著名人たちによるウクライナのアイデンティティに関する英語エッセイ集が出版

ウクライナの作家、歴史家、活動家たちによる、エッセイ集「歴史と物語の中のウクライナ」(Ukraine in Histories and Stories)の英語版出版プレゼンテーションが市民団体「インターニューズ・ウクライナ」によって行われた。この本は、今後その他の外国語にも翻訳される予定。

28日、本の出版記念プレゼンテーションがウクルインフォルム通信にて行われた。

市民団体「インターニューズ」のプログラム・ディレクターを務めるアンドリー・クラコウ氏は、この本について、文化支援団体「ウクライナ文化基金」の資金援助を受けて制作されたものだと説明した。同氏は、「私たちはまず、このプロジェクトを西側の人々向けに行った。私たちは、自分のことについて、より大きな声で話さなければならない。外国の人たちに、私たちが何を欲しているのかを話すことが大切だ。私たちは、『ウクライナ』という言葉が使われる際に、何よりまず、私たちの声を直接聞いて欲しいし、知って欲しいのだ。今回素晴らしいことは、それを私たちが『知識人』と呼ぶ人たちが行ってくれたことだ。歴史家、哲学者、作家、政治分析家、市民活動家が参加した。この本は、16のウクライナについてのエッセイから構成されている」と発言した。

クラコウ氏は、この本は既に欧州各都市で紹介されていると伝えた。

同氏は、「この本は無料である。私たちは、イベントでこの本を配布しているし、ウクライナ大使館等に送っている。また、英語とウクライナ語の電子版も作成した」と述べた。

インターニューズのヴォロディーミル・イェルモレンコ氏は、この本を「革命的なもの」と形容し、「なぜなら、これまで、世界において、ウクライナについて話される際、主にウクライナ人以外の人が話してきたからだ。私たちの目的は、国際社会で、ウクライナ人の声を英語で伝えるようにすることだ。また、この本のメッセージの一つは、ウクライナの多様性である」と強調した。

イェルモレンコ氏は、本は8つの章に分かれているとし、このエッセイ集を読むと「過去から今日までの(ウクライナの)歴史の旅」ができると指摘した。本は、著名歴史家のヤロスラウ・フリツァーク氏とセルヒー・プロヒー氏のエッセイから始まる。ウクライナのアイデンティティについて書いたのは、日本でも知られる作家のアンドレイ・クルコフ氏(編集注:邦訳に「ウクライナ日記」、「ペンギンの憂鬱」)や欧州で人気のユーリー・アンドルホーヴィチ氏。「祖国」の章は、ラリサ・デニセンコ氏とヴァフタンハ・ケブラゼ氏が、「傷」の章は、ドンバス出身者や、クリミア・タタール活動家のアリム・アリイェフ氏が執筆した。

作家のアンドレイ・クルコフ氏は、自身の書いたエッセイにつき、「ロシア人とウクライナ人、二つの国の国民のメンタリティの違いについて書いた」と述べた。同氏は、「ウクライナを説明することは非常に重要だ。なぜなら、ロシアからウクライナについての否定的な情報が常に流れているからだ。その情報は、意識的に流されており、ロシアの文化商品を通じて外国人の無意識の中に入り込んでいるのだ」と強調した。

クルコフ氏は、外国人は「私たちが、ロシアからウクライナを歴史的に引っ剥がした」と理解していると指摘した。同時に、クルコフ氏は、「しかし、今、私たちには、他の文化、他のメンタリティとの十分な違いがあるということを示さねばならない。私たちに興味を抱いてもらうためであり、その違いこそが、現在私たちの周りで起きていることを説明する、ということを理解してもらうためだ。この本は、簡素で分かりやすい形で書かれた、ウクライナについての基礎的な知識である。この本を読めば、私たちの周りで起きていることについて理解することができ、私たちがどこに向かいたいと思っているのか、どこには行きたくないのかについて理解ができる。私たちが望むことと望まないこと、世界の中でどこにいたいのかを理解できる本だ」と発言した。

執筆者の一人の、クリミア・タタール活動家であり、市民団体・国営企業「クリミアの家」のアリム・アリイェフ氏は、この本の英語版につき、「私たちの存在を世界に示す良い手段だ」と述べ、「ウクライナとウクライナ人というものが、ロシアのレンズを通じて想像するよりも、はるかに深みがあり、面白く、多彩なのだということを示す本だ」と指摘した。アリイェフ氏は、「この本のもう一つの非常に重要な目的は、私たちの国内対話を形成している点である。それは、クリミア・タタールとウクライナの対話である。私たちは、多様で、時々痛みを伴う、対立的な、しかし重要なテーマを話し始めているのだ」と説明した。

今回のプレゼンテーションでは、この本は、今後英語以外の外国語にも翻訳する意図があると説明された。

イェルモレンコ氏は、「現在、このプロジェクトは終わりつつある。しかし、パリやロンドンでもこの本のプレゼンを行うよう招待されている。私たちは、この本をアン・アップルバウム氏やティモシー・スナイダー氏のような、ウクライナや東ヨーロッパの研究を行う著名な専門家に贈りたいと思っている。その他、大使、欧州各国の外相にもだ。また、欧州の出版社からも問い合わせを受けている」と発言した。

クラコウ氏は、来年、この本を欧州議会の議員に紹介する予定だと指摘した。

同氏は、「私たちは、この本が主要な欧州言語で翻訳されるよう、最大限拡散したいと思っている。ストラスブール等のプレゼンテーションでは、この本がロシア語でも拡散されるべきだとする考えが聞かれた。私たちはそのことについても考えている」と強調した。

現在、この本は、1500部印刷されているとのこと(英語1000部、ウクライナ語500部)。また、この本の電子版は、インターネット上で無料でダウンロードできるようになっている。