エティエン・ド・ポンサン駐ウクライナ・フランス特命全権大使
ウクライナの経済潜在力を完全に活用するためには、独立した司法が必要
30.04.2021 16:35

私たちは、ヴォロディーミル・ゼレンシキー大統領のパリ訪問から数日後にエティエン・ド・ポンサン駐ウクライナ仏大使と話した。そのため、やりとりの大半は、その訪問と、ウクライナにとって機微な国際問題に関するフランスの立場に関してのものとなった。具体的には、私たちは、「ミンスク諸合意履行のための重要クラスター」作成の際のウクライナにとってのレッドライン、ロシアによるウクライナ関連ナラティブ(言説)、北大西洋条約機構(NATO)加盟行動計画(MAP)のウクライナへの付与の展望、汚職対策と脱オリガルヒ(大富豪)政策について話した。

聞き手:ナジーヤ・ユルチェンコ(キーウ)

写真:ヘンナジー・ミンチェンコ


ノルマンディ首脳会談開催には前提条件が満たされなければならない

大使、ロシアによるウクライナ国境周辺とクリミアにおける軍の集結を背景に、現在、ウクライナの人々は政権幹部の諸外国とのやりとり、パートナー国は友好国から受け取るシグナルを注意深くフォローしています。その点、パリでのウクライナ、フランス、ドイツの首脳会談の発表された結果に対する、ウクライナでの受け止め方は一様ではありません。一部の政治家は結果に驚いていますし、一部はより多くを期待していたと言っています。フランスは、その結果をどう見ていますか。

まず、ゼレンシキー大統領のパリ訪問は事前に予定されていたものであり、実現のタイミングがちょうど良かっただけだということを指摘したいです。現在の国際議題は、非常に多いのです。

ウクライナとフランスは、二人の若くて活発な大統領が率いています。その二人の間には、長い友好関係があります。またそれは、大統領夫人の間にも言えます。両大統領の会談時、並行して、オレーナ・ゼレンシカ夫人とブリジット・マクロン夫人の昼食会が行われています。

つまり、二組の仲の良いペアの間で友情が育まれているのです。それは、国際関係では非常にまれなことです。それは両国の関係をさらに肯定的に示しています。

両大統領のテタテ(一対一)の対話は、およそ2時間続きました。そのことも両首脳の信頼のレベルを示しています。

周知の通り、2者対話フォーマットの後、アンゲラ・メルケル氏(独首相)が加わり、3者フォーマットでの協議が行われました。その内容は一定の機密対象なのですが、しかし首脳たちがロシア連邦のウクライナ国境に軍のプレゼンスを増加させたことはもちろん協議しましたし、それにより生じた緊張緩和・低減を達成する可能性についても審議しました。

彼らはまた、ノルマンディ・フォーマット(編集注:独仏宇露4国によるウクライナ・ロシア紛争解決フォーマット)とミンスク・プロセス(編集注:ウクライナ、ロシア、欧州安全保障協力機構(OSCE)の3者コンタクト・グループによるミンスク書合意履行を通じた紛争解決協議プロセス)の作業活性化の方法と可能性についても協議しました。なぜなら、双方とも、外交的手段が現状脱出を保証し得る唯一の道だと思っているからです。

ですから、私たちはもちろん、その首脳会談は結果を出したと考えています。さらに、議題には、経済、文化、政治分野の集中的で活発な、二国間協力上の重要なテーマもありました。

ウクライナ大統領府は、エマニュエル・マクロン仏大統領の今年上半期のウクライナへの訪問を発表していました。そのフランス大統領のウクライナ訪問は予定にまだありますか。それとも、フランスでは、4月16日のパリでの首脳会談はその代わりだとみなされていますか。

