ゼレンシキー政権の1年 何が実現されたか

ゼレンシキー政権の1年 何が実現されたか

ウクルインフォルム
実現されたものは多い。すべきことは更に多い。現在の世界を覆う危機は、巨大な挑戦となっているが、しかし、ウクライナは耐えている。

2019年4月19日、ウクライナ大統領選挙の決選投票が終わってからちょうど1年が経過した。有権者が投じた73%という前例のない得票率は、誰もの記憶に残っている。その1か月後にヴォロディーミル・ゼレンシキー新大統領が誕生。その2か月後には、ウクライナでは繰り上げ選挙で新しい最高会議(国会)議員が選出され、されに1か月後の8月末には、新内閣が組閣された。つまり、政権、少なくとも立法と行政は、完全に刷新されたことになる。

ゼレンシキー大統領とそのチームは、過去12か月で何を実現したのであろうか?思い出すべきは、ウクライナが議会・大統領制共和国であるということだ。つまり、この国では大統領の権限は制限されており、代わりに議会がとりわけ経済・社会分野にて相対的に大きな権限を有す。そのため、私たちは、この期間、最高会議に「人民奉仕者党」による単独与党が存在したことを考慮しつつ、ゼレンシキー政権のこの1年の成果を分析することにする。

内政の観点からは、評価はもちろん様々なものがあり得るし、そうあるべきである。同時に、過去1年間は、世界全体で特別な1年であったこと、ただ困難であったのではなく、極めて困難な1年であったことは、事実であろう。そして、その挑戦的状況は現在まで終わっておらず、それどころかそれは目に見えて拡大している。その中、ウクライナはどのような変化を実現したのだろうか?客観的に見て、ウクライナはこの期間に何をしてきたのだろうか?

尊厳革命(マイダン革命)が要求した方針は変わらなかった。ウクライナは今も、団結した欧州と北大西洋条約機構(NATO)に向けて進んでいる。侵略国ロシアとの戦争も継続している。ただし、その戦争がウクライナにとって公正に終了すべく注ぎ込まれている努力の量は甚大で、それが結果をもたらしている。汚職との闘いは、現時点で鮮やかな成果を示せてはいないが、しかし、汚職対策の法制面と執行面では、真剣な基盤が築き上げられており、進展を期待するだけの根拠はある。現在進行形の世界的危機は、ウクライナ経済にとっても国家そのものにとっても、決定的な挑戦となっている。そして、今のところ、私たちは困難ながらもしっかり耐えている。順番に見ていこう。

戦争と平和

2016年以降実質的に止まっていたノルマンディ・フォーマット(編集注:独仏宇露4国からなる情勢解決協議フォーマット)は、活動を再開しており、協議が行われ、決定が採択されている。重要なのは、情勢解決のためには、まず治安問題を解決せねばならない、という、ウクライナの一貫した堅固な立場から、協議・決定が行われているという点である。ウクライナの立場の詳細は、すなわち、完全かつ全体的な停戦、ロシア占領軍と違法武装集団の撤退、武器の撤収、ドンバス地方の国境管理のウクライナへの返還、そしてその後ようやく、地方選挙をはじめとする政治問題に入る、というものである。更に、ウクライナ側、ゼレンシキー大統領は、パートナー国の支持を得て、パリでの昨年12月のノルマンディ首脳会談にて、今日の現状に適合すべく、ミンスク諸合意への変更を提案した。なぜなら、ミンスクの最初の合意に署名されてから5年半が経過しているからであり、その間、世界でもウクライナでも多くのことが変化しており、その「多くのこと」がミンスク諸合意実現プロセスにも反映されねばならないからである。

もう一つの重要な点は、これらの原則的アプローチを通じて、戦争終結に力が注がれていることである。ゼレンシキー大統領が関与することで、ロシア領や被占領地で捕らえられていた被拘束者や捕虜の一部が解放された。その中には、何年も自由を奪われていたオレフ・センツォフ氏、オレクサンドル・コリチェンコ氏、ロマン・スシチェンコ氏などが含まれる。また、2018年11月にケルチ海峡近海にて侵略国により拿捕された艦船と捕虜となっていた船員も帰還した。2隻の小型砲艦、1隻のタグボートも返還された。ただし、占領者により船内品が略奪されていたが。

