アブドゥルハレク・アブドゥラ・アラブ首長国連邦政治学者
アラブ首長国連邦はウクライナの勇敢な姿勢を高く評価しており、その支援を決して忘れない
湾岸協力会議(GCC:バーレーン、カタール、サウジアラビア、クウェート、UAE、オマーン)諸国に対するイランの攻撃は、ある種の驚きだった。なぜなら、アラビア半島の君主制諸国は、地域紛争へ巻き込まれることをあらゆる手段で回避しようとしてきたからだ。これらの国々は、イランとの政治的接触を絶やさず、貿易・経済協力を発展させ、イランに西側諸国との間のやりとりの仲介の機能を提供してきた。しかし、こうした「肯定的な中立」も、世界で最も安全な都市というイメージを長年築いてきたアラビア半島の首都や諸都市をイランのミサイルや無人機から彼らを守ることはできなかった。
ウクルインフォルムは、イランによる侵略の開始、事態の推移と収束への見通し、及びウクライナによる支援について、アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイ在住の著名な政治学者であるアブドゥルハレク・アブドゥラ氏に話を聞いた。
聞き手:ヴィタリー・フェジャーニン(キーウ/ドバイ)
イランの攻撃はUAEにとってショックだった
UAE及び他のGCC諸国は、イランによる直接侵略に直面しています。イランはアラブ首長国連邦の諸都市をミサイルや無人機で攻撃しています。テヘランのこうした行動をどのように評価し、受け止めていますか?
イランの攻撃は私たちにとってショックでした。私たちは、ミサイルや無人機を用いたこのような侵略を経験したことも、慣れてもいませんでした。ましてや、これほどの数で、憎悪を伴うものは初めてです。
同時に、イランがUAEを攻撃したこと、さらには他のどの湾岸アラブ国よりも激しくUAEを攻撃したことは奇妙です。イランは、アラブ首長国連邦に対して、イスラエルよりも強く攻撃を仕掛けたのです。そのため、それは大きなショックでした。
アラブ首長国連邦はイランにとって外の世界への「肺」であり「門」でした。UAE側からは、イランには常に協力と善隣友好しか目に入っていなかったはずです。それを踏まえた上で、今回の侵略は衝撃をもたらしたのです。
私は、今回の件を受けて、イランについての受け止め方は、公式レベルでも社会においても、以前とは異なるものになると確信しています。私たちはこの侵略を決して忘れません。イランは私たちにとって千年来の隣人でした。しかし、過去47年間(編集注:1979年のイスラム革命以降)、イランは湾岸地域や私たちの安全、安定に対する脅威として認識されてきました。今後、イランはUAE及びその他の湾岸アラブ諸国にとって最も危険な敵となります。
最近の出来事の前まで、UAE、特にドバイは、不正義や紛争に満ちたこの騒乱の世界における「安全と安定の島」とみなされていました。アラブ首長国連邦の人々が、空襲警報のサイレンや、ミサイルや無人機の着弾音をどのように受け止めたか教えてください。
最初の数日間は、イランからミサイルや無人機が飛来するのを見聞きして、戸惑いがありました。私たちは、自分たちの歴史を通じて、類似のことを見たことがありませんでした。
しかし、国家としてのUAEは、このような残忍な攻撃に対して準備ができていました。私たちの首脳陣は、世界で最高かつ最新の防空システムを確保することができていました。私たちUAE国民にとっては、攻撃はショックでしたが、防空戦力には準備があり、攻撃を撃退することができました。
すでに約2週間、私たちの兵士たちは、「シャヘド136」型をはじめとするイランのミサイルや無人機の飛来を撃退し続けています。撃墜率は93〜96%に達しています。一方で、ミサイルや無人機の残骸や破片などにより、民間施設への被害も出ています。イランの攻撃がショックであったのと同様に、私たちの防空システムの働きもまた驚きでした。
私たちは信頼できる防空網を構築することができ、防衛に投じられた1ドル1ドルが報われました。それ以降、UAEはかつてないほど自国の力を信じています。
石油市場はすでにホルムズ海峡の不安定化に反応していますが、GCC諸国の食料や水の安全保障についてはあまり語られていません。アラブ首長国連邦は、水や食料の住民への供給の問題への準備ができているのでしょうか?
ええ、確かに現在、大半の話が石油に集中しています。石油が世界経済、特に中国やアジア、世界のどのような国にとっても重要である以上、それは当然のことです。ご存知の通り、アラブ首長国連邦は石油収入への全面的かつ不健全な依存からは脱却しています。今日のUAE経済は、多くの分野で最高水準で多様化が進んだ経済です。
この戦争、このUAEに対する侵略の課題について言うと、私たちの国の政府は、当然国民のための水、食料、医薬品の確保について検討済みです。私たちには、自国民や他の湾岸アラブ諸国のために、少なくとも2年分の戦略的備蓄があります。それが、危機的状況に備えた私たちの計画でした。
私たちはあなた方と同じ塹壕にいる。UAEはウクライナの勇敢な姿勢と支援を決して忘れない
ウクライナは即座にUAEとの連帯を表明し、あなた方の国に対するイランの侵略を非難しました。ゼレンシキー宇大統領は、地域の指導者たちとの電話会談後、イラン製無人機への対策支援を行う準備があると表明しました。
ウクライナは、「シャヘド」型無人機の脅威を無効化するための先進的な経験や技術を有しています。イランは、同国の軍事技術の近代化を支援してきたロシアの同盟国です。今こそGCC諸国は中立から脱却し、ロシアの侵略に対してより断固とした立場をとるべきではないと思いませんか? ウクライナがGCC諸国への支援に集中できるよう、ロシアに外交的圧力をかける可能性をどう評価しますか?
