ゼレンシキー大統領、新年の挨拶 国民に団結を呼びかけ
大統領が、年明けまでの最後の約10分間に公開された新年を祝うメッセージ動画にて、通常の1年間の総括の代わりに、このような質問を行った。大統領の新年の挨拶の動画は、国内の各テレビ局や大統領府ウェブサイトにて公開された。
ゼレンシキー氏は、「通常、大統領たちは、新年の挨拶の際に、GDPの上昇や、インフレ率の低下、履行、多様化、その他のよく知られていない用語を私たちに伝える。簡潔に言えば、彼らは、私たちの生活は実際のところ良くなっているが、私たちがまだそれに気がついていないだけなのだと、説得しているのだ。だから、私たちはしばしば大統領の呼びかけの時にテレビの音量をミュートにする。大統領の物語が終わるのを待とう、それからシャンパンや小魚の乗ったカナッペ、オリヴィエ・サラダをいただこう、という具合に」と発言した。
大統領は、自分の挨拶は違うものにすると述べ、国民一人一人に、「自分は何者か?」を問いかけて欲しいと呼びかけた。
大統領は、「ウクライナ大統領?普通の主婦?成功した弁護士?モヒラ大学の哲学科学生?チェルカーシ州の農家?『私』は何者であろうか?元写真家で、東部で国を守る者?元物理学者で、今はイタリアで皿洗いをする者?」と問いかけた。
大統領は、ルハンシク市を離れ、2年間タクシー運転手をした後、元の町に戻った者、外国にもう10年間暮らし、インターネット上でウクライナを愛する者、クリミアで全てを失い、ハルキウにて一から生活を始めた者、IT専門家で国から逃げ出すことを夢見る者、拘束されていて家に帰ることを夢見る者など、例を挙げて、「皆ウクライナ人なのだ、私と同じ、理想的でも神聖でもない、普通の人間なのだ」と強調した。そして、「私たちの身分証明書には、正しいウクライナ人とか誤ったウクライナ人などとは書かれていない。愛国者、小ロシア主義者、ソ連懐古主義者、バンデラ主義者という項目はない。書かれているのは、権利と義務を持つ『ウクライナ国民』だけだ」と指摘し、「私たちは、とても多様だ。しかし、私たちは誰だろうか?」と質問した。
その上で、大統領は、ウクライナ人の中には、世界最大の飛行機を作った者や、自動車運転中にシートベルトをしない者、農地市場に反対する者や、LGBT+のキーウ・プライド行進に参加する者、ジャダンの小説を読む者やマルーヴの音楽を聞く者、ウクライナ語で「あなたを愛している」と言う者やロシア語で「君が好きだよ」と言う者がいるのだと伝えた。
ゼレンシキー氏は、ウクライナ語以外に、動画のところどころでクリミア・タタール語、ハンガリー語、ロシア語を使ってメッセージを伝えた。
大統領は、ウクライナ人は様々だが、私たちを団結させるものはたくさんあると述べ、皆が国の偉人を誇りに思うこと、サッカー大統領が欧州選手権に出場すれば皆で同じように喜ぶこと、平らになった道を笑顔で車で走り、最初の子供が生まれれば皆同じように喜ぶことを喚起した。
大統領は、「テルノーピリとクリヴィー・リフの兵士の墓の上に立つ十字架で愛国心を競うことはないのだ。海軍軍人と人質が帰ってきた時、私たち皆が、幸せから涙を流したのだ。ウクライナ語話者も、ロシア語話者も。普通の主婦も、成功した弁護士も、ウクライナ大統領も」と述べ、国民に日々一つの国であるよう呼びかけた。
ゼレンシキー氏は、2020年、人々が互いに尊重し合うよう、健康であり、豊かさを得て、平和の中で生きられるよう祈願した。また、大統領は、「ウクライナを愛するというのは、ウクライナ人皆を愛することなのだ。誰がこの国のどこで生まれようとも」と強調した。
また、新年の挨拶には、大統領以外に多くの人が出演した。出演したのは、レオニード・クラウチューク初代大統領、ルスラン・ステファンチューク最高会議第一副議長、オレクシー・ホンチャルーク首相、オレフ・ヴィンニク(歌手)、オレクサンドル・ウシク(クリミア在住ボクサー)、マリヤ・イェフロシニナ(テレビ司会者)、ジージョ(歌手)、ニーナ・マトヴィイェンコ(歌手)、モナーティク(歌手)、チーナ・カローリ(歌手)、ポタープ(歌手)、セルヒー・ブブカ(元陸上競技選手)、ジャマラ(歌手)、オリハ・ポリャコヴァ(俳優、歌手)、スタジオ「第95街区」の俳優。
出演者たちは、クリミアを含め、ウクライナ各地から新年の挨拶を述べるとともに、平和を祈願するメッセージを伝えた。
動画の最後には、大統領が他の出演者とともに、2020年新年に向け年明けカウントダウンを行った。
写真:大統領府