ウクライナ特殊機関、「DPR」から政府管理地域へ、マレーシア航空機撃墜関与容疑者を強制連行か=報道

6月末、ウクライナの特殊機関が武装集団「DPR」支配地域から、スニージュネ市の元「対空防衛部隊指揮官」であるヴォロディーミル・ツェマフ氏を強制連行したことが報じられた。

4日、BBCウクライナ語版が弁護士のロマン・ホンタリェウ氏とツェマフ氏の娘の発言を元に報じた

BBCは、ウクライナの公的機関は同情報を認めておらず、コメントもしていないと報じている。

ツェマフ氏の親族は、ウクライナの治安機関がツェマフ氏に関心を持ったのは、2014年7月17日にスニージュネ近郊にてマレーシア航空機MH17が撃墜された時期、ツェマフ氏が親露武装集団「DPR」に所属していたからであろうと推測している。

また親族たちは、ツェマフ氏は、2019年6月27日に「DPR」支配地域スニージュネ市の自宅アパートにてウクライナ特務機関職員に拘束され、その後、衝突ラインを越えてウクライナ政府管理地域へと連行されたのだと確信を述べている。

弁護士の発言では、6月28日、ツェマフ氏はキーウ(キエフ)まで移送され、6月29日には、キーウ市シェウチェンキウシキー地区裁判所が未決囚予防措置として同氏に2か月間の逮捕措置の判決を下したと述べた。

弁護士は、本件のその他の詳細については、捜査上の秘密に関わるとして、コメントを拒否した。

ツェマフ氏の親族は、同氏にはウクライナ刑法典第258-3条1項「テロ・グループあるいはテロ組織の創設」の容疑がかけられているとし、罪が認められた場合、8年から15年の懲役刑が言い渡されると指摘した。

なお、これに先立ち、6月19日、国際共同捜査チーム(JIT)がマレーシア航空機MH17撃墜に関与した容疑者を公式に発表している。

JITが容疑者として発表したのは、レオニード・ハルチェンコ(ウクライナ国籍、「DPR」側で戦闘に参加)、セルゲイ・ドゥビンスキー(ロシア国籍、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)大佐、兵器の使用計画の容疑)、オレグ・プラートフ(ロシア国籍、予備大佐、地対空ミサイル・システム「ブーク」の移送に関与し、航空機の撃墜した地域の警備を担当)、イーゴル・ギルキン(ロシア国籍、ロシア連邦軍元将校、ロシア連邦保安庁(FSB)元大佐、ロシアの対ウクライナ侵略に積極的に参加)の4名。

マレーシア航空機撃墜事件とは、2014年7月17日、アムステルダムからクアラルンプールへ向かっていたマレーシア航空機MH17がウクライナ東部ドンバス地方上空で武装集団により撃墜され、乗客・乗員合計298名全員が死亡した事件をいう。

2016年9月、国際共同捜査チーム(JIT)は、同事件の技術捜査の結果として、同航空機が、親露武装集団支配地域から地対空ミサイルシステム「ブーク」により発射された弾頭「9M38」により撃墜されたことを判明させていた。

同時に、民間調査グループ「ベリングキャット」は、MH17を撃墜した「ブーク」がロシア軍第53対空旅団発のものであることを判明させていた。ベリングキャットは、ソーシャル・メディアとオープンソース情報の独自の分析を通じて、MH17撃墜に関与した20名のロシア軍人を特定させた報告書を発表した。これら軍人の名前が写真付きで示されているこの報告書は、オランダの検察に渡されている。

2018年5月24日には、JITは、MH17を撃墜したロシアのミサイルの破片を公開しつつ、ミサイルがロシアのクルスクを拠点とするロシア軍第53対空ミサイル旅団に属するものであることが判明したと発表した。