更に、スタニツャ・ルハンシカ、ゾロテー、ペトリウシケにて軍の引き離しが実施された。スタニツャ・ルハンシカでは橋が修理された。被占領下クリミアとの境界線では、通過検問地点「チョンハル」と「カランチャク」が改修された。

そして、被占領地に向けて、親ウクライナ的な報道と娯楽内容からなるテレビ局「家(Дім/Дом)」が開設された。このテレビ局により、被占領下ドンバスには、過去6年で初めてウクライナのナラティブと正しいウクライナの情報が伝えられるようになっている。

政治制度と汚職対策

2019年7〜8月、最高会議の構成が再編される。ウクライナ国民の全てがその決定を支持したわけではないが、しかし、それは客観的事実である。そして、それにより肯定的な変化だけが生じたわけではない。ウクライナと国際通貨基金(IMF)との協力を実現するために必要な法案に対して、1万6000本の中身のない「修正スパム」が提出されたのだ(しかも、それは新型コロナウイルスの世界的拡散(パンデミック)と世界中の経済危機という条件下で行われているのだ!)。これは、間違いなく否定的なものであり、危険な警告である。しかし、今のところこのオリガルヒ(大富豪)ロビーによる抵抗は排除できそうだ。

肯定的な点は、第9最高会議が、前最高会議が採択しなかった法律を遅滞なく採択したことである。厳しい罰則を導入することで、他議員の代わりに別の議員が投票ボタンを押す違反行為や本会議の欠席議員数が最小限にまで減少した。あらゆる行為、犯罪に対する免罪符と成り果てていた議員不可侵権も剥奪。新しい選挙法典が採択され、次期最高会議選挙では議員がオープンリスト(非拘束式名簿)での比例代表制にて選出されることになった。そして、農地市場開設法がとうとう採択された。実際のところ、ウクライナでは、多くの政治家、ビジネス機構、一般市民が、農地市場開設を好ましく思っていない。しかし、それは実現しなければならないことであった。ウクライナは、土地売買が禁止されている世界で6つしかない国のリストに残り続けてはならない。

また、ウクライナ史上初めて、ゼレンシキー氏の主導で大統領弾劾法が採択された。

同時に、過去1年で3回も内閣が変わった。第9最高会議による2回の組閣に過ちはなかったであろうか?否、あった。1月半前に組閣されたデニス・シュミハリ内閣を見て欲しい。今でも複数の大臣ポストが空席である。しかも、新しい大臣の内、数名は1か月も経たずに解任された。同時に、この2回の組閣が、ウクライナ政界で習慣となっていた「談合」や、資源や汚職スキームを巡った交渉を経ずに行われたことは、希望をもたらすものである。

その他、国家汚職対策局(NABU)(編集注:政権幹部の汚職犯罪捜査に特化した治安帰還)の機能面での完全な独立が確保された。NABUは、2015年から得られていなかった物、すなわち、単独での通信傍受を実施する権限と単独での国際パートナーへの支援要請を行う権利を獲得した。ただし、残念ながら、NABUはまだ、自らの権限を完全には使いこなせていない。更に、検察システム改革が始まっている。同改革は、いわゆる「検察オリガルヒ」なるものの排除を含む。検察オリガルヒとは、検察システム内の非常に影響力があり、非常に裕福な幹部検察官のことであり、これまでウクライナの政権交代全てを生き延びてきた者たちを指す。

経済・ビジネス

世界経済は、新型コロナウイルスの世界的拡散に伴うかつてない危機に見舞われている。しかし、客観的に見れば、周期的に訪れる危機は、昨年後半には既に始まりつつあった。注意を向けてもらいたいのは、その頃、国際信用格付会社のスタンダード・プアーズとフィッチが、ウクライナの格付けを「安定」に引き上げていたことだ。同時に、ウクライナの通貨の価値が高まり、昨年第4四半期には(編集注:対米ドルで)約15%上昇していた。これによりウクライナ中央銀行は、金保有量を250億ドル相当増やすことが可能となり、これにより安定を確保していた。

もちろん、問題もあった。フリヴニャ高は、ウクライナの輸出業者にとって問題となり、産業分野に問題を起こした。その際、中央銀行と政府内金融省庁は、状況コントロールに努め、IMFによる「安価な」融資の再開予定が、ウクライナは世界危機を最低限の損失で乗り切れる、との予見性を与えていた。

