最高会議選挙投票日前夜 各政党の勝利のチャンスは?

最高会議選挙投票日前夜 各政党の勝利のチャンスは?

ウクルインフォルム
最高会議(国会)繰り上げ選挙において、「新顔」たちが勝利することは間違いない。重要なのは、彼らが「旧勢力」の政治を真似しないことである。

7月21日に投票日を迎える最高会議繰り上げ選挙の選挙運動期間が、そろそろ終わる。政治家たちが有権者に自らの真実を伝え、説得し、支持を得るための時間は、残りわずかである。今回の選挙が、古いエリートたちによる大きな政治サイクルの終わりとなることは、間違いない。新しい政治サイクルがどのようなものになるか。その新しい政治サイクルは、質の面でも新しいものとなるのか。誰にどのようなチャンスがあるのか。調べてみよう。

選挙の始まり

最高会議繰り上げ選挙が発表された際の憲法・法律上の解釈上の対立は、一定の混乱をもたらした。新大統領にとって、就任式に強力な政治的な行動を取る必要があったことは理解できる。それに対する社会の要請があったことも確かである。また、繰り上げ選挙が、大統領の新政党にとって有利だという、明白な事実も見逃せない。

なぜ、全勢力が選挙実施を受け入れたのか?

同時に、大半の政治エリートたちが、選挙実施宣言を特に問題視することなく、その実施に同意したのであった。各勢力が選挙に対してそれぞれの思惑を抱いていた。新大統領にとっては、自らに忠誠する最高会議が必要であったし、仮に10月末に選挙が行われたのであれば、時間経過とともに自然に支持が低下するため、結果は現在より悪くなっていた可能性がある。ポロシェンコ前大統領にとっても、政界内で積極的な立場を維持し、大統領選挙中に得た支持(24.5%)を刷新した政治プロジェクト「欧州連帯党」へと可能な限り固めるという目的からも、速やかな選挙実施が有利であった。概ね同様のモチベーションが祖国党党首のティモシェンコ氏にもあったであろう。大統領選挙は、ティモシェンコ氏にとっては大きな落胆であったであろうが、同選挙での3位(13.4%)という得票は、次期最高会議に向けて大きな展望を抱くことのできる数字であった。いわゆる「リベンジャー(復讐者)」たち(2014年の尊厳革命(マイダン革命)を支持せず、欧州統合路線を誤ったものだとみなす政治勢力の意)もまた、選挙に自らの支持層を拡大するチャンスを見ており、野党プラットフォーム・生活のため党(野党・生活党)と野党ブロック党は、このチャンスを見逃していない。フリツェンコ元国防相の国民立場党や、リャシュコ党首の急進党のような政治勢力も、4月の大統領選挙に得た結果を固めて、政治に残ること、議席を獲得することを、死活問題だと考えているだろう。フロイスマン首相は、とうとう独立した政治家となるチャンスをつかんだ。

誰が「新顔」なのか?

「新しい政治勢力」、「新顔」といったものは、ウクライナの人たち皆が待ち望んでいたものである。その中心的な存在は、新大統領の政党、ドラマと同じ名前の「人民奉仕者党」である。テレビドラマでは、ゼレンシキー氏は「民衆の中から現れた大統領」の役割を演じていた。このドラマは、4月の選挙のセンセーショナルな勝利における重要な要因であったのではなかろうか。もちろん、この政党は体系的な組織となるには至っていない。実際のところ、人民奉仕者党は、ウクライナ政界のこれまでの慣習同様、新大統領「ブランド」の下に集まった非常に多様な人物からなる政党である。

同党には、ゼレンシキー氏の約30%の基盤支持者層以外に、ティモシェンコ氏、フリツェンコ氏、リャシュコ氏の支持者や、旧地域党支持者から支持が集まり、その結果、人民奉仕者党には約50%の支持が集中している。あらゆる世論調査の結果において、同党への圧倒的な支持率が示されており、同党は第9最高会議において単独過半数を目指せるほどとなっている。