UAEには約200の異なる国籍の人々が住んでいます。UAEは実質的に世界中を受け入れています。200の国籍の人が私たちのところにいるという意味で、UAEへの攻撃は全世界への攻撃です。その観点からして、世界がUAEと連帯を表明したことは不思議なことではありません。私たちの大統領は、この2週間絶え間なく世界の首脳たちからの電話を受けています。彼らは皆、連帯を表明し、アラブ首長国連邦に住む自国民を守ることも考えながら、私たちの国の防衛支援を申し出ています。
即座に支援を申し出た国の中に、ウクライナがありました。ウクライナ自身が、全面的な侵略から自衛をしている最中です。あなた方の国は、ロシアが民間インフラやエネルギー施設に対して大量に利用している「シャヘド136」型のイラン製無人機に対抗する、自国の成功体験をはじめとする支援を提案してくれました。
全てのUAE国民は、ウクライナの支援に感謝し、高く評価しています。この重要なイニシアティブの後、ウクライナとの連帯は強まると私は考えています。ロシアがイランを助け、イランがロシアを助けていることを踏まえれば、私たちはあなた方と同じ塹壕にいるのです。私たちには共通の敵がいます。
私たちは、ゼレンシキー大統領、ウクライナ国民、ウクライナに対し、その勇敢な姿勢と支援につき感謝しており、決して忘れることはありません。
イランとの状況の長期的解決をどのように評価し、展望していますか?
イランは隣国です。あなた方にとってロシアが隣国であるのと同じです。歴史的、地理的な隣国関係は変えることはできません。イランは私たちから100キロメートルの距離に位置しています。私たちには古くから膨大な経済的、貿易的、社会的結びつきがあります。例えば、UAEはイランにとって第2位の貿易パートナーです。
イランは、アラブ首長国連邦の3つの島(大トンブ島、小トンブ島、アブー・ムーサー島)を占領していますが、それでもUAEはイラン側との接触を断ちませんでした。
長期的展望でのテヘランとの協力は、アリ・ハメネイ後のイランの将来、そしてこの戦争後のイランの将来に左右されていくと考えています。
イランの未来を予測するのは困難です。はっきりしているのは、現在その国が最悪の状況にあるということです。複雑な国内情勢と極めて強い国際的孤立。イランは深淵の縁にあり、その深淵に転落するかのように見えます。しかし、転落を免れる可能性もあります。それゆえ、戦争の結果こそが、短期的および長期的な展望での解決の輪郭を定めていくことになるでしょう。
UAEは自衛に基づいた戦略を構築している
湾岸協力会議(GCC)諸国とイランの直接的な軍事衝突というシナリオは、どの程度現実的ですか?
イランによる侵略が始まって2週間が経過しました。数千発のミサイルや無人機が飛来してきているにもかかわらず、UAEも他のGCC諸国もイランに対して一発の銃弾も放っていません。私たちは、状況をこれ以上複雑にしたくないという立場から行動しています。私たちの戦略は現在、自衛の状態にあるということに基づいています。そして、自衛から攻撃へと転じる可能性は低いと私は考えています。
しかし、私たちの大統領が表明したように、忍耐には限界があります。もしこれら全てが続くのであれば、いかなるシナリオも排除することはできません。その際、私たちの全ての決定は国連憲章の規定、特に自衛権を認める第51条に基づいて下されることになります。ただし、現時点では軍事シナリオは主要なものではありません。
「アラビア版NATO」についての議論は既に行われている
湾岸地域の安全保障構造はどのように変化するでしょうか? 知られている通り、GCCは地域組織として、イランの脅威を考慮した上で創設されました。「アラビア版NATO」のようなものを予測されていますか?
外部の脅威は常にアラブ諸国の接触と協力を強化させます。GCCは1981年、イランの脅威をはじめ、外部の脅威に対抗するために創設されました。そのため、イランの侵略に照らせば、湾岸アラブ諸国の協力は、特に安全保障、防衛、そしてもちろん外政の分野で確実に強化されるでしょう。
「アラビア版NATO」について言えば、共通の最も危険な敵であるイランに対抗するために、GCCの枠組みにおける協力から、軍事同盟の創設へと移行する時が、確かに来ているのかもしれません。それがいつ、どのように実現するか? それは今のところオープンな問題であり、私たちの首脳たちの権限に属することです。しかし、そのことについての議論は既に行われています。