いいえ、(編集注:4月16日のパリ会談は)何の代わりでもません。それは、どちらかといえば、予定どおりの定期的なやりとりでした。

パリの会談の際に、マクロン大統領は改めて、感染状況が許し次第ウクライナを訪問するという自らの原則的な同意を確認しています。

今のところ、今年夏の訪問可能性が検討されています。私たちには、確実な日程はまだありません。しかし、訪問の展望は、フランス大統領官邸から確認されています。

ゼレンシキー大統領は、パリ訪問前に仏紙「フィガロ」へのインタビューにて、マクロン大統領ならノルマンディ・フォーマットを蘇生できる、同フォーマットに人工呼吸を行える、との期待を表明しています。発表されたマクロン大統領とプーチン大統領のもうすぐ行われる対話は、その方向への前進だとみなすことができますか。

私たちは、常にノルマンディ・フォーマット首脳会談実施を支持してきましたし、その展望は議題にあるのですが、その会談のために、内容を伴う条件が確保されなければなりません。

私たちは努力を続けていますし、メルケル独首相の両大統領の対話への参加は、ノルマンディ・フォーマットにおける協議を前進させる手段と新しい決定へ向かう出口が模索されていることを示すものです。

しかし、マクロン大統領の立場は明確に理解されるべきです。彼の立場は、会談のための会談は開くべきでない、首脳会談開催が必要となるだけの具体的な内容がなければならない、というものです。

首都間の対話はずっと続いています。昨日(編集注:このインタビューは、4月20日に行われた)は、ご存知の通り、ノルマンディ・フォーマット首脳政治補佐官級会合が行われました。

私たちは今のところ、残念ながら首脳開催の前提条件はまだ確保されていない、と話しています。

アン・リンデOSCE現議長は、キーウ訪問時に、ウクライナは次のノルマンディ会合開催のために、パリ首脳会談時の自らの義務を履行した、と述べていました。大使も、同じ評価ですか。

私は、コップについての隠喩で返事をしたいと思います。コップの状態を半分空と見るか、半分水が満たされていると見るか、です。

私たちは、パリ首脳会談の結論リストの一部は履行されたと見ています。具体的には、被拘束者交換や、ウクライナが行なったゾロテーとシチャースチャの新しい通過検問地点の開通といった措置です。

同時に、履行されていない措置もありますし、停戦体制の維持のように脅威にさらされているものもあります。

つまり、私たちは、作業の余地はあるし、次の会合開催に必要な条件を満たすべく、作業は続いている、と考えています。ロシアと同国が支援する分離主義者は、その作業の自らが負う部分を履行しなければなりません。

フランスとドイツは「クラスター」案作成時にウクライナのレッドラインを考慮している

ウクライナでは、ドイツとフランスが作成した「ミンスク諸合意履行のための重要クラスター」の内容が公開されていないことに、相当な警戒心を持って接しています。なぜなら、その「クラスター」に、ウクライナの社会が受け入れられない「レッドラインを越える」内容が含まれているかもしれないと恐れているからです。ウクライナにとってミンスク諸合意履行における原則的主張の一つは、まず治安問題を解決すること、そしてその後に政治問題に移行すること、です。ウクライナ社会のそのような懸念には、根拠があると思いますか。

私は、報道で時々(編集注:「クラスター」案について)何らかの「裏切り」行為の話や、レッドラインを越えるかもしれないなどと言われているのを確かに目にしています。私は、そのような見方には同意しません。なぜなら、それはマスメディアがセンセーションを巡る競争の中で生み出す歪曲だからです。私たちは、仲介者として、それら機微な問題におけるウクライナの立場を尊重しており、そのウクライナのために存在している「レッドライン」も完全に認識しており、それらを一定程度考慮しようとしています。

私は、「クラスター」については、協議プロセスと切り離すことのできない、一定の機密があることを強調したいですし、またクラスターに関する情報がメディアにリークされたのは、ドイツやフランスからではなく、ロシアからであることを指摘したいです(編集注:3月24日、ロシアの「コメルサント」が「ミンスク諸合意実現のための重要クラスター」案に関するリーク記事を公開した。しかし、これにつき、イェルマーク・ウクライナ大統領府長官は、ロシアの報道機関は協議に関してロシア側に有利なことを報じていると発言している)。

