カーニー政権下でカナダの対ウクライナ政策は変わったか?

トルドー前政権と比較しつつ、2025年のウクライナ・カナダ二国間関係を総括する。

執筆:マクシム・ナリヴァイコ(オタワ)

トップ写真:カーニー加首相(フェイスブック)

2025年のカナダは、政治的時代の転換と共に始まった。情熱的なジャスティン・トルドー氏に代わり、元カナダ銀行及びイングランド銀行総裁であり、控えめな振る舞いで知られる実務家のマーク・カーニー氏が国を率いることとなった。アカディア大学のアレクス・マーランド政治学教授は、両氏の明らかに対照的な違いを次のように言い表している。「カーニー氏はカラフルな靴下を履かない。それは象徴性の問題だ。トルドー氏は非常にポピュリスト的で、雄弁ではあったが、発言を常に実行にしたわけではなかった。カーニー氏は全く異なる。」

ウクライナにとっては、その気質の差には意味がある。カナダが同盟国であり続けるかどうかが問われているのではない。なぜなら、キーウへの支援は長年カナダの外交政策において不変の要素だからだ。問題は別にある。公の象徴性に意味を持たせず、代わりに秩序と予測可能性を尊ぶ首相の下で、その支援の性質はどうなるのかという点だ。

ウクライナは優先事項だが、突破口なし

この1年間、ウクライナはカナダ外交の主要な方向性の1つであり続けた。カナダはウクライナのパートナー諸国が集まる全ての国際的な場に積極的に参加し、G7議長国としての役割を利用して支援を取りまとめた。同時に、政策実現のスタイルは変化した。感情的な声明や市民との交流、誇示的な存在感を好んだトルドー氏とは異なり、カーニー氏ははるかに非公開で行動する。トルドー政権で元首相府長官を務めたカーレン・ヴァリアン氏は、「トルドー氏は政治の世界で育ったが、カーニー氏はそうではない。彼は職業政治家ではないため、象徴性はより少なく、より構造的な行動を見せている」と説明する。

写真:ウクライナ大統領府

カーニー氏にとっても、ウクライナはトルドー政権時代と同様に重要だが、その関わり方は、属人的なものから体系的なものに変わっている。政策形成の役割は、首相個人から各専門省庁へとより大きく移りつつある。

軍事支援:規律と予測可能性

軍事分野において、カナダはこの1年、一貫性と予測可能性を維持した。軍事援助は定期的に届けられ、訓練ミッション「UNIFIER」も継続された。また、カナダはNATOや連絡調整グループ「ラムシュタイン」の枠組みにおける同盟国間の調整に積極的に参加した。カーニー氏のアプローチの特別な点は、急激な動きを避けたことだ。支援が突発的に増額されることもなく、派手な発表を伴うことも、国内政治の目的に利用されることもなかった。

写真:unsplash

もう1人の元首相府職員であるジョナサン・カレス氏は、「カーニー氏は首相府を大幅に形式化した。政治的打算が減り、手続きが増えた。首相府はまるで企業のように活動している」と指摘する。このようなアプローチは安定性を確保するが、同時に戦略的イニシアティブを制限もする。カナダは同盟国としての義務を果たすものの、ウクライナ支援の新しいフォーマットを自ら主導することは稀になっている。私たち(ウクライナ)にとって、それは予測可能性を意味する一方で、突破口の不在も意味する。

制裁と財務支援:拡大なき政治的持続性

カナダの制裁政策も一貫性を保った。カーニー政権はロシアに対する新たな制限パッケージに加わり、これまでの決定を維持した。凍結されたロシア資産の活用については、カナダは言葉の上では引き続きこの構想を支持しているが、国内レベルでの実施メカニズムは今のところ策定されていない。

今年、カナダはウクライナに対する大規模な二国間の新規財務支援プログラムを立ち上げることはなかったが、多くの国際的な支援パッケージには参加した。カレス氏によれば、カーニー政権は新しい手段を作ることよりも「義務の遂行」に集中しているという。財務面では、それは革新性のない一貫性を意味している。

ウクライナ復興:潜在力はあるが、体系的ではない

カナダは、エネルギー分野や重要インフラ分野を中心に、ウクライナの復興に長期的に関与する意向を表明している。しかし、カーニー政権1年目において、その関心が大規模な計画へと変貌することはなかった。象徴的なのは、春にカナダのウクライナ復興担当特使に任命されたフリーランド氏が、おそらく夏にはその職を退くことだ。

カナダ企業のウクライナ事業への実際の参画も、今のところはかなり限定的である。カナダは復興参画において大きな潜在力を持っているが、そのためには政府の一体性のある戦略が必要であり、それはまだ存在しない。

ウクライナ系ディアスポラ:象徴性を減らし、より制度化へ

カナダのウクライナ系コミュニティは、伝統的にカナダの対ウクライナ政策形成において大きな役割を果たしてきた。トルドー政権時代には、定期的な会合や公の連帯表明でそれが見られた。しかし、カーニー氏のスタイルは異なる。カーニー氏はディアスポラの行事で演説したり、メディア向けの行動を行ったりはせず、定期的で実務的な対話を奨励している。このアプローチは政府全体のスタイルと共鳴している。つまり、感情を抑え、手続きと体系性を高めるやり方だ。同時に、カーニー氏は、就任後初となる外遊の1つとしてウクライナを訪問する機会を見出した。

マーランド教授によれば、現在のカナダには典型的な政治家とは異なるリーダーへの要求があるとし、「カーニー氏はその要求に見事に応えている」と述べる。それは社会との交流にも当てはまるという。カーニー氏は、ウクライナというテーマを自身の政治的得点のために「私物化」しようとはせず、ウクライナ支援に関する社会的な合意を維持することの重要性を認識しているという。

写真:カーニー加首相(X)

対米関係:個人的な関係で政策は決まらない

カナダ・ウクライナ関係にとって重要な文脈となるのが、カナダにとって主要な戦略的パートナーである米国に対する政策である。カーニー氏とトランプ氏の関係は、トルドー氏の時よりも緊張がはるかに少ないように見える。しかし、トルドー政権の元通商顧問であったブライアン・クロー氏は、個人外交の役割を過大評価しないよう呼びかけている。クロー氏は、「トランプ氏がカーニー氏を好意的に語れば、カナダの立場が改善するとよく言われる。しかし、トランプ氏は、トルドー氏の時と同じようにカナダの交渉戦略を批判している」と指摘する。クロー氏によれば、通商や安全保障の問題において「個人的な関係は決定的な要因ではない」という。ウクライナにとって、これはカナダの対ウクライナ支援政策が米加首脳間の個人的な相性に左右されるのではなく、現在必ずしも絶頂期にあるとは言えない国家間関係に依存していることを意味する。

結論:戦略的転換なき、管理された安定の1年

すなわち、カーニー氏の首相就任1年目は、カナダの対ウクライナ政策の持続性と予測可能性を示すものとなった。支援は継続され、制裁圧力は維持され、国際的な枠組みへの参加も変わっていない。カーニー氏は新しいウクライナ戦略の設計者にはならなかったが、前任者が築き上げた支援体制を放棄することもなかった。

カーニー政権の2年目は、カナダが安定した支援から、ウクライナの安全保障と復興において、より積極的な役割へと移行できるかどうかが問われることになる。2026年は、カナダがウクライナの強靭性と国際的な地位を強化するための独自のイニシアティブを提案できるかどうかを示すこととなろう。