システムの外、市民社会から出てきたもう一人のリーダーとして、ロックミュージシャンのスヴャトスラウ・ヴァカルチューク氏のことを指摘しないわけにはいかない。彼のプロジェクト「声」は、ポロシェンコ氏や人民戦線党に失望した有権者、つまり、ナショナリズム・中道右派的価値観に基づいた国家の再建は、その考え自体が悪なのではなく、それを2014年から2019年にかけて実現しようとした人々に問題があったのだ、と考える有権者にとっての、答えとなり得るものであった。ただし、率直に言えば、今回の選挙戦にて、ヴァカルチューク氏は、大成功はしていない。市民活動家、ビジネス界代表者、ボランティア、退役兵からなる名簿は、「古いワインを新しい樽に注いだ」ようなものに思える。また、ヴァカルチューク氏に伴うロマンティックな英雄のイメージは、ネガティブなジョークを生み出している。なぜなら、このロマンティックなイメージが、ヴァカルチューク氏が効果的な政治リーダーとなる準備がまだできていないことを、より一層際立たせているからである。もちろん、ウクライナにとって、そのことはもはや悲劇ではないし、ヴァカルチューク氏には、組織的・財政的支援が十分ある。しかし、そのことが「声党」には、高くつくかも知れない。現在、同党の支持は、「ボーダーライン上」、つまり、4%から7~8%の間にある(議席獲得に必要な得票率は5%以上である)。

もう一つの新しいプロジェクトは、スメシュコ元保安庁長官の「力名誉党」である。同氏は、ウクライナ人を時間旅行に送り出すのかもしれない。というのも、彼のチームには、レオニード・クチマ第2大統領時代の忘れられた過去の人物、例えば、セルヒー・フリネヴェツィキー氏やヴォロディーミル・セミノヴジェンコ氏などが加わっているからである。彼らを専門家だとみなす人々はまだいるが、同時に、同チームには複数の現職議員も混ざっており、理解され辛い構成となっている。そして、スメシュコ氏本人の影響力もほぼない。現在、力名誉党の支持は、5%のボーダーライン上である。希望は、4月の大統領選挙時にスメシュコ氏に票を投じた6%の有権者を動員できるか否かにかかっている。

ゲームに残っているのは誰か?

「伝統的政治勢力」に関しては、何が言えるであろうか。4月のセンセーショナルな選挙結果から、それぞれが総括をし、過ちを正すべく、各自がそれぞれの道を進み始めている。

ポロシェンコ氏の政党は、リブレンディングを行い、防衛的かつ若干攻撃的であったレトリックをポジティブなものに変更。同時に、NATO・EU統合というポロシェンコ前大統領の過去数年の主な成果については原則的公約として残した。これにより、今のところ同党の支持は8~11%となっている。政党リストを刷新したことと、前大統領周りの極めて評判の悪い人物と距離を取ったことが、肯定的結果を生んでいるとみなすことはできよう。現時点で、政党の推進力となっているのは、ポロシェンコ氏本人である。彼が、大統領選挙の一回目投票で得た16%の支持を最大限維持できれば、同党の課題は達成されたとみなすことができるであろう。しかしながら、世論調査は、今のところいささか控えめな数字を示している。同党は、声党の支持層と一定程度重複している他、ウクライナ西部の有権者を巡っても他勢力と競合している。

他方で、祖国党とティモシェンコ氏は、従来の手段で選挙戦に挑むこと、選挙勝利のために地方支部を鼓舞することを決めた。それは、政党名簿に掲載される名前を見ると説明できる。同名簿の上位には、地方幹部や信頼される同党幹部が掲載されているからである。ティモシェンコ氏の選挙運動の主な目的は、政権回帰であり、「経験の豊富な元首相」として、ティモシェンコ氏十八番のポピュリズムを用いて選挙戦に挑んでいる。そして、おそらく、それが「祖国党」最大の過ちであろう。ウクライナ人は、そのようなメッセージを受け入れなかった。10%あった支持は、現在6~7%まで落ちている。

ユーリー・ボイコ氏、ヴィクトル・メドヴェチューク氏、セルヒー・リョーヴォチキン氏の「野党プラットフォーム・生活党」は、オープンかつストレートに、親露志向を示して選挙運動を進めている。支持拡大の手段もまた、直接的なもので、報道機関の大量買収とそれによる情報面での他者への攻撃である。同党の特徴は、ウクライナに対して布告なき戦争を展開するロシアからの独占的支援を受けている点である。同党の支持は10~14%。選挙結果では、議会第2党となる可能性がある。

