緒方貞子さん死去 クリミア・タタール代表が哀悼のメッセージを発出 民族のクリミア帰還に尽力
29日、日本人として始めて国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の高等弁務官を務めた緒方貞子さんが死去したことがわかった。高等弁務官の際には、ソ連スターリン政権下で中央アジアに追放されていたクリミア・タタール人のクリミアへの帰還に尽力。同日、クリミア・タタール民族代表機関「メジュリス」代表が哀悼のメッセージを発出した。
29日、レファト・チュバロフ・メジュリス代表が自身のフェイスブック・アカウントにメジュリス代表声明を掲載した。
チュバロフ代表は、「10月29日の朝、悲しい報が届いた。著名な日本人の政治活動家であり、1991年1月1日から2000年12月31日までUNHCR高等弁務官を務めた緒方貞子さんが、92歳で亡くなったのだ」と書いている。
チュバロフ代表は、緒方さんが国連の幹部として初めてクリミアを訪れ、クリミア・タタール人の追放先の中央アジア諸国からクリミア半島への帰還プロセスの状況を自分の目で確認した人物だと伝え、緒方さんが1997年には、クリミア訪問時にクリミア・タタール人の町ヴァシエト(ストロハニウカ)を訪れ、メジュリスのメンバーや地元住民と長い時間対話をしたと述べた。
同代表は、緒方さんが、クリミア訪問後にウクライナとウズベキスタンの政権幹部と協議を行い、その結果として、ウズベキスタン等からクリミアへ帰還していた8万人以上のクリミア・タタール人に対してのウクライナ国籍が手続きを簡素化して付与されたことを説明した。
同代表は、当時の緒方さんの活動につき「追放先から故郷へ戻った数万人のクリミア・タタール人にとって、大きな突破口であり、法的環境の改善であった」と回顧した。
その上で、同代表は、「緒方貞子さんの名前は、クリミア・タタール民族の記憶の中で感謝の気持ちのともに記憶されていくであろう」と強調し、「クリミア・タタール民族代表機関『メジュリス』は、緒方さんの親族、近親者、友人、同僚に心からの哀悼を表明する」と書き込んだ。
なお、緒方貞子さんは、難民高等弁務官当時、クリミア・タタール人のクリミア帰還支援を行った他、1998年のクリミア・タタール人指導者ムスタファ・ジェミレフ氏への「ナンセン」賞授与にも尽力していたことが知られている。