ロシアにとっては軍事、経済、社会の否定的状況の同時発生が危険=ウクライナ専門家

ウクライナの専門家ミハイロ・ホンチャル氏は、ロシアにとって最も可能性が大きい危険なシナリオは、軍事的敗北や経済的疲弊、あるいは国内の不安定化といった個別の状況ではなく、それら複数の危機的要因が同時に生じることだと指摘した。

戦略21グローバルセンターのホンチャル所長が、ウクルインフォルムとのインタビューの際に、長期化する戦争という条件下でのロシアの展望を分析した上でコメントした(リンク先はウクライナ語)。

ホンチャル氏は、「そうした破綻は、たった1つの要因で起こることは決してない。常にいくつかの状況の重なりによるものだ」と指摘した。

同氏はその際、ソ連崩壊の状況を例に挙げ、当時崩壊の決定的要因となったのは原油価格の暴落だけではなかったと指摘した。同氏は、「数年にわたり収入が減り続け、支出は増える一方だった。そこに、能力を超えた軍拡競争と、党が数十年にわたり約束してきた『明るい未来』に対する社会の失望が加わったのだ」と説明した。

そして同氏は、これらの要因は個別であれば破局には至らなかったかもしれないが、「しかし、それらが合わさることで崩壊という効果をもたらしたのだ」と強調した。

そして同氏は、同様のロジックは現代のロシアにも適用できるとし、「戦争が経済、財政、社会分野に影響を与えているのは疑いようがない。しかし、鍵となる問いは、それに対して社会がどう反応するかである」と指摘した。

同時に同氏は、今のところロシア社会は戦争を完全には実感していないと述べ、「ウクライナ防衛戦力からの攻撃が飛来する一部の都市や地域を除けば、ロシア社会は概して戦争のために機能している」と語った。

その際同氏は、ロシア国内において、戦争の受け止め方が不均等であることを指摘し、「支配体制にとっての『全ロシア』というのは、何よりもまずモスクワとサンクトペテルブルクのことである。ベルゴロド、リペツク、クラスノダールで起きていることは、『金はないが、頑張ってくれ』(編集注:2016年にメドヴェージェフ当時露首相が占領下クリミアでした発言)原則にのっとって受け止められている。モスクワにあるのは独自の生活だ」と指摘した。

他方で、同氏は、現在の戦争は徐々に首都圏にも及びつつあるとの見方を示した。そして、「私は、ある段階で、ロシア社会の中に反戦感情が形成され始めると考えている。それはウクライナに対する罪悪感からではなく、純粋に実際的な理由からだろう」と予測した。その際同氏は、「単に、稼ぐことのできる額よりも、支出の方が多くなっていることが明らかになる。その時、再考が始まる可能性がある」と指摘した。

プーチン政権下でそのような変化が生じ得るかどうかは、ホンチャル氏は、予想のできない問題だと指摘した。同氏は、「もしかしたら、ロシア的な意味で『権威のある』別の人物が現れるかもしれない。私は、野党のことを指しているのではない。野党は、実質的に存在していない」と語った。

その他同氏は、クレムリンに対する潜在的な挑戦は体制内部から発生するかもしれないとも述べ、「それは地方の指導者かもしれない。完全に体制側でクレムリンに忠実だが、『地方は損失が増え続けており、金はなく、勝利の展望もない』と口にするような人物だ」と推測を示した。

同時に同氏は、たとえプーチンが権力から離脱したとしても、それが自動的に戦争の終結を意味するわけではないとも警告した。同氏はその際、「それは必要条件でも十分条件でもない。期待できるのはせいぜい作戦的一時休止だ」と指摘した。

また同氏は、プーチンなき体制も根本的に変わることはないとの見方を示し、「(編集注:その場合も)権力体制の骨格は同じままとなる。政治及び安全保障モデル全体の深い変革がなければ、それは休息を与えるだけの表面的な交代にしかならず、戦争の終結とはならないだろう」と予測した。