米戦争研究所、モスクワでの米露和平案協議を分析

米国の戦争研究所(ISW)は、ロシアの首脳プーチン氏は2日にモスクワで行われた米国代表団との会談で、米国とウクライナの和平案を拒否したとし、プーチン氏は依然として自身の当初の戦争目標に合致しないどのような妥協にも応じそうにないと分析している。

ISWの12月2日付報告書に書かれている

12月2日、プーチン氏、ウシャコフ補佐官、ドミトリエフ特別代表が、モスクワでウィトコフ米大統領特使とトランプ氏の娘婿であるクシュナー氏と会談したことが言及されている。

報告書によれば、同会談後、ロシアのウシャコフ氏が、米国とロシアの代表団が和平解決の「いくつかの選択肢」について議論したが、「妥協的な案」については合意に至らなかったと発言。同氏はまた、いくつかの米国の提案はロシアにとって受け入れ可能であったが、プーチン氏は他の項目に対するロシアの批判的あるいは否定的な態度を隠さなかったと述べた。

ウシャコフ氏は、露米双方は「具体的な表現や具体的な提案」については議論せず、米国が「少し前にモスクワに伝えた」文書の「本質」について議論したと補足した。

ロシア側は、双方代表団は「領土問題」及び米露間の経済協力における「巨大な展望」について議論したと発表しているという。

ウシャコフ氏はさらに、米露の代表団は「協議の内容を公表しないことに合意した」と述べた。ISWは、その点につき、ロシアが米国及びウクライナの和平案を拒否したことを隠蔽するために、クレムリンが会談結果の公の議論を控えることを予定しているという、ISWの12月1日付の予測と一致すると指摘している。

ISWはまた、「プーチン氏を含むクレムリン高官らは、提案された計画がロシアの最大主義的戦争要求を全ては考慮していないため、2025年11月中旬に登場して以来、28項目の和平計画もその後の改訂版も、一貫して拒否している」と指摘している。

加えてISWは、NBCニュースの情報を引用している。同局は、関係者発言を引用し、12月2日の米国とロシアの代表者によるモスクワでの会談に先立ち、ウクライナ東部ドネツィク州及びルハンシク州の領土や、ウクライナ軍の兵力制限の希望、占領したウクライナ領土をロシア領として米国及び欧州が承認するというモスクワの要求に関して、譲歩する準備がないと伝えた。

ISWは、クレムリン関係者による発言は、ロシアが他の問題でのウクライナ及び西側の譲歩と引き換えに、いくつかの「最重要でない問題」で譲歩する準備があることを示すために、米国の情報空間に流出させた可能性があると考えているという。またISWは、同発言は、プーチン氏の真の、より極端な目標(東部のドンバス地方全域や南部のザポリッジャ州・ヘルソン州だけでなく、ウクライナ全土を支配下に置くこと)を隠すことを目的としているとも指摘している。

さらに、ISWは、プーチン氏が2日の米露代表者会談に先立ち、ロシアがいかなる「和平計画」の選択肢を拒否することの責任を、前もって欧州に転嫁しようとしたと指摘している。

その点につきISWは、「クレムリン高官らは、米国が提案した当初の28項目の和平計画を含む、ロシアの最大主義的要求を満たさないいかなる和平案も受け入れるつもりはないことを、過去数週間繰り返し示唆してきた。クレムリンはおそらく、ロシアがその和平計画を受け入れることを拒否している理由として、欧州が受け入れられない項目を和平計画に加えたことを非難するための条件を作り出しており、実質的には、欧州を、自ら(ロシア)の和平プロセス阻止行為のためのスケープゴートとして利用しているのだ」と分析している。