ドイツとフランスの課題は、ノルマンディ・フォーマットの会談実施を促すことです。なぜなら、現時点では、ウクライナとロシアが直接対話をする他の機会はないからです。

ドイツとフランスの優先解題はまた、その協議が成功するよう促すことでもあります。それは、私たちの大統領とドイツ首相により16日にパリで再確認されています。

フランスとドイツは、ロシアがウクライナに対していわゆる「DPR/LPR」なるものの代表者と直接協議をさせようとしているのを把握していますか。ロシアは、そのようにして、ミンスク協議プロセスから抜け出し、EUの制裁を解除するための根拠を得ようとしています。

確かに過去数か月、私たちは、ロシアが自らを協議の当事者ではなく「仲介者」だとし、ウクライナの出来事を「内戦」だと主張する、ロシアのナラティブを観察しています。

その点では、私たちは常に、三者コンタクト・グループの参加者は、OSCE、ウクライナ、ロシアである、と喚起しています。

フランスは、ロシア連邦との協議の際に、被占領下ドンバスの住民へのロシア・パスポート(国籍証明書)の発行を停止する問題を提起していますか。ウクライナでは、その行為は漸進的併合であり、またCADLO(ドネツィク・ルハンシク両州一部地域)にて、ロシア国民を守るためといって、ロシア軍のプレゼンスを公式に合法化するための今後のあり得る口実となるとみなされています。

フランスは、ロシアのパスポートのウクライナの諸地域の住民に発行するプラクティスを繰り返し非難してきました。そのような立場は、概してEUも維持していますし、EUからも類似の声明が出されています。

ゼレンシキー大統領は、パリにて、ウクライナは次の6月の北大西洋条約機構(NATO)首脳会談にて、加盟国からウクライナに対するNATO加盟行動計画(MAP)付与の準備に関するシグナルを期待していると述べました。その際、大統領は、その問題解決におけるフランスの重要な役割を指摘しています。フランスは、ウクライナにはそのようなシグナルを示す準備がありますか。

その問題(編集注:ウクライナへのMAP付与問題)は、完全に合法的な性格を持つものです。私は、それは6月のNATO首脳会談で検討されると思っています。

しかし、その決定は、同盟全体の権限に属するものであり、そのような形式(編集注:コンセンサス)で採択されるものです。

私は、MAP付与展望を前に進めることは現時点では緊急のものではないと思っています。ウクライナの今日の課題は、昨年夏に同国が加わった、NATOの高次機会パートナーシップ(EOP)プログラムを履行することです。

フランスは、「クリミア・プラットフォーム」を支持すると常に述べています。しかし、大使はこれまで、その目的は完全にはわかっていないとも述べていました。ゼレンシキー大統領は一時的被占領下クリミア脱占領・再統合戦略を最近確定しましたが、あなたは、その戦略の中に疑問の答えを見出しましたか。フランスは、そのイニシアティブへの参加の形、今年8月の立ち上げ首脳会談の際の代表者のレベルを決めましたか。

私たちは、そのイニシアティブを注意深くフォローしています。その議論は、両国の外相級で行われており、クレーバ外相がパリを訪問した際には、その問題につき、彼はジャン=イヴ・ル・ドリアン欧州・外務相と話しています。

同イニシアティブは確かに、ロシア連邦によるクリミア違法併合問題を国際政治の議題に戻すことのできるものであり、適したものです。

私たちは、そのフォーマットで行われる各種行事に間違いなく参加します。今はまだ、首脳会談への私たちの代表者の具体的なレベルについて述べるのは時期尚早ですが、しかし、私たちは、欧州、米国、カナダ、その他のパートナーたちとともに必ず出席します。

フランスとG7メンバーはウクライナの脱オリガルヒ政策を支持

約2か月前、大使は、ウクライナのメディアへのインタビューの際に、フランスはその他のG7メンバーとともに、ウクライナの汚職との闘いの状況に失望していると発言していました。おそらく偶然の一致だとは思うのですが、しかし、その直後にゼレンシキー大統領と国家安全保障国防会議(NSDC)がその分野にて断固とした行動を取り始めています。あなたは、ウクライナ政権の汚職撲滅の道における最近の行動をどのように評価していますか。

汚職との闘いは、非常に重要な問題です。なぜなら、法の支配は必ず確立せねばならず、独立した司法が機能することは、ウクライナの経済潜在力を完全に活用するための必要な前提条件だからです。

ウクライナにおける、いわゆる「ターボレジーム」と呼ばれた多くのことが約束された時期が終わってから、2020年夏以降のウクライナの同分野の仕事については、フランスとG7パートナーたちは、一定の落胆を表明しました。

同意に、過去数か月の間で、ウクライナ政権側の努力の活性化を目にしていることも認めなければなりません。それは、言うなれば、汚職対策分野と裁判改革分野の改革を正しいレールに乗せるような動きです。

昨年10月27日の憲法裁判所の判決は、私たちの見方では、著しい後退であり、その分野におけるある種の敗北とも言えます。私たちは、その判決で無効化された汚職対策法の完全な効力を回復させなければならないと見ています。

ご存知の通り、現在最高会議に複数の法案が登録されています。それらは、誤った資産申告や資産の不申告に関する罰則として投獄を回復することを規定するものをはじめ、正しい方向性を持ったものです。私たちは、それを正しい方向への前進とみなしています。

同様に、私たちは、G7大使グループとして、汚職の中心地としての評判を抱くキーウ(キエフ)区行政裁判所の活動を停止することを目的とした、大統領の決定を歓迎しました。

本件におけるG7大使グループの立場は、不変です。私たちは、裁判分野の改革は、ウクライナのその他全ての改革の母だと思っています。裁判改革がなければ、外国投資家にとっては、自らの資産を違法に奪われる恐怖を抱くことなく働く機会が保証されていないことになり、ウクライナの経済発展の前提条件が生じないことになります。

まさにそのために、G7大使グループは昨年12月、今後の裁判改革の進展に関し、ロードマップの形での自分たちの見方を広く公開しました。

ご存知のとおり、私たちは、ウクライナの独立機関や裁判機構のメンバーを任命する際に、公選制が不可欠だと強調しています。なぜなら、想像し得る最悪の状況というのは、形式的には独立しているとされる機関が存在していて、しかしそのメンバーが然るべき能力を持たなかったり、偏った見方をしていたり、あるいは自らの機能を果たす上での公正性の基準を満たしていなかったりする場合です。

正にそのために、私たちは、ウクライナのそれら独立機関と裁判機構メンバー選考委員会に、問題に特化した国際機関の専門家を参加させることを主張しているのです。

大使は、ゼレンシキー大統領が発表したオリガルヒ法はどれだけ効果的になり得ると思いますか。

私たちは、最近ウクライナ首脳陣が行なっている方策を注意深くフォローしていますし、その一部は、前述の通り、正しい方向を向いています。

私たちは、ウクライナの脱オリガルヒ政策が必要だという姿勢を支持しています。特にそれは、ウクライナ経済の独立禁止方策の形で行われるべきです。

実際、過去数週間、私たちは、ゼレンシキー大統領がウクライナに与えている肯定的な鼓動を感じています。今後は、その方向で達成される具体的結果を見ていかなければなりません。

改革について言えば、例として、ウクライナ保安庁(SBU)改革法案を挙げたいです。ご存知の通り、同法案は第一読解で採択されていますが、第二読会審議はまだ行われていません。その法案は、SBUの経済犯罪捜査権限に関わるという重要な問題を扱うことから、非常に重要です。私は、現状変更は不可欠であり、最近、新たに経済保安庁が創設されており、変化はすでに始まっています。

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