフ露外相や、サリヴァン安全保障担当大統領補佐官とパトルシェフ露安保会議書記の接触もあった。両国は、首脳会談に向けて議題を調整していた。…ロシアが声明を出して、その準備を妨害し出すまでは。

6月1日、ロシア外務省のセルゲイ・リャブコフ次官は、両国の議題は全く一致していないと発言した。同次官はまた、今後数日、米国はロシア連邦から多くの「不快なシグナル」が届くことを想定すべきだとも述べた。また同時に、セルゲイ・ショイグ露国防相は、西部軍管区にて約20の新しい部隊編成を行う意向があると発表した。ロシア側は、このような形で、バイデン米大統領による最近のロシア国内の人権状況に関する発言に不満を抱いていることを伝えたのである。

最近のバイデン氏の発言とは、5月30日のものだ。バイデン氏は、「私は、数週間後、ジュネーブにて、プーチン大統領と会い、私たちは人権侵害を傍観するつもりはないことを彼に明確にする」と述べた。バイデン氏はまた、米国は平等の理想の上に建国されたのであり、人権侵害を目にした際には、はっきりと物を言う義務がある、と強調している。

言い換えれば、バイデン氏は、米国はロシアを含む世界中の文明的な権利と自由を維持するという一貫した立場を繰り返したのだけである。そして、それはバイデン氏がこれまで繰り返し述べてきたことだ。とすると、なぜ今回ロシアはそのような「申し入れ」をしたのだろうか。

写真:Official White House
写真:Official White House

米露の動機の違い

その答えへの鍵は、プーチン氏の個人的動機の中に見出すと良い。プーチン氏は、バイデン氏との会談を、極めて重要なものと見ている。その理由は、第一に、プーチン氏には、今年の秋の国家院選挙を前に、自らの「統一ロシア」党のイメージを救う必要があるのであり、バイデン氏との映像はプーチン氏を映すロシアのテレビ局にとっての最高の宣伝となるからだ。ロシアのプロパガンダ拡散者たちは、間違いなく、プーチン氏に貼られた「殺人者」のレッテルを剥がそうとし、同氏を米大統領と同等の影響力と可能性を持つ「対等のリーダー」として描こうとするだろう。

第二に、ロシア政権は、首脳会談開催の提案を、プーチン氏が国際政治場裏にて自らの価値をもう一度見せつけられる場とすることを可能とする、バイデン氏からの太っ腹な褒美だとみなしていることだ。ロシアからすれば、今回の提案は、バイデン大統領本人が、どうもロシア大統領と何かしらの合意をしたがっているようだ、という具合に映るのだ。

とすれば、先日のロシア外務次官による、ロシアは首脳会談に関心がないかのような発言や、ロシア国防相による部隊編成に関する実態なき発言は、国内外でロシアの首領のイメージを強化することを目的としたものと言えよう。ロシアは、バイデン氏こそがプーチン氏と話したがっているから会談が行われる、という見た目を生み出したがっている。

しかしながら、実際には米ホワイトハウスは、全く異なる見方をしている。

ジェン・サキ米大統領報道官は、5月25日、「私たちは、ロシア大統領との会談を(ロシアに対する)褒賞だとは見ていない。私たちは、その会談を米国の国益防衛のための重要な一部としてみなしている」と、米国の立場を明確にしている。

サキ報道官はその際、外交とはそういうものだと指摘し、「私たちは、意見の一致する人物とだけ会うのではない。実際のところ、ロシアの首脳陣との会談がそうであるように、見解に相違がある首脳と会うことも重要なのだ」と述べている。

サキ氏は、ジュネーブ首脳会談は「彼らの前で懸念を表明し、ロシア政府との間でより安定し、予見可能な関係に向かう」ことを可能にするものだと指摘した。

この外交的な言い回しを「翻訳」するならば、米国は、プーチン氏のことを「不安定」で「予見不可能」な人物と見ているということである。バイデン氏は、プーチン氏と対等に話をするために会うのではなく、懸念を抱かせるような状況になれば、相応の被害がまぬがれないのだということを警告するために、彼と会うことに同意したのである。なぜなら、プーチン氏の方がバイデン氏との会談に関心があるのであり、プーチン氏は、米国の大統領の言うことは全て聞かざるを得ないからである。

写真:Official White House
写真:Official White House

プーチンとの二つの議題パッケージ

バイデン氏周辺は、全ての議題に関して協議の際の立場の具体化を進めており、その際、プーチン氏とは「困難なやりとり」となるだろうと見ている。ホワイトハウスでは、議論に向けて二つの議題パッケージが用意されている。1つ目のパッケージは、米国とロシアの間で決定的に見解が異なる議題からなるもの。2つ目は、両国の利益が重なる内容の議題である。

ウクライナ問題は、その1つ目のパッケージに入っている。米国はすでに本件に関しては、ウクライナの主権と領土一体性を守ることを軸にした明確な立場を表明している。バイデン氏はプーチン氏に対して、ロシアが情勢を再び激化させた場合にはどうなるかを、個人的に伝えようとしているのである。

その他、1つ目のパッケージには、最近のベラルーシ情勢の展開、ノルド・ストリーム2問題、ロシアによるシリアの血塗られた体制へのサポートといった問題も入るであろう。これらの問題は、ホワイトハウスが協議することを認めている。しかし、プーチン氏にとって最も重要なのは、米国や同盟国に対するハッカー攻撃や、その他のロシアによる西側民主主義弱体化の試みに関して、バイデン氏個人が警告することであろう。

2つ目の両国の利益が重なる分野の協議のパッケージは、もはやそれほど大きなものではない。そこには、核軍備管理やイラン核合意などが含まれる。

ホワイトハウスは、状況を冷静に評価しており、協議相手のことも考慮している。そもそも、バイデン氏は、1970年代末、自身が米議会のレニングラード訪問団を率いた時からクレムリンの政治について知っているのだ。そのような政治的経験を持つバイデン氏が、現代ロシアやクレムリンについて、幻想を抱くことはない。

とすれば、ロシアの最近の様々な外交的な発言とは無関係に、米露はどちらも会談に関心を抱いているのであり、ジュネーブでの首脳会談は確実に開催されるであろう。しかし、協議におけるホワイトハウスとクレムリンの焦点は、正反対を向いている。プーチン氏には、「殺人者」のレッテルを剥がし、国内外での政治的正統性を確実なものとする、支持率アップの見世物が必要である。他方でバイデン氏は、その殺人者が状況を不安定化させないように説得し、不安定化の場合の具体的な被害について、一対一で伝えようとしている。

しかしながら、米国は、その間ずっとウクライナと直接コンタクトを取りながら行動していく。ウクライナの周りでは、ロシアの大規模な軍集結が続いている。そのような情勢激化は、プーチン政権による米国率いる西側世界への影響力行使の主な手段となっている。同時に、米国は、ウクライナの主権保護という一貫した立場を維持している。

トップイラスト:Erhan Yalvac


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