ロシアにどの国がNATOに加盟するかを決める権利はない=NATO事務総長

ロシアは、ウクライナやジョージアといった、民主的国々による北大西洋条約機構(NATO)加盟の主権的決定に介入する権利を持っていない。

18日、イェンス・ストルテンベルグNATO事務総長がパリ外務スクール(PSIA)のオンライン・ディスカッションの際に発言した。ウクルインフォルムの特派員が伝えた。

ストルテンベルグ氏は、司会者によるNATOの拡大がロシアの隣国への侵略を誘発しているのではないかと質問に対し、「私は、その質問を様々な言い回しで何度も聞いてきた。ロシアによる他国への武力行使を正当化するために、NATO拡大をロシア連邦に対するある種の侵略行動として紹介する試みだ。あなたは、ドンバス(ウクライナ)とジョージアについて思い出された。その質問に答えるには、私たちはまず基本から始めるべきである。欧州の全ての国は、ヘルシンキ最終文書(宣言)など、全ての国が自らの道を選択する主権的権利を持つことを明確に定める多くの文書に署名している。どの国が、どのような安全保障機関に参加するか、など(の主権的権利について)のものだ。それは明白なことである」と発言した。

同氏は、旧ソ連のバルト3国含め、東欧の国々も当時NATO加盟がを主権的決定で実現したのだと喚起しつつ、その際NATOはいずれの国に対しても加盟を強制したことはなく、それらの国々が民主的手続きを用いて、加盟の道を選択したのだと指摘した。

同氏はまた、「私たちは、NATO加盟を国々に強制したことは一度もない。フィンランドやスウェーデンのような、私たちの良き隣人は、何十年にもわたってNATOに加盟したくないと言っており、私たちはそれを完全に尊重している。しかし、ラトビア、エストニア、リトアニア、ポーランド、ルーマニアやその他多くの国が、加盟したいと決定し、NATO基準を満たしたのであり、言うまでもなく、だからその時それらの国は、加盟の権利を獲得したのだ」と説明した。

加えて同氏は、NATOにどの国が加盟するかは、その国自身とNATO加盟国が決めることであって、ロシアには、他の主権国家によるNATO加盟を妨害する権利も、プロセスに介入する権利もないと強調した。

その上で同氏は、「私にとっては、主権国家による自らの将来を決める権利についての質問を設定すること自体が、挑発的である。その質問設定は、大国が隣国の運命を決める権利を持つという、『利益圏』体制を認める道である。(中略)もし私たちが、大国が小国の行動を決められる、ということを受け入れたら、それは過去への逆戻りとなるのだ。私たちは、そのような世界へ戻りたいとは思っていない。私たちには、ルールにもとづいた世界、他国に対する尊重にもとづいた世界が必要なのであり、その際、国の規模、軍事力や経済力の規模は関係ない」と発言した。

同氏は、そのような根本的な点において妥協することは全世界にとって非常に危険な道を進むことになりかねないと述べつつ、さらにその観点から、いわゆる「紛争の凍結」という問題についても検討しなければならないと指摘した。

そして、「ジョージアがNATOに加盟したい場合も、それはロシアが止めるかどうかの問題ではない。ジョージアがNATOに加盟するか否かは、ジョージアとNATO加盟国が決める問題であり、その他のものの問題ではない。ロシアの問題ではないのだ。彼らがアブハジアや南オセチアにて行なったことは、主権国家であるジョージアの領土一体性の侵害であり、受け入れられない。それは、もちろん、ウクライナにも関係することだ。クリミアの違法併合、ドンバスの不安定化、これらすべてが、平和で安定した世界建設の道にある基本的原則の侵害である」と強調した。

同氏は、NATOは、ジョージアとウクライナの能力構築と改革の支援を行うことに自らの役割を見ているとし、「私たちは、ジョージアとウクライナに様々な形でプレゼンスを持っている。しかし、私たちは、モルドバ、ナゴルノカラバフといった様々な紛争のため政治的決定を模索しなければならない。重要メッセージは、その際、私たちは、それらの国の主権を尊重し、様々なレベルで『凍結』されている紛争のために、協議を通じた平和的決定模索の願望を支持しなければならないのだ」と発言した。

なお、今回のストルテンベルグNATO事務総長の発言は、NATOウェブサイトに動画で公開されている

写真:NATO