次期最高会議に議席を得られない可能性のある複数の政党についても指摘する必要があろう。各政党に独自の失敗ストーリーがある。

フリツェンコ氏の国民立場党は、その目立った例である。リーダーもいる、正しい人たちもいる、話の内容も賢い、全てがうまくいくように思えたのに、勝利の見込みはない。2010年にフリツェンコ氏が使い、うまくいかなかったスローガン、「一度も勝ったことがない」が、政党とフリツェンコ氏自身の運命につきまとい、同党の非常に悲しい歴史を作り出している。世論調査によれば、多くの有権者が同氏を信頼しているが、他方で確信はなく、そのため同勢力へ投票するとは言わない。同党の支持は、現在2.5~4%。これは、フリツェンコ氏が政界を去る可能性のある数字である。彼が議席を獲得するには、前例ないほどに国民立場党の支持層を集結させなければいけない。国民立場党の支持層を「奪って」いるのは、前述のスメシュコ氏率いる力名誉党である。

ムライェウ氏とヴィルクル氏の「野党ブロック党」が最高会議に議席を獲得できるとすれば、やはり団結しかないだろう。同党の面倒を見ているのは、ウクライナ最大の富豪である、リナト・アフメトフ氏である。このヤヌコーヴィチ大統領時代の人物からなるグループは、クレムリンが唯一支持する野党・生活党のボイコ氏と共演することができなかった。結果、現在の支持は3%である。夏季の有権者の投票率が下がるという傾向とアフメトフ氏の企業に関わる有権者の総動員によって、5%を越えるチャンスはまだある。

フロイスマン首相の「ウクライナ戦略党」には、単純に時間が足りないのかもしれない。10月末ではなく、2か月間。2か月間は、政治舞台において理想的に足場を作れる時間ではないし、さらには、既にセンセーションとしての「人民奉仕者党」が存在する中で、「戦略党」にはメディア戦略が明らかに欠けている。自身の政治的「父」であるポロシェンコ前大統領に対する攻撃も、正しい行動ではないように見える。他方、ウクライナの選挙は、奇跡を起こすものである。とりわけ、2014年の選挙では、人民戦線党の支持率は、投票日2週間前には7%だったものが、投票結果では22%まで伸張していた。あらゆることがあり得るのだ。

深刻な問題を抱えているのは、「急進党」である。同党の左派的ポピュリズムは、有権者に少し飽きられている。大統領選挙で、同党党首のオレフ・リャシュコ氏が5.48%の票を得たことを考えれば、同氏への安定した支持のみが、「急進者たち」の議席喪失を防いでくれるのかもしれない。

もう一つ、大失敗として指摘すべきは、アンドリー・サドヴィー党首の「自助党」である。その支持率は1%以下である。同党の経験は、現在の「新顔」たちにとっての教訓であろう。なぜなら、自助党は2014年の選挙時には正に「新顔」として、信頼を得て議会に入ったからである。議会において彼らが目立たなかった、効果的でなかったとは言えない。しかし、党の幹部が古い政治手法に傾いてしまったこと、そのことが有権者を遠ざけてしまったのである。7月21日、奇跡のみが自助党を救い得る。

投票が終わったら?

投票はまもなく行われる。そして、私たちは、新しい最高会議と生きてゆかねばならない。どのような予想ができるであろうか。

欧州連帯党と野党・生活党は、ウクライナのコンセプチュアルな未来図を示している。ただし、両者の描く将来図は正反対、前者は欧州的未来であり、後者はユーラシア的(ロシアとの接近)未来である。その他の政党は、概ね欧州路線を支持している。有権者が魅力を感じている路線が宣言されているのだ。

全ては、潜在的な選挙勝利者である「人民奉仕者党」と小選挙区議員が作る会派に左右される。それがどのような構成になるかは、投票日までは分析困難である。人民奉仕者党の夢である、単独過半数、単独与党の夢は、202の小選挙区に出馬しているほとんど無名かつ当選予想の困難な候補者たちとともによってのみ実現可能となる。祖国党や野党・生活党と組んで「首をレンガで固める」ことは、ゼレンシキー大統領とそのチームには、あまり必要とされていない。

選挙後、国家の前には、真に深刻な挑戦と脅威が立ちはだかる。それに対応するのは、責任感のある予想可能な立法府でなければならない。もしそうでなければ、後悔するのは、議員と大統領だけでは済まなくなる。

ヴィクトル・チョーパ、キーウ


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