その他複数の分野については、以下に詳細を書く。

・エネルギー分野は、長年、果てのないウクライナの汚職の温床となっていたが、欧州機構の関与とウクライナ幹部の決断により、同分野が停滞状態から脱出した。ナフトガス社のエネルギー輸送面の機能の分割が、欧州連合(EU)との協力により最短期間で実現。汚職撲滅と効率向上が目的である。

・同盟国のサポートを受け、ウクライナはロシアとの間で、ウクライナにとって有利な条件で、ウクライナ領を通過するEU市場へのロシア産ガス輸送に合意。有利な条件とは、具体的には、契約に定められたガス輸送量より少ない場合でも、露ガスプロム社がウクライナ側に支払いを行う、という原則である。これは、毎年数十億米ドルの支払いとなる。

・ウクライナは、ロシアから、ストックホルム仲裁裁判所の判決を受けた支払いを受け取った。ロシアは長らく支払いを拒否していたが、最終的には、ウクライナ・ロシア両大統領の協議の後、ロシアは総額50億ドル中の29億ドルを送金した。ウクライナは、それ以前に支払額の一部をガスで受け取っていた。

金融分野・経済・汚職対策

・国家金融サービス市場規制委員会の解体、金融市場規制権限の中央銀行と国家証券市場問題委員会の間での分割を定める法律が発効。これは、西側パートナーの重要要求の一つであったもので、ウクライナはこれにより国際基準に適った金融システムを作り出すことが可能となった。本件は、2015年から続いていた闘いであった。

・真のコンセッション方式の創設。これにより、国外の経験豊富な投資家がウクライナのインフラ設備に関与できるようになった。最初にコンセッション方式が導入されたのは、オルビア港とヘルソン港である。

・コロナ禍の中での中小企業支援方策の作成と施行。特に、企業が融資の金利支払い分を保障される法改正が行われた。運転資本に上乗せするための無金利融資提供プログラムが作成された。融資の唯一の条件は、経済危機下で最低80%の雇用を維持することである。

・「大規模建設」プログラムが開始。これは、単に何千キロメートルの道路・社会的重要施設の建設・改修だけでなく、それによる何千の新規雇用創出も想定している。

・ヤヌコーヴィチ政権時代から改正されてこなかった、個人事業主の収入制限の上限が上げられた。

・小規模企業向け低金利融資プログラム「獲得可能融資5-7-9%」の実現が開始。

・刑法典において、実質的に機能していなかった「フィクション企業」条項を削除。同条項は、治安期間によるビジネス界への汚職的脅迫を可能としていた。

・ウクライナ産製品のEU加盟国への輸出緩和法の採択(いわゆる「産業査証免除」)。例えば、今後ウクライナが発行した分類・品質証明書がEUで承認されるようになる。

・建築基準の著しい簡素化・現代化。同分野の汚職の温床であった国家建築建設監査局が解体された。

・5万フリヴニャ以上の国家調達を電子上で行うことを義務付ける法律が採択された。これにより、小規模契約により透明な調達を回避することが不可能となった。

・政権幹部を潤し続けてきた大型汚職モンスターと呼ばれる数十の国営企業の民営化準備が開始された。好例は、アルコール製造のウクルスピルト社である。同社は、アルコール製造による国家予算への収入が約8倍となった。

社会問題

・世界の市場ではエネルギー価格が決定的に下落したが、ウクライナでは、官僚主義と「関心を有す人々」の存在により、そのような下落を感じられていない。そのため、暖房・温水価格の提言を実現するメカニズムが模索された。これにより、地域差、供給企業による差はあるが、最大30%の支払い公共料金の減少が実現した。

・現在の経済危機により失職した人の支援プログラムが開始された。

・高齢年金受給者を対象にした追加支払いメカニズムが作成された。また、新型コロナ禍の最中に、年金受給額が5000フリヴニャ以下の受給者を対象とした追加支払いが実施される。

・東部にてロシアの侵略に対して戦闘に参加したウクライナの志願兵に、戦闘行為参加者地位が付与された。

・約10年間建設作業が続いている小児治療・診断病院の建設作業の基本部分が終了した。

オクサーナ・ペトレンコ、キーウ(キエフ)


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