プーチンはかつてNATO拡大を一度も提起しなかった=ロバートソン元NATO事務総長

ジョージ・ロバートソン元北大西洋条約機構(NATO)事務総長(1999〜2003年)は、自身の事務総長在任中、プーチン露大統領と9回会談したが、その際プーチン氏はNATOのいわゆる「東方拡大」を議題にしたことも、その件で懸念を表明したことも一度もなかったと発言した。

ロバートソンNATO元事務総長がオーストリア紙プレッセへのインタビュー時に発言した

現在プーチン氏があたかもロシアがNATO東方不拡大について騙されたかのような主張をしていることにつき、ロバートソン氏は、「私の9回の会談時、プーチンはNATO拡大については1度も想起しなかった」と指摘した。

また同氏は、プーチン氏との会談時には「バルト諸国との関係で欧州通常戦力条約(CEF条約)の修正に関しての見解において1つだけ相違があった」と述べ、そして「それは解決されたのだ。そして、プーチンは『私にはそれで十分だ』と述べた。プーチンの現在の発言は全て、自らの侵略行為の正当化のための口実に過ぎない。ところで、プーチンはまた、2022年にはNATO首脳会談において、全ての国家の領土一体性を定めているローマ宣言にも署名している」と発言した。

そして同氏は、その際にNATO・ロシア理事会(NRC)と様々な作業部会が創設されたことを喚起し、プーチン氏はいつロシアがNATOに招待されるのかと質問したことも指摘したとし、「私たちは友好関係を維持していたのだ。プーチンはその時、私たちがロシアをNATOに招待するのはいつか、とまで私に質問した」と伝えた。

同時にロバートソン氏は、そのプーチン氏の質問はトリックであったとし、「なぜなら、彼は当然ながら、それがすぐに生じないことは知っていたからだ。私は、NATO・ロシア間関係がどこに帰着するかを見るためには、関係のための作業をせねばならないと答えた。私は、将来の汎欧州的安全保障構造を想像し得たのだ」と発言した。

その際同氏は、プーチン氏が最初に政権に就いた後はNATOとの間で「良い関係を求めいていた」との見方を示し、しかし「彼は段々偏執的になっていった」と指摘した。同氏は、「彼は、ロシアが平等に見られることを望んでいたが、しかし、NATO・ロシア理事会でではなかった。彼は、米国のレベルで行動したがり、かつてソ連がそうであったように、尊敬され、称賛され、同じように恐れられるべきだと望んだのだ」と発言した。

